当時5歳の男の子が、食事を与えられず餓死した事件で、母親の生活全般を「支配」していたとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた女の裁判で、福岡地裁は懲役15年を言い渡した。母親だけでなく“ママ友”の責任も問われる、異例の裁判となった。

■福岡・5歳児餓死事件 "ママ友"に異例の判決

 赤堀恵美子被告(49)と翔士郎ちゃんの母・碇利恵被告(40)は、子供が同じ幼稚園に通うママ友の関係だった。しかし、赤堀被告が碇被告の子供の食事量を制限し、碇被告が赤堀被告に生活費などを渡す支配関係へと、徐々に変わっていった。 

 2020年4月、当時5歳の碇翔士郎ちゃんが十分な食事を与えられず餓死したことにより、両被告は保護責任者遺棄致死罪などの罪に問われている。
 碇被告には、すでに「懲役5年」の一審判決が下され控訴中だ。そして9月21日、「碇被告に嘘を重ね、実質的に支配していた」として、ママ友の赤堀被告に求刑通り「懲役15年」の判決が下された。

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■ママ友に求刑通りの判決 裁判所が「悪質」と判断

 “ママ友”に、実の母親を上回る刑が下された今回の判決について、菊地幸夫弁護士に聞いた。

菊地幸夫弁護士:
「遺棄罪」というものがあります。「人を山の中に捨てる」とかそういう罪ですね。その相手が「保護しなければならない相手」であれば罪が重くなり、今回はその「保護責任者遺棄」が問われていました。本来、一緒に生活してなかった赤堀被告にその責任はないわけで、それが認定されたのは異例です。

しかし今回は、碇被告の言い分と赤堀被告の言い分が異なり、碇被告の言い分は、異例だけどストーリーとして筋が通っていた。赤堀被告の言い分は筋が通っておらず破綻している、裁判所はそう見たんだと思います。

異例だけど、碇被告のストーリーがなければ、この犯罪は起こらなかったという。通常は、判決が求刑より少し軽くなるんですが、求刑通りの判決ということは、裁判所が悪質とみているということです

 なぜ、母親はママ友に支配されてしまったのか。碇被告の裁判において、赤堀被告が碇被告を“徐々に支配していった”として、以下の事実関係が認定されている。

【1】親しかった人と距離を取らせる
「夫が浮気している」「別のママ友が悪口を言っている」 などと発言

【2】訴訟の恐怖とお金の要求
「“ボス”が、別のママ友や元夫との間の裁判費用や調査費用などを立て替えてくれている」と架空の存在を使い恐怖をあおる

 碇被告の裁判で心理鑑定を担当し、証人として出廷した立正大学の西田教授は、「ポイントは長期間にわたる支配」とし、「3年以上かけて心を完全に支配した。徐々に支配されたため気付かなかった」と証言したということだ。

 裁判で証言台に立った碇被告の元夫は、翔士郎ちゃんを含む3人の子供に対し、「これまで虐待は一切なかった」といった内容のことを言っている。碇被告の「懲役5年」に対して、菊地弁護士の見解は…

菊地幸夫弁護士:
母親として、支配はされてもそこから脱する可能性がなかったとは言えない、というのが裁判所の認定だと思います。全面的に抵抗不可であれば、場合によっては無罪もあるかもしれませんが、そこまでではなかった、ということではないでしょうか

(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月21日放送)

関西テレビ
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