医療分野の技術革新は近年ますます加速し、提供されるサービスも刷新を続けている。歯列矯正に関する技術も日進月歩だ。

金属のワイヤーを使った歯の矯正を思い浮かべる人も多いかもしれないが、「マウスピース」を使った矯正を見聞きする機会も増えたのではないだろうか。

ここでは、子どもの歯列矯正の“今”について、スーパースマイル国際矯正歯科院長・矯正歯科医の賀久浩生先生に話を聞いた。

歯並びを整えるメリットとは?矯正は子どものうちから始めた方が良いの?

スーパースマイル国際矯正歯科の賀久浩生医師
スーパースマイル国際矯正歯科の賀久浩生医師

――まずは歯列矯正を行うことのメリットを教えてください。

賀久浩生医師(以下、賀久先生):
患者さまが感じるメリットは大きく分けて二つあります。一つは、審美的なもの、つまり見た目がきれいになるという点です。

もう一つは機能的なもの、たとえば歯のかみ合わせが良くなる、特定の歯だけが酷使される状況が改善する、といったメリットです。それらを放置しておくと、加齢にともなって歯列が崩れてくる可能性があります。

また、歯の並び方が偏ると、使う筋肉にも偏りが出て、顔の骨格や筋肉のつき方が左右非対称になり、しかもその影響が全身に及ぶケースもあります。

――歯列矯正を始めるとしたら、子どものうちからの方が良いのでしょうか?

賀久先生:
子どもの時にできることと大人になってからできることは違います。骨格が固まり切らないうちに矯正を始めることで、いま述べた「顔の骨格や筋肉のつき方の非対称化」を防ぐことができます。

乳歯から永久歯に生え変わる時期を利用して矯正をすると、端的に矯正のオプションが増えます。一生に一度しかないこの時期に矯正を始めると、大きなアドバンテージになります。

一方、大人になってからの矯正であれば、骨格が固まっているので、その中でどのように歯の位置を動かすかを考えます。

――矯正を始める時期としては何歳くらいが適していますか?

賀久先生:
人によりますが、早い人は6歳ごろから始めます。歯並びの影響で、舌の位置や唇の位置に問題が出てしまう、あるいは口呼吸ばかりになってしまう、乳歯の生え方によって永久歯が生えてくる位置が不正になってしまうといった問題が起こるためです。

――歯列矯正で一般的に広まっているものにはどんなものがありますか?

賀久先生:
ワイヤー矯正とマウスピース矯正がよく知られています。ワイヤーには、歯の前面に金属をつけるものもあれば、歯の裏側につけるもの、また、色を白色などにして目立ちにくくしているものもあります。

マウスピースにもさまざまな製品があって、上あご・下あごの歯で一体になっているものもあれば、別々になっているものもあります。

最近は審美的な観点から、「マウスピースで矯正をしたい」という人が当院で増えています。マウスピースを装着していることが見た目でわからないほど透明な製品が出てきているのです。

子どものマウスピース矯正って実際どうなの?痛みや通院頻度は?

――先ほど「マウスピースによる矯正を選ぶ人が増えている」と仰いましたが、マウスピース矯正を子どもに行う良さはどこにありますか。例えば矯正が楽といったメリットはあるのでしょうか。

賀久先生:
まず、口の中の衛生状態を良く保てるというメリットがあります。マウスピースは食事などの必要な場面に応じて取り外しができるため、装置に食べ物が付着し、きれいにするのが大変といった懸念がありません。

また、マウスピースは装置自体が壊れる危険性も低く、つけた時の違和感も(突起物などがほぼないため)少ない傾向にあります。それと、やはり審美的なメリットがありますね。マウスピースはとにかく目立たない。

歯列矯正というと、たとえば好きな食べ物が食べられなくなるなど、何かを諦めなければいけないとか、ハードルが高いといったイメージを持たれている方もいらっしゃいます。ですが、実はそれほど負担がかかるものではありません。

習いごとなど、好きなことをしながら矯正をすることは十分可能です。マウスピース矯正であれば、食べ物が制限されることもない。負担ということを考えると、マウスピース矯正は子どもにとって圧倒的に楽です。装置をつけたり外したりする煩わしさはあるかもしれませんが、子どもの矯正の場合、そこは教育の一環だと思って、親子で協力し合っていただければと思います。

また、これは付言しておきたいのですが、どのような矯正法をとったとしても、治療の最終段階で歯並びが再び崩れるのを防ぐために、一定の期間、保定装置を装着します。マウスピース型の保定装置も多く利用されているので、その場合は、やはり、つけたり外したりする必要が出てきます。マウスピース矯正に限らず、矯正において装置のつけ外しの習慣化は避けられません。つまり、マウスピースだけに煩わしさがともなうわけではないのです。この意味で、マウスピース矯正ができない子どもに他の矯正法ができるとは思えません。

――矯正に関して、たとえば痛みや通院頻度を気にする人もいると思いますが、そのあたりはいかがですか。

賀久先生:
マウスピースは痛みも少ない傾向にあります。たとえば、1カ月に1ミリ歯を動かすとしましょう。ワイヤーだと、月1回の調整で、まさに「1ミリ」歯が動くように力を加えます。

一方、マウスピースの場合は、1カ月の間に4つのマウスピースを(毎週)つけ替えます。一度に歯に加わる力は、1ミリの4分の1、つまり「0.25ミリ」歯を動かす程度の力です。このため、痛みも小さくなります。

また、通院頻度については、交換のためのマウスピース製品を一度にたくさんお渡ししますので、少なくなります。当院では、ワイヤーの場合だと1カ月に1度通院していただく必要がありますが、マウスピースであれば、4カ月に1度の通院で済むというケースが多いです。

――矯正期間については、使用する装置によって異なるのでしょうか?

