韓国に行った気分を味わえる人気スポット”コリアタウン”。コロナ禍でもたくさんの観光客であふれている。
歩行者天国かと思いきや、時間によっては車も通る。歩行者と車が入り組む商店街。
その課題をツイセキした。

「通行禁止時間帯」になぜ車が? ”コリアタウン”で起きた悲劇

大阪市生野区にあるコリアタウン。
キムチ店やコスメショップなど約120の店が建ち並び、年間200万人以上もの観光客が訪れる人気スポットとしても知られている。

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8月1日に、この場所で悲惨な事故が起きた。
商店街に入って来た一台の車が、1歳の女の子と接触して逃走。女の子は病院に運ばれたが、死亡した。
車の通行は禁止されていた時間帯のことだった。

ひき逃げなどの疑いで逮捕された韓国籍の固城義和こと鄭仁煥容疑者(74)は、「通行禁止時間だとは知らなかった」と話している。

1日に何度も変わる「通行規制」…しかし車は時間帯問わず“出入り”

この道は、午前10時から正午までと、午後4時から午後6時までの1日2回、車の通行が禁止される時間帯がある。

しかし、看板は道の端に置かれていて、入り口にバリケードなどもないため、時間帯を問わず車が自由に入れてしまう。

なぜ、車が通れる時間と通ってはいけない時間が混在しているのだろうか。

大阪コリアタウン 由良英明副理事長:
昔は普通の商店街で、昼間は昼食の買い出し、夕方は夕食の買い出し(があったから)その時間帯は危ないということで(車の進入を)止めていた。今は形態が変わって、普通の買い出しの商店街から、ほぼ観光地ということで逆に(車が)通れる時間帯が、お客さまが多くて危険だ

警察によると、この通行禁止時間が設定されたのは、今から40年以上前のこと。
当時は、在日コリアンを中心とした近隣住民の台所としての役割を担っていて、それに合わせた通行規制が行われていたのだ。

しかし、近年、韓流ブームなどにより、終日多くの人が訪れる”観光地”へと変わった。

商店街から観光地へ…「通行禁止時間」今の実態に合っているのか?

40年以上見直されなかったルールは、今の実態に合っているのだろうか。
実際に、記者が車が通れる時間に走ってみると…

酒井麻衣記者 リポート:
12時半過ぎです。通行可能時間帯なのですが、多くの人が歩いていて、車での通行は非常に危険な状況です

通行してよい時間帯でさえも、車は観光客たちの間を縫うようにしか進めない。

観光客もこの状況に困惑している。

(Q.車が通行できると知っていましたか?)
観光客:

知らなかったです。(車が)通れないものだと思ってました

観光客:
まさか通って来ると思わないですね。さっきもぴゃーって走っていってたし。人ごとじゃない

観光客:
この時間、結構人通りあるんで通行止めにしてもらった方が、子供たちも安心して通れると思う

車の通行禁止の時間帯には、進入しようとする車を商店街の人が必死で止めることも…

進入しようとする車の運転手:
ここもう道あらへんがな

止めている商店街の人:
バックしてもらうしかない

進入しようとする車の運転手:
バックできひんねん。バック危ない。今日初めて来たから辛抱してくれ

交通心理の専門家は、車の通行禁止時間の設定について、「分かりにくいのでは?」と指摘する。

帝塚山大学 蓮花一己学長:
ドライバーにとっては不便ではないかと感じますね。ある程度、連続的な時間がいいと思う。時間設定はいろんな利害関係者の声を聞いて、ドライバーも含めて決めたらいかがでしょうか

「通行禁止時間帯」拡大を陳情…反対の声も

しかし、商店街もこの問題を放置していたわけではない。

大阪コリアタウン 由良副理事長:
警察の方に陳情に行きまして、(車が)通れる時間帯がお客様が多くて、小さな事故が多発して。なんとか「朝から夕方まで止めれないか」ということでお願いに行きました

商店街によると、5年前、警察に対して通行禁止時間の拡大を訴えたが、公道の通行規制を拡大するには、商店街だけでなく近隣住民の意見をまとめることを求められ、先延ばしになってしまったという。

大阪コリアタウン 由良副理事長:
あまりにもハードルが高すぎて。私たちも仕事してますので、なかなか進まず今に至ってしまった。危ない箇所を見つけたら、国民市民の安全のために先に動いてくれる。それが(警察の)本来の姿だと思う

しかし、生活のために商店街を道路として利用する住民もいる。

近隣住民:
うちは困りますね。主人も車いすだからね。商売に関係のない者は、取り締まり(規制を)きつくされたら便利悪いです

(Q.生活に影響が?)
近隣住民:

ええ

観光地であり、生活道路でもある商店街ならではの通行規制の難しさがあるようだ。

帝塚山大学 蓮花学長:
生活道路で、地域の人たちが中心に過ごしているところは時間規制しやすい。ただ商店街の場合は、単純な生活道路で地域住民だけが過ごすという空間だけではなくて、消費者がたくさん来る。それを求めているわけですから…そこを規制をかけるのは、よほど色んな側面を検討しなければいけない

車以外にも「課題」が…歩行者阻む”せり出す台・テント”

課題は、通行規制だけではない。
道路には、商品が並ぶ台やテントがせり出していて、店の一部のようになっている。それにより道幅が狭まり、歩行者が道の真ん中を歩かざるを得ない。
公道では、道路上に物を置くことは”道路交通法違反”に当たる可能性もある。

大阪コリアタウン 由良副理事長:
みなさん自分の商売が大切なので、我々が回ってお願いしたにもかかわらず、なかなか改善できていないというのが実情。
ちゃんとされている商店の方も多いんですよ。自分の敷地内できっちり。そういうお店からすれば、自分のところ(路上にせり出しているお店)が目立ちたいから、お客さんを多くとり入れたいからということで、不公平感がある。
お客さまの安全にもつながるので、きっちりと自分の敷地内でやるように理事会の方でも進めていかなくてはいけないと

近隣住民とタッグ…東大阪の商店街 時代の変化に合った“対策”

一方で、事故を減らそうと近隣住民と協力し、通行規制に取り組んでいる商店街もある。

東大阪市にある商店街。
朝7時までは何台もの車がアーケードを通り過ぎているが、店が開く時間になると、それにあわせて看板を出し、車が通行できないようにしている。

商店街の人:
だいたい、店開けて営業する時間と同時にくらいに(看板を置いています)。もう慣れました

もともとは路線バスや車が通る国道だったが、商店街側が車両の通行禁止を訴え、近隣住民やバス会社、警察などと協議して、午前7時から午後8時まで車両の通行を禁止にした。
商店街の人の協力を得ながら、無理のない範囲で看板を設置し、対策を続けてきた。

コリアタウンでも以前は看板を置いていたが、壊されたり盗まれたりすることが多く、また店の人の協力も得られなくなり一時中止。
しかし、今回の悲惨な事故を受け、再び看板を置くようになった。

こうした実態に行政は…

生野区役所 筋原章博区長:
区役所の方で、コリアタウンにかかる安全対策の検討会議を8月中にも早急に立ち上げて、進めていきたい。行政、警察、近隣住民ら関係者を集め、適切な対策を考えていく予定です

犠牲となった小さな命。
安全で便利な商店街とは。
観光地と公道が重なり合うこの場所に、”時代の変化にあった対策”が急がれる。

(2022年8月11日放送)

関西テレビ
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