この夏、大注目の映画「ベイビー・ブローカー」。5月に行われたカンヌ国際映画祭では、ソン・ガンホさんが最優秀男優賞を受賞し、韓国人俳優では初、アジア人では4人目の快挙を成し遂げました。ソン・ガンホさんのこれまでの出演作は、今回の「ベイビー・ブローカー」を入れて全33作品、うち24作で主演を務めています。出演作品の累計動員数は1億人を突破し、韓国のアカデミー賞”と称される「大鐘賞(テジョン賞)」だけでも、男優主演賞を3度受賞しています。
是枝裕和監督、ソン・ガンホさんに製作秘話を聞きました。
世界が絶賛!俳優ソン・ガンホ何がスゴい?
この記事の画像(4枚)ーー今回、初タッグとなったお二人ですが、お互いどのような印象だったのでしょうか。
是枝裕和監督:
聖と俗とか、善と悪など、両面を抱え込んだ、人間の存在の複雑さみたいなものを常に表現されるところがとても魅力的だなと思います。
「殺人の追憶」でいうと、たたき上げの刑事のありようみたいなものが、土の匂いがするぐらいリアルなんですよね。そういった表現が国民的俳優といわれる部分だと思います。
唯一無二の存在感です。
ソン・ガンホさん:
映画は現在、様々なメディアがデジタル化している中、映画も最先端の産業の方向に向かっていると思うんですけれども、そんな状況にも関わらず、是枝監督は、映画における重要な感性、つまり、アナログ的な感性の重要性というのを手放さずにいらっしゃる、というところがとても印象的で大変感動的に思いました。
ーー今回、是枝監督はどういった経緯でソン・ガンホさんにオファーされたのでしょうか。
是枝裕和監督:
韓国の映画祭に行った際に、「韓国でご一緒したい役者は誰ですか?」と質問されて、「ソン・ガンホさん」とずっと言っていたのですが、インタビューでそれを答えて会場を出るときに、エレベーターを待っていたら、ドアが開いて、ソン・ガンホさんが立っていたんですよ。
そこがはじめましてなんですけど、すごく縁を感じて、これは彼で企画を書きたいというふうに思いました。
「妻に褒められるのが一番幸せ」愛妻家の一面も
ソン・ガンホさん:
(是枝監督は)個人的にとても尊敬している監督でしたので、オファーをいただいた時には、本当に感動しました。
ソン・ガンホさん、実は愛妻家の一面もあるといいます。
過去のインタビューでは、「妻に褒められるのが一番幸せ」「妻の話は99%反映される」と明かしていました。妻が第一という愛妻家ぶりを告白しています。
ーーソン・ガンホさんにとって、奥様はどういった存在なのでしょうか。
ソン・ガンホさん:
妻が第一とすることによって、ご飯がおいしく食べられます。
妻は実は、私のファンだったんです。
古市憲寿さん:
いま、日本のテレビなので、奥様はテレビをみることができないと思うので、もっと自由にお話されていてもいいと思います。
ソン・ガンホさん:
実は、きょうもホテルからこの放送を見ています。
「1時間前に現場入り…」是枝監督も驚くソン・ガンホの“こだわり”
是枝監督とソン・ガンホさんとの強力タッグが実現した「ベイビー・ブローカー」ですが、
その撮影現場で、是枝監督も驚く出来事があったといいます。
是枝監督は、当日の撮影分はその日のうちに編集、翌日の撮影前に、スタッフに編集した映像を見てもらい、共有するという手法をとっているそうですが、それを知ったソン・ガンホさんは、編集映像を見せてもらうために、毎日、撮影の約1時間前には現場入りしていたといいます。
さらに、監督の編集を最大限尊重しつつも、「別のテイクもどうだろう?」「もしよければ比較してみて」と提案することもあったそうです。
是枝監督:
僕が韓国の言葉のニュアンスまでは、わからないと言うことがあったので、その部分も含めてフォローしていただいた。
僕がつないだものを尊重していただきながら、お昼ご飯の時に「もう一つよいテイクがあると思うから、それともう一度比べて見てほしい」というようなご提案をいただきました。そのように、二人で答えを見つけていくという作業が、僕にとっては、とても助けになりました。
ソン・ガンホさん:
本当に光栄なことに監督は私、俳優や、スタッフの意見に絶えず耳を傾けてくださる、そんな環境を作ってくださってたんですね。
なので、俳優もスタッフもクリエイティビティーを存分に発揮できるような、環境を作っていただけたと思っています。
まさに、二人が力を結実した「ベイビー・ブローカー」。
ソン・ガンホさんは、「日本や韓国といった国を超えて、私たちが生きていく上で大事な人生の価値はなんなのか、また、生きていく上で美しいものはなんなのか、という問いかけを是枝監督がされた作品になっていると思います。」と話しています。
(めざまし8「わかるまで解説」6月27日放送)