養子縁組した女性を殺害した疑いなどで逮捕された男が、留置先の警察署で自殺を図り、死亡した。

「養子」男が自殺 2021年から直撃取材 当時の様子は

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高井凜容疑者(28)は2021年7月、大阪府高槻市の住宅で養子縁組していた高井直子さん(当時54)を浴槽で溺れさせ、殺害した疑いなどが持たれている。警察は保険金などを狙った犯行とみているが、容疑に対し、高井容疑者は黙秘していた。

高井容疑者は2022年7月から、大阪・福島警察署の3階に留置されていたが、9月1日午前7時過ぎ、留置場の居室で、ひものようなものを使って首をつっている姿で発見された。

関西テレビは、逮捕前の高井容疑者を2021年から取材していた。

【2021年12月 さいたま市】
――直子さんはどんな人?
高井凜 容疑者:
めっちゃええ人でしたよ。悲しいというより先に、びっくりの方が最初は大きかった
――どういう経緯で養子に?
元々(直子さんは)独身できょうだいもいなくて
――跡継ぎみたいな感じ?
そうですね。向こうから打診がきて検討して
――なぜ受けた?
受けないメリット、受けない理由がなかったです

逮捕される20日ほど前、引っ越しを繰り返していた高井容疑者の自宅を割り出し、改めて取材した際には…

【2022年7月2日 川崎市】
――関西テレビなんですけど

高井凜 容疑者:
ここにおるってなんで分かったんですか?
――報道機関なんで
めっちゃビビってるんですけど
―― 一言だけ
無関係です
――犯人に対してどう思う?
捕まってほしいと思います
――保険金の受取人になっていたのを知っていた?
知らなかったです。アリバイはありますからね。4日間東京にいたんです
――4日間東京にいらっしゃった?
そうですね、裏付けもしてもらってたんじゃないかな。だから、聞きに来られても

しかし捜査関係者によると、事件当日 高井容疑者は、スマートフォンを、当時住んでいた東京都内のマンションに置いたまま外出。位置情報から居場所を特定されないよう工作し、女装した姿で家を出る様子が防犯カメラに映るなど、計画的に犯行に及んだとみられている。

留置場でひものようなもの使い…記者が語る容疑者像と留置場の態勢

9月1日午前7時2分、警察署で留置されている中で首をつった姿で発見された高井容疑者は、心肺停止状態で救急搬送された。単独の居室であったことから、自殺を図ったとみられる。窓にある金網にひものようなものを束にして、輪を作っていたということだ。

救急搬送時には意識もなく心肺停止状態だったとみられ、その後、死亡が確認された。

警察によると、発見される15分ほど前の、午前6時44分ごろの巡回では、高井容疑者が布団で寝ている状況を確認していたということだ。
高井容疑者は取り調べの際に「逃走を考えている」などと話していたことなどもあり、警察は8月19日から、夜間の巡回を1時間に4回から、5回に増やしていた。

高井容疑者が前夜、寝具を居室に持って入るときに警察官が持ち物を確認した際も、ひものようなものは所持していなかったということで、警察は当時の状況を詳しく調べている。 

事件発生当初から取材を続ける、関西テレビ大阪府警キャップの泉谷賢一記者に、高井容疑者の人柄や留置場内の様子について聞いた。

――高井容疑者の印象は?
泉谷賢一 記者:
自殺を図るような人物には見えませんでした。直接取材をした際にも堂々とした態度で受け答えをして、普段通りアメフトの練習に参加するなど、逃げるような様子も感じられませんでした

――関西テレビをはじめ、複数の報道機関が接触していたはずですが、プレッシャーを感じているような様子はなかったのでしょうか?
泉谷賢一 
記者:
そうですね、最初に接触した12月も堂々とした態度でした。ただ、少し突っ込んだ質問をすると、落ち着かない様子で的を射ない回答をしていました。逮捕直前の7月に取材した際は、「何でこの場所が分かったんですか?」と、開き直ったような感じで受け答えをしていました

――学生時代はアメフト部に在籍し、高校日本代表にも選出。その後は外資系保険会社に勤務するも、結婚をほのめかすなど無理な営業で販売資格停止。SNSからは高級外車や派手な女性関係がうかがえるなど、聡明そうな側面と浅はかそうな側面、どちらも見受けられるように見えますが、高井容疑者とはどういった人物?
泉谷賢一 
記者:
事件当日の高井容疑者の動きは、当時住んでいた東京都内のマンションから大阪府高槻市まで、防犯カメラの“リレー捜査”で明らかになっています。都内のマンションからは女装で外出し、事件現場までは何度も服を着替えるなど、計画性の高さがうかがえます。
一方、直子さんの遺体の右手首には結束バンドが巻かれていました。高井容疑者が直子さんを殺害したのであれば、なぜ残して逃げたのだろう?と思うような、計画性と「なぜ?」と聞きたくなる部分が両方あるような印象です

――養子縁組や保険金の文書偽造疑いなど、「それは疑われるだろう」という動きもしていますよね。次に、警察の監視下でなぜ自殺を試みることができたのかですが、高井容疑者は7月20日から福島警察署に単独留置されていて、8月19日に「特異被留置者」に指定されています。「特異被留置者」とは何ですか?
泉谷賢一 記者:

「特異被留置者」は“規律無視、粗暴などで注意を要する人物”です。警察によると、高井容疑者は巡回する看守勤務員の様子をうかがったり、取り調べの中で逃走を考えている言動があったため、「特異被留置者」に認定されました

――特別に注意を向けられていたんですね。しかし、午前6時44分から7時2分までの見回りの間、18分間で首をつったということですが、「特異被留置者」で通常より見回りが多かったんですよね? 
泉谷賢一 記者:
通常は1時間に4回ですが、高井容疑者には1時間に5回の見回りが行われていました。1時間に5回と聞くと12分ごとのように思いますが、決まったサイクルだと留置人に「そろそろ来るな」と思われてしまうので、ランダムに1時間に5回行われていたようです

――ひものようなもので首をつったという高井容疑者ですが、留置場では全ての留置人に対して、服にひもや金具がないかのチェックを行い、あった場合は没収。またスリッパが備え付けられており、靴ひものついた靴も存在しないということですが、高井容疑者はひものようなものをどこから入手したのでしょうか?
泉谷賢一 記者:
警察からは“ひものようなものが束になっていた”としか発表されていません。普段、留置人の就寝前に、寝具にそういったものが紛れ込んでいないかもチェックしますが、昨夜のチェックでは見つかっていません

――では、どういった可能性が考えられますか?
泉谷賢一 記者:

​警察が面会や差し入れ状況を明らかにしていないので、そういった場で紛れ込んだのではないかと私は思っていたのですが、ある警察幹部に聞くと、「差し入れがされた場合は全てチェックする。ひものようなものが紛れ込むのはあり得ない」ということでした。そうなると、想像の話ですが、着衣か寝具を破ってひものようなものを作った可能性が考えられると思います

(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月1日放送)

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