休業要請を巡り大阪と政府が対立
緊急事態宣言の延長に伴い、全国の都道府県は5月7日から新たな段階に入った。
新型コロナウイルスの感染拡大が警戒される「特定警戒都道府県」では、原則的にはこれまでと同様に、休業要請の対応を続けることになった。
【特定警戒都道府県と休業要請の延長期間】
北海道(15日まで延長)、茨城(17日まで延長)、石川、埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、愛知、京都、福岡、兵庫(31日まで延長)、大阪府(15日から独自基準で判断)

こうした中、大阪府の吉村知事は休業要請について、“大阪モデル”と呼ばれる独自の解除基準を発表。以下の3点が原則7日間続けば、段階的に自粛を解除するとしている。
1. 感染経路不明者が「10人未満」
2. PCR検査の陽性率が「7%未満」
3. 重症者の病床使用率が「60%未満」

だがこの出口戦略を巡り、吉村知事と政府の西村経済再生相が火花を散らしているのだ。
騒動のきっかけとなったのは、吉村知事の5日のこの発言だった。
吉村洋文 大阪府知事:
本来であれば、国において具体的な指標というものを4日の段階で示していただければよかったですけども、それを示されないということになったのであれば、これは大阪独自に示していこうということです。大阪がやらなければずっーとやらないですよ!

この発言に対して、西村経済再生相は6日こう反論したのだ。
西村経済再生相:
国が示さないから大阪が示すと…そう言われたと私も報道で承知していますが、これは何か勘違いをされてるんじゃないかというふうに思います。強い違和感を感じています

吉村知事の発言には「国に出口戦略の指標を示してほしかった」という意図が、西村経済再生相の反論には「休業要請は独自に知事が判断するもの」という意図がそれぞれうかがえた。
吉村知事の謝罪で沈静するも...発言の真意とは?
西村経済再生相の反論を受けて、吉村知事はツイッターにて謝罪のコメントを投稿している。
「西村大臣、仰るとおり、休業要請の解除は知事権限です。休業要請の解除基準を国に示して欲しいという思いも意図もありません。ただ、緊急事態宣言(基本的対処方針含む)が全ての土台なので、延長するなら出口戦略も示して頂きたかったという思いです。今後は発信を気をつけます。ご迷惑おかけしました。」
また謝罪コメントを受けて、西村経済再生相も取材にこう答えている。
西村経済再生相:
ちょっとした言葉のあやというか誤解がありました。このコロナ対策を何とか収束させたいという強い思いは共通であります。これまで以上に緊密に連携をして、この封じ込めに向けて取り組んでいきましょうと

Live News it!のスタジオではジャーナリストの柳澤秀夫さんに話を聞いた。
加藤綾子キャスター:
新型コロナウイルスを収束させたいという強い思いは一緒なんですとおっしゃっていましたが、柳澤さんはどうご覧になりますか?
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
緊急事態宣言を出したり解除するのは政府の仕事。それに基づいて休業要請を出したり解除するのは知事の権限。その辺がごっちゃになったような感じが否めないですね。(吉村知事は)わかった上でそう言ったのかなという感じもするんですけど。大阪モデルはあくまでも休業要請をしたものを解除するときの解除基準を示したと取れるんですよね。吉村知事にしてみれば、緊急事態宣言の延長にあたって具体的に解除するときにどういう目標の数字を示すのか、政府が示さなかった。それに対するいら立ちがあったと思うんです

加藤綾子キャスター:
ツイッターのコメントでもあったものですよね
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
それを考えれば、吉村知事の発言は当然の心情ではなかったかなという感じがしますよね
加藤綾子キャスター:
風間さん、西村経済再生相が反応した背景には何があったと思われますか?
フジテレビ・風間晋解説委員:
政府の新型コロナウイルス対応を国民の立場で振り返って考えてみると、マスクが全然手に入らないとか、PCR検査をなかなかやらせてもらえないとか、10万円も決まったけれどもスピードが遅い。そして今回の出口戦略につながる数字を大阪府が先に言ったことで、国民の心配や要望を政府がうまく吸い上げて実現に結びつけることができていない感じがするんですよ。西村経済再生相ご自身も思ったようにできていないなというのを感じていて、そういう焦りが吉村知事に対する厳しい言葉に出ちゃったのかなと…私はそう受け止めています
加藤綾子キャスター:
政府に対する風当たりの強さも感じていて。誤解がないように反論しようという思いだったんじゃないかということですね
街の人はどう捉えたのか?
この論争、街では、どのように受け止められているのだろうか?
40代女性A:
(吉村知事は)イケメンですよね。すてきな方だと思います。独創性がある政策をとっている印象です
70代女性:
国がなんだかよく分からないじゃないですか。何かころころ変わるから、(大阪が独自で)やっちゃうんじゃないですか
40代女性B:
(大阪モデルは)非常にわかりやすいし、モチベーションを保つにはとてもいいことだと思いました。(西村経済再生相の反論は)国の方で大まかな方向性というか、国民を思っての発言を先にしてほしかったとは思いますね
50代男性:
結局国がやらないから(大阪)府がやったと。そして府ができないから、今度は国にやってくださいって逆に投げてるというか戻してるというか。なすりつけてるような感がしないでもないですけどね
休業要請の解除で懸念される感染の“第2波”
休業要請について特定警戒都道府県の対応は、大阪府は15日から独自基準で解除を判断、北海道が15日まで延長、茨城が17日まで延長、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、岐阜、石川、京都、兵庫、福岡は31日まで延長するとしている。
一方、特定警戒都道府県に含まれない34県のうち、宮城、新潟、岡山、鹿児島など20の県では、7日からすでに一部の業種を除き、休業要請の緩和や解除に踏み切っている。
例えば宮城県では、徹底した感染防止対策をすることなどを条件に、劇場・映画館、博物館・美術館、自動車教習所・学習塾、百貨店・飲食店、カラオケボックス、キャバレー、ライブハウス、漫画喫茶、スポーツジム、パチンコ店、ゲームセンター、旅館なども休業の緩和措置が取られている。店側がどう営業するかが注目されている。

加藤綾子キャスター:
二木さん。徹底した対策を行えば大丈夫なのでしょうか?
昭和大学医学部・二木芳人客員教授:
完璧な感染対策が取りやすい分野もあれば、当然我々も新しい生活様式に合わせて、ソーシャルディスタンス、マスクや手洗いとかもするのでしょうけども、そういうことをしても営業が厳しいんじゃないかなと思われるような業種もありますよ
加藤綾子キャスター:
そうですね。風間さんどんなことが大切だと思いますか?

フジテレビ・風間晋解説委員:
感染が再び広がる兆しをすぐに察知する対策をきちんと取っていますよ。というのを一緒に宣言するのが本来のあるべき姿だと思います
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
(感染の)第2波という話もありますからね。なし崩し的にこれまでの緊張感が崩れていくというのが怖いですね。難しいですけどね。こういう動きが出てくると
(「Live News it!」5月7日放送分より)