タイで段階的に経済活動を再開
東南アジア・タイでは、新型コロナウイルスの新規感染者が最近では連日1桁台と、抑え込みに成功しつつあります。このためタイ政府は5月3日から規制の一部を緩和し、経済活動の再開に踏み切りました。その対象は市場や飲食店、理容室など多岐にわたります。こうした場所で、具体的にどうウイルスの伝播を防ぐのか?タイ政府は各業界に細かい規則を義務付けました。今後の経済再開のカギとなるそれぞれの場所での取り組みを紹介します。
解禁された8つの分野
5月3日に解禁されたのは、首都バンコクでは8つの分野です。「飲食店内での食事」、「市場での販売」、「理容室や美容室」、「クリニック」、「公園」、「屋外でのスポーツ」、「ゴルフ」、「ペットサロン」です。いずれも3月末に行政から閉鎖命令が出て、休業していた場所です。
レストランや屋台での飲食
まず紹介するのはレストランや屋台での飲食です。
食べる際にマスクは着けられないので、ここでは基本的には「距離を保つ」という戦略が取られています。客と客の距離は1メートル、テーブルとテーブルの間は1.5メートル離れるよう配置が義務付けらました。
また距離が取れない場合、物理的な障壁として「パーテーション」の設置も求められます。従業員たちは全員がマスクを着用。宴会が始まらないよう、お酒の提供は一切禁止です。

ステーキ店オーナー:
「テーブルのレイアウトについては、バンコク都庁のルールに従って準備しなければならないので、お客様が同じテーブルに座る時は、対角に座らなければなりません。」
理容室や美容室では
では接客の際、客との距離が取りにくい理容室や美容室はどうするのでしょうか。
この美容室では物理的な接触防止措置に気を配っています。スタッフはフェイスシールドとゴム手袋の着用が義務付けられています。顔と顔が近づくシャンプーのときでも、客の顔を覆う必要があります。万が一、お互いが咳やくしゃみをすれば、ウイルスが伝播する危険性があるからです。

また接触の時間をできるだけ短くする戦略も採用されています。
サービスはカット、シャンプー、ブローのみで、時間がかかるカラーリングやパーマなどは認められていません。ハサミなどの器具も毎回消毒するよう求められます。来店にはすべて予約が必要です。万が一感染が起きた場合に追跡できるよう客の全員が名前や電話番号を登録することも義務付けられました。
美容院のオーナー・ピムさん:
「働きたかったです・・・開けれられてよかった!」
「(店側と客の)お互いにとって安全のためにいいと思う。今はみんな心配していますから。」
ただ距離を保つために、この店では6つある席のうち3つしか使えず、採算がとれるようになるのは、まだ先になりそうです。
美容院のオーナー・ピムさん:
「本当はカットだけだとビジネス的に、経費はカバーできないんです。」
公園オープンの条件は
閉鎖されていた公園もオープンしました。ジョギングなどは問題ありませんが、いわゆる「密」の状態になる集会などは禁止されています。また、ウイルスの伝播を防ぐために、直接物を触る運動器具を使ったアクティビティも禁止されたままです。

タイではこうした緩和を行なった後、14日間様子を見て、感染状況が安定していれば、もう少しリスクが高い業種の再開を行う予定です。ただ、ナイトクラブやバー、パブなどはリスクが最も高いとして、緩和は最後の時期になる見通しです。
新型コロナウイルスの拡大抑制と、経済活動をどう両立させるのか。
同じく東南アジアのマレーシアやシンガポールなどもリスクが低い業種から、様々な規定を設けた上で、徐々に経済活動を再開します。タイを筆頭に、各国は、ウイルスの知識を元に様々なルールを定めて感染防止策を徹底しながら経済活動を回復に乗せるための取り組みを行っています。
【取材:FNNバンコク支局長 佐々木亮】