シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は皮膚科の名医、うるおい皮ふ科クリニックの豊田雅彦院長が、国内で患者数も重症例も増加傾向にあるアトピー性皮膚炎について解説。夏の紫外線や汗への対策、しつこい症状のぶり返しを防ぐプロアクティブ療法や予防法についても解説する。

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アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎はかゆみのある湿疹です。いわゆる皮膚の症状ですが、一時的ではなく、慢性的に繰り返し繰り返し生じる皮膚病です。

アトピー性皮膚炎の症状は基本的に体の左右対象にどの年齢でも生じ得るのが1つの特徴です。

大きく分けると乳幼児期小児期成人期の3つに分かれます。

乳幼児期では、特にほっぺがジュクジュクするのが特徴です。

小中学生あたりの小児期は、首周りとか肘の内側、いわゆる皮膚の柔らかいところ、薄いところに湿疹などの赤みが生じることと、粉が吹いたように落ちるような乾燥を伴うことが特徴です。

成人期のアトピー性皮膚炎の大きな特徴は3つあります。

1つ目は、比較的上半身に症状が集まってくること。
2つ目は、赤鬼顔貌といって真っ赤に腫れたようになること。
3つ目が、ひっかくことによって痒疹というイボのように硬い、ものすごく痒い皮膚の症状が上半身に集中的に出てくる特徴があります。

私の印象で、治りにくいパターンというのは、一番は乳幼児期からずっと症状が続いていて、成人に至ってしまったパターン。

次が、成人になって20代、30代で初めて症状が出た方。

そして比較的治りやすいのは、乳幼児期に症状があったけど中高生の時に一時期症状が消失して、成人になってまた発症するパターンです。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の原因は未だ完全には明らかになっていません。しかし大きく言うと、遺伝的、体質的な要因に、環境的な要因が加わって発症します。

体質的というのは、1つはアレルギー素因といって、アレルギーの生じやすいパターン。もう1つは、肌素因という、いわゆる肌が弱いというパターン。

環境的な要因の代表は、1つはアレルゲンと呼びますが、例えばハウスダストダニ、その人特有のアレルギーを持っているパターン。

その他の環境的要因としては気候。今でしたら夏の紫外線によって肌が弱いのでかぶれやすい。

その他には、ストレス疲労。これらがアトピー性皮膚炎を悪化させたり、発症させる要因になります。

厚生労働省の2017年の統計が最新ですが、アトピー性皮膚炎の患者は国内で約51万人といわれています。2008年の統計では約35万人だったので、9年間の間に16万人増えたことになります。患者数は増加傾向にあることは間違いないと思います。

ここ数年のコロナストレスで患者さんがさらに増えて来院するケース、しかも重症の患者さんが増えたという状況がクリニックで見受けられます。

アトピー性皮膚炎の治療法

アトピー性皮膚炎の治療には大きな3本柱があります。これを標準治療といいます。

1つは、原因や悪化因子を見つけ出して除去する。

2つ目はスキンケア。アトピーの患者さんは皮膚のバリア機能、皮膚の外からの刺激に対して弱いので、それを保護してあげるのがスキンケアです。

3つ目が薬物療法。例えばステロイドの外用薬、タクロリムス軟膏の外用薬、抗ヒスタミン薬の内服。「かゆみ止め」というものを中心とした薬物療法です。

アトピー性皮膚炎の治療を行って、保湿だけでやっていける状態に入ることを寛解といいます。寛解しても慢性的に症状を繰り返すのが、アトピー性皮膚炎の特徴です。

ぶり返しを起こさないために現在行われている治療を、プロアクティブ療法といいます。

薬の塗る量や回数を減らして、毎日塗っていたものを1日おきにして、それで大丈夫だったら週に2回とか間を空けていくことで、結果的にぶり返しを防ぐことができ、トータルのステロイド外用薬の使用量や強さを減少できることが証明されています。

アトピー性皮膚炎の予防法

アトピー性皮膚炎の予防はスキンケアです。

まずは、清潔を保つこと。シャワーを浴びたり、入浴することです。夏場に汗をかいて何回もシャワーを浴びて汗を落とすのは好ましいことです。

ただ、洗浄剤、シャンプーを使うのは1日1回にして下さい。皮膚の表面には皮脂膜という皮膚を守っている大切な膜があります。

シャンプーや洗浄剤を1日に何回も使うと、その膜が取れてしまい、皮膚が乾燥してしまいます。

もう1つが保湿。これが最も大事です。皮膚は入浴後が一番乾燥すると言われています。なので入浴後は特に入念に保湿をすることが大事です。

保湿剤の選び方、保湿の仕方は医師の指示に従って頂きたいです。保湿剤に限らず体に塗る軟膏クリームの場合は、大体指の第1関節の長さ、0.5gと言われています。

液体の保湿剤の場合は、大体1円玉大。それは手の表面2つ分、もしくは顔の面積に相当する量といわれています。それ以下だと足りないですし、それ以上は必要ないと思います。

紫外線対策

アトピー性皮膚炎の患者さんの場合、特に紫外線は皮膚のバリア機能を低下させることが知られています。日傘とか一番良いのは日焼け止めをつけることです。

ただ、なかなか肌に合う日焼け止めがないと困っている方も多くいて、それも医師に相談してもらえたらと思います。

現在はまだアトピー性皮膚炎の原因は完全に解明されていませんし、いわゆる付き合っていく病気という状態です。しかし新しい薬もどんどん出ていて、原因やかゆみに対しての研究が進んでいます。

ですから、いつかは付き合っていく病気から治る病気に変わっていくと思います。かゆみの無い時代が来ると信じて治療に取り組んで頂きたいと思います。

記事 1 豊田雅彦

うるおい皮ふ科クリニック(皮膚科、美容皮膚科、漢方皮膚科、アレルギー科、形成外科)院長:千葉県松戸市・医学博士・かゆみをなくすことをライフワークに掲げ、患者さんが希望を持てる診療に日々尽力。現在までに2,000以上の医学論文・医学専門書を執筆。また、国内外で年間最多250以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う。受診患者の99%(年間約3万人)の症状を軽減〜消失に導いた、世界有数の皮膚病・かゆみのスペシャリスト。