賀久先生:
2000年代くらいまではワイヤーの方が早く矯正できると言われていましたが、その後、ほとんどのケースで結果も期間も、ワイヤーとマウスピースで差はないという状況になりました。

マウスピース矯正で使用する装置(マウスピース型矯正装置)のことを英語で「アライナー」と呼ぶのですが、2020年に出た論文(※<1>)では、ワイヤーよりもアライナーの方が、10代の歯列の移動が軽度な場合では矯正に必要な期間が短く、装置の破損などの緊急のアポイントなども少なく、結果も良いという研究結果が出ています。

※<1>:アメリカで最も歴史のある矯正歯科スタディグループ「Edward H. Angle Society of Orthodontists」で公式出版されている「The Angle Orthodontist」に掲載された論文「Outcome assessment of orthodontic clear aligner vs fixed appliance treatment in a teenage population with mild malocclusions」より。

――驚きです。しかし、マウスピース矯正はまだまだ日本に浸透していないイメージがあります。

賀久先生:
市場的に見れば、マウスピース矯正の需要は広まっています。その要因の一つに、デジタル化によりスムーズに矯正を開始できるということもあるでしょう。

口腔内スキャナーを使って歯型をデータ化し、矯正前後の歯並びのシミュレーションを画面で見ながら段階的な矯正の説明をする。そして、当院では3、4カ月分の矯正の計画を立てて、それをお渡しするだけで矯正がスタートできます。

シミュレーションツールやオンライン診療アプリ。デジタルテクノロジーの活用で矯正技術に変化

ここまでで、歯列矯正をめぐる現状を知ることができた。特にマウスピース矯正の伸展には目を見張るものがある。最後に、マウスピース型矯正装置のリーディングカンパニーであるインビザライン・ジャパン株式会社の井川由佳氏に話を聞いた。

インビザライン・ジャパン株式会社の井川由佳氏
インビザライン・ジャパン株式会社の井川由佳氏

――マウスピース矯正というと「近年聞かれるようになったもの」と思っていましたが、貴社は20年以上も前からサービスを展開されていますね。

井川由佳氏(以下、井川):
これまで世界で1200万人を超える方々に当社の製品を使用していただいています(*)。歯科医師は、矯正の計画を立てる際にシミュレーションツールを用いますが、その際に、1200万人以上の実績を通して得られた知見が役立ちます。私たちは、歯科医師が行う歯列矯正を、製品や各種サービスによってサポートしています。
*2022年2月時点、インビザライン・システムとインビザラインGoシステムも含む

――歯列矯正は技術的にはどのように進んでいるのでしょうか。

井川:
当社では、矯正のフロー(=過程)のデジタル化を進めています。たとえば、歯型を取るのに当社が提供する口腔内スキャナーであれば1分ほどでデータ化することができます。

しかもそれを、その場で画面を通じて確認することができる。通院についても、歯科医師がお口の中で装置を調整する時間が無いため、比較的短時間で終わる場合が多いです。

当社のインビザライン・ファースト矯正であれば、1回の経過診察にかかる時間は10分程度で終わることもあります。

また、現在はオンライン診療ができる環境も整っています。専用のアプリを用いて歯列の画像をやりとりし、オンライン通話で診察をするのです。このシステムによって、忙しい親御さんとお子様でも、少しの時間で、しっかり経過観察することができます。

※歯科医院で口腔内スキャナーやオンライン診療アプリを取り扱っていない歯科医院もあります。

マウスピース矯正「インビザライン・ファースト」
マウスピース矯正「インビザライン・ファースト」

――デジタルテクノロジーによって、歯列矯正に変化が起きているのですね。マウスピース矯正を選ぶ利点にはどのようなものがありますか。

井川:
歯列矯正というと、顔に衝撃のあるようなスポーツや、リード楽器を吹くことができないといったことを懸念する人もいますが、マウスピース矯正ならそれらは障壁になりません。「矯正があるから」といって、子どもに体験させたいことを諦める、といったこともなくなります。

当社のインビザライン・ファースト矯正であれば、1200万人(*)から得た知見が詰め込まれたマウスピース矯正による歯の移動と、矯正過程のデジタル化による予測などによって、装置の装着感、その他、装置の調整や通院などの懸念点を限りなく軽減できます。
*2022年2月時点、インビザライン・システムとインビザラインGoシステムも含む

――日常の中で、「いま、矯正中だから」と患者が意識する瞬間が減るのかもしれませんね。

井川:
歯列矯正中であっても、子どもたちには思い切りの笑顔でいてほしい。そういった願いが、先進的なテクノロジーと相まって製品の改善につながっています。

――歯列矯正はデジタルテクノロジーによって大きく進歩していた。矯正前後のシミュレーションの精度も、患者の治療に関する情報が蓄積されるのにつれて、より高まっていくだろう。こうした現在地点を見る限り、少なくとも、さまざまなことを我慢しながら、歯並びを改善するという矯正に対するイメージは改めた方が良さそうだ。

※撮影時のみマスクを外しています。

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提供:インビザライン・ジャパン株式会社
制作:FNNプライムオンライン編集部