コロナ対策予防を手伝う『非接触棒』

新型コロナウイルスの対策として、厚労省は、咳エチケットこまめに手洗い・うがいをすることを呼びかけており、多くの人が外出自粛や感染リスクの高い3密を避けるなど、各自で対策を講じていることだろう。

4月28日に感染予防をしている人たちに役立ちそうな、とある商品が登場した。それがこちら。

(提供・菊水産業)
(提供・菊水産業)
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「つまようじ屋の非接触棒 さぁ 思う存分つつくがよい」

一見普通のつまようじに見えるが、よく見ると両端がどちらも尖っていないのが分かる。

そう、非接触棒と名付けられたこちらは、接触感染を予防するスティックなのである。
今、エレベーターや自動販売機のボタンなど、不特定多数の人が触れる部分に直接タッチするのをためらう人が多いと思うが、そんな時にこれでボタンが押せる携帯用アイテムだ。

(実際の使用例 エレベーター・自販機)
(実際の使用例 エレベーター・自販機)

さらに、汚すことなくちゃんとエチケットを守って捨てて欲しい、と使用済み入れもセットでついてくる。ポイっとゴミを捨てる人型と、「ちゃんとほかしや~」と大阪弁で書かれている、こちらもパッケージが面白い。「ほかす」とは大阪弁で「捨てる」という意味だ。

価格は568円(税別)。「コロナ(567)に負けない」という意味が込められているという。

(使用済み入れ 左側に小さく「ちゃんとほかしや~」)
(使用済み入れ 左側に小さく「ちゃんとほかしや~」)

製造したのは、大阪府の創業60年、国産つまようじの製造・販売等を営んできた菊水産業株式会社。

製造工程で湿気ってしまい、つまようじになりにくい材を再利用することで誕生したという。

(普通のつまようじならば、この後工場でカットされ、先を削られる)
(普通のつまようじならば、この後工場でカットされ、先を削られる)

ちょっとしたストレスから解放される非接触棒だが、どうしてつまようじの老舗がこのような商品を開発したのだろうか?菊水産業の4代目専務取締役・末延秋恵さんにお話を伺った。

「何かつまようじ屋としてできる事はないか?」

ーー『非接触棒』製作の経緯を教えて下さい。

Twitterで武漢の人達がエレベーターに設置してあるつまようじでボタンを押してるのを見て、本業が国産つまようじ製造業の私は、負けてられないなって思って、設置しているタイプがあるなら、国産の物で持ち運べて自分専用の物があればいいなと思って作りました。


ーー『非接触棒』はどのようにして作られる?

何かつまようじ屋としてできる事はないか?と考えてて、口に入れるわけではないので、先を尖らす必要はないなと思いました。
普通製造の場合、工場で30センチ軸の丸ヒゴを作ってもらっています。これを6センチにカットして、それから先を尖らす加工をして、つまようじになります。その前のカットの段階でいいんではないか?と思いました。

ただ、製品になる物は普段の出荷でいっぱいいっぱいです。製造過程で機械に通らなくなった材料があるので、それを使えばいいのではないか?と思って試作を作りました。



爪楊枝の取扱量で日本一と言われている大阪・河内長野市の中でも、一般的な溝のついた「こけし楊枝」を製造しているのは現在唯一という老舗のつまようじ店・菊水産業。
中国産の安価なつまようじが流通している中で国産つまようじの良さを知ってもらうため、いろいろ広報活動をしてきたというが、今回の試作品をSNSで友人に聞いてみたところ好感触だったため製品化に乗り出したそうだ。

(丸ひご これがカットされる)
(丸ひご これがカットされる)

毛羽だちをなめらかにするのは手作業

ーー『非接触棒』のこだわり部分は?

弊社のつまようじは6センチです。容器に入れると短かすぎて、取りにくく、手でいっぱい触らないといけない事になります。なので、少しでも接触を抑え、取り出しやすい普通のつまようじのサイズよりも長めの7.5センチにしました。これは手作業でカットしているのでできる事です。

ーー製造にあたって苦労した点は?

SNSで友人に聞いて好感触だったので商品化しようと思った時に量産を考えました。そもそも湿気ていると機械に入らないので、サンプルは丸ヒゴをハサミで手でカットして作ってましたから(笑)機械に入れずに一気に切断する方法を2日間でなんとか整え、沢山できるようにしました。

しかし、丸鋸で切断すると切断面が毛羽だつので、これをなめらかにしなければなりません。機械も考えましたが、削りすぎてしまうので、結局手袋をしてすり合わせて毛羽を落とすしかありません。なので、今も全ての毛羽をなめらかにするために、すり合わせて取っています。容器に詰める作業も手作業です。

(手作業での毛羽とり の様子)
(手作業での毛羽とり の様子)

「こんなに売れるとは思ってなくて(笑)」

ーー『非接触棒』の現在の売れ行きは?

累計500件以上の注文が来ています(5月3日時点)。少し落ち着いてきました。初日と2日目がパニックになりましたが(笑)大分処理が追い付いてきました。
ありがたい事に一人で10個や多い人で20個買ってくれる方や診療所さん・会社さんで買ってくれている方がいます。誰かにプレゼントするのかなぁとか、職場で使おうとしてるのかなとか想像しています。

本当にこんなに売れるとは思ってなくて(笑)全然在庫を作ってなかったのでビックリしました。続々と今、皆様の手元に届き出していると思います。



キャッチコピーやデザインなど考案者は全て、末延秋恵さんとのことで、「少しでもこのコロナ禍の中、殺伐としたニュースばっかりで私もうんざりしてましたので、ちょっとでもクスッと笑えて、人にプレゼントしたり、お店に置いたり、話のネタになったらいい」という思いから考え付いたそうだ。

非接触棒 568円(税抜)
非接触棒 568円(税抜)

また、『非接触棒』製造について末延さんは、「コロナの影響で製造業も大打撃を受けていることに目を向けてほしい」という思いもあったそうで、「小さな町工場でも自分のできる範囲でできる事から何かする事ができるって、前向きな姿勢を製造業の仲間にも見てほしかった」と話す。

新型コロナとの戦いはまだ続きそうだが、こうしたアイテムや手洗いなど日々の予防策でなんとか収束に向かってほしいものだ。
 

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プライムオンライン編集部
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