「フレイル」とは、健康な状態から「要介護」へ移行する中間の段階を指す。

新型コロナウイルスへの感染を恐れるあまり、高齢者のフレイルが進むことが今、懸念されている。

外出自粛により高齢者の生活が変化

宮城・多賀城市内にある市営住宅。
以前は、互いの家を行き来していたという、住民の但木光子さん(76)と内田弘子さん(86)。
最近は感染予防のため、外で話をすることが多くなった。

ーー話すときも距離を意識?

但木光子さん(76):
まあね

内田弘子さん(86):
「お茶飲みにおいで」と言いたいけど、それもなかなかだめで近寄れない。家の中で何もしないでぼーっとしていると、自分でも自分が嫌になっちゃう

1人暮らしの河越喜美子(81)さん。

家の中での過ごし方は…。

河越喜美子さん(81):
テレビ見てます。(家に)いたら見ているな。退屈な時はほとんど見ている。(テレビを)大抵つけたままにしている

「ほとんど外に出ない」と話すのは、仙台市内で1人暮らしをする角田忠子さん(85)。

角田忠子さん(85):
ウイルスは目に見えないので、それが一番怖い。年はとっているし、病気を持っているし

ぜんそくの持病があり、通院以外では、ほぼ外に出ていないという。

ーー誰かと話す機会は?

角田忠子さん(85):
今、ないです

高齢者医療が専門の、東北大学病院の荒井啓行医師は、高齢者の生活の変化を懸念している。

要介護の一歩手前「フレイル」とは

東北大学病院 加齢・老年病科科長・荒井啓行教授:
感染をおそれるあまり、生活そのものが不活発になってしまう。動かないことで、体や脳の働きが低下してくることを「フレイル」と呼んでいる。「フレイル」とは日本語で「虚弱」という意味。
「正常」と「要介護」の状態の中間段階になり、それを放置しておくと、「要介護」に進行してしまう。言ってしまえば、「要介護予備軍」となる。
「フレイル」が進行すると、体の抵抗力・回復力にも影響が出てCOVID-19(新型コロナウイルス)感染症も重症化しやすい

筋肉が落ちるスピードは高齢になるほど速く、さらに「動かない」と加速するという。

東北大学病院 加齢・老年病科科長・荒井啓行教授:
2週間の寝たきり状態だと、7年分の筋肉量の喪失が起こる。寝たきりのような状況になると、ものすごく速く筋肉がなくなっていってしまう

簡単な「運動」で「フレイル」を防ぐ

「フレイル」を防ぐために、1つ目のキーワードは「運動」。

東北大学病院 加齢・老年病科科長・荒井啓行教授:
テレビのコマーシャルの時に立ち上がって足踏みをして、コマーシャルが終わったらまた座る。ずっと座り続けるのではなくて、途中でそういう運動を入れていく。
30分程度の習慣的な散歩。特に、日の当たるところを散歩して運動してもらう。
「フレイル」予防とともに認知症予防にもなる

多賀城市の河越さんも、家の中で足を動かすことを心がけている。

河越喜美子さん(81):
黙って座ったりしていると、歩くのも足が不自由になると思ってやっています

タンパク質で筋肉の衰え防ぐ

2つ目のキーワードは「食事」。

特に重要なのが、タンパク質。

東北大学病院 加齢・老年病科科長・荒井啓行教授:
タンパク質の摂取を心がけてほしい。筋肉もタンパク質で構成されていますので、大豆、鶏肉とか牛乳で結構ですので。そういうものがないと、どんどん体が弱っていってしまうので、ぜひタンパク質の摂取を心がけていただきたい

毎食後、歯磨きで口を清潔に保つことも、感染症予防に有効という。

会話で口の周りの筋肉を動かすことが脳を活性化

3つ目のポイントは「おしゃべり」。

できる範囲で、人と会話をしてほしいという。

東北大学病院 加齢・老年病科科長・荒井啓行教授:
「ソーシャルフレイル(社会的衰え)」という言葉があって、孤立している・独居などが「フレイル」を作りやすい。
携帯電話を利用したり、家にいても交流できるようなそういう手段で、今一番厳しい時、ここを乗り越えてほしい

1人暮らしの角田さんは…

角田忠子さん(85):
声を出さないと声が出なくなるので、新聞を音読しています。声を出して音読しています

東北大学病院 加齢・老年病科科長・荒井啓行教授:
(音読など)口の周りの筋肉の運動が脳の活性化に非常にいいこと

持病ある場合はしっかり薬の服用を

荒井医師によると、持病のある人は処方されている薬をきちんと服用することも重要だという。

東北大学病院 加齢・老年病科科長・荒井啓行教授:
高血圧があると、どうしてCOVID-19(新型コロナウイルス)感染症が重症化するかわかっていないが、いろいろな研究を見ていると、(高血圧の)治療薬が重症化させるという指摘はされていない。
「自分が飲んでいる薬が悪いのでは」と思い、(服用を)中断する人が中にはいるみたいだが、かかりつけの先生とよく相談して、今までの病気の治療も継続してほしい

「運動」と「食事」と「おしゃべり」で防げる「フレイル」。
できる範囲で、取り組むことが大切だ。

(仙台放送)