世界遺産にも登録されている奈良県の法隆寺が、コロナ禍で財政難になったためクラウドファンディングを行っている。
6月15日にスタートすると、すぐに多くの支援が集まりわずか半日で目標の2000万円を達成。期間は7月29日までだが、支援金は増え続けてすでに1億円を超えている。

(出典:法隆寺)
(出典:法隆寺)
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607年に聖徳太子によって創建された法隆寺は、18万7000㎡の境内に世界最古の木造建築物をはじめとする国宝39件を所蔵し、コロナ前であれば年間約65万人の参拝客が訪れていたという。

ところがコロナ過によって参拝客と拝観料が激減してしまう。
去年の参拝客は50%程度で、寺の主な収入源である拝観料も大幅に減少した。これまでは拝観料で、境内の施設のメンテナンスや、警備、樹木などにかかる維持管理費を賄っていたが、この状況が続けば法隆寺を護ることができなくなるとして、クラウドファンディングで寄付を募ることを決めたという。

(出典:法隆寺)
(出典:法隆寺)

目標金額は2000万円で、6月15日午前10時に募集を開始すると、支援金が続々と集まり、16日の0時40分ごろに目標を達成。
期限は7月29日までだが、その後も支援金は増え続け、すでに1億円を突破し、支援者は5000人を超えている。(6月23日時点)

維持管理費についてのご支援をもらっていいものか

長い歴史を持つ法隆寺の財政難も驚きだが、それを補うためにクラウドファンディングを行うのも意外な印象がある。どういう経緯でやると決まったのだろうか?また、目標金額2000万円を超えた分は何に使われるのか?
法隆寺の大野正法執事長に聞いた。

――クラウドファンディングのアイデアは誰が思いついた?

これはいろいろと寺内で協議したり、寺内以外の人の意見も聞きながら決めました。コロナでは、参拝が激減したため、さしあたって維持管理費を節減しました。でも2年目になってくると、例えば樹木は伸び過ぎて、普通に手入れするより、注意が必要になってきます。

法隆寺は参拝に来られた方の拝観料が主財源で、その使い道の大きな部分を占めているのは文化財の維持管理費です。木が伸び放題では、コロナが収束しても、お越しいただくのに失礼ということで、最小限の維持管理をするのに必要な2000万円を目標に掲げました。

(出典:法隆寺)
(出典:法隆寺)

――法隆寺の人たちはクラウドファンディングをご存知だった?

そうですね。今までのクラウドファンディングというのは、物を作るとか、壊れたものを修理するとか、例えば仏像を修理するとか建物を治すとか、そういう支援を皆さんがやっておられたのは分かっていました。
ただ、今回の目的である維持管理費についてのご支援をもらっていいものか、そういったクラウドファンディングがあるのか、その辺は分からなかったので、色んな人の協力を得ました。
 

――拝観料が減って、どのように節約した?

これまで2回やっていた草刈りを1回にするとか、いろいろ細かく節減しました。
 

余裕ができれば宝物も修理したい

――目標額を超えた分は何に使う?

多くの方は、法隆寺が建物や宝物を大事に引き継いでいくことに共感してもらったと思います。法隆寺はたくさん宝物もあり、収蔵している建物も改修しようとしたら何億円もかかりますが、いただいた気持ちはそういうことに生かしていきたいですね。
余裕ができれは、境内の営繕だけではなく、収蔵施設や宝物自体の修理ができればいいと思っています。
 

――すぐ目標達成となったが、この反響は予想していた?

いや、全然していません。
だからすぐなくなってしまった返礼品もあり、本当に申し訳なく思っております。
 

――人気が高い返礼品は?

金額的に言えば、1万円や3万円ぐらいの「御朱印」や「散華」をご希望の人が多かったです。
(※編集部注「散華」…蓮の形をかたどった色紙のこと)
 

――他のお寺からも、コロナで困っているという話を聞いたことはある?

直接伺ったわけではないですが、そうだろうと思っていました。修学旅行の季節に奈良にお越しいただければ、いつもならバスが渋滞しているところが、閑散としていましたから。また、お寺だけでなく、お寺の周辺にあるお店も大変な状況にあったのだろうと思います。
 

――またクラウドファンディングをやる可能性はある?

去年は、金堂壁画の修理を見てもらうクラウドファンディングを実施しました。また違う形でクラウドファンディンをやる可能性はあります。
 

――今回のクラウドファンディングでどんな反響があった?

一番は多いのは、「あの法隆寺が財政難で困っているのか!?」という声だったと思います。
また、我々が次世代に歴史遺産を受け継いでいくのと同じように、みんなで守っていくという気持ちで「頑張ってください」とか「昔行った法隆寺を守る役に立ちたい」とか、そうおっしゃる人が多いですね。

お寺は、多くの方の御寄進で守られていて、その形が拝観料になっています。
一般の方は拝観料を見学のチケット代のように思われているかもしれませんが、それは志納金(寄付)になるわけです。実際には、法隆寺にお参りした方も、今回のクラウドファンディングと同じように支援をしていただいたのです。「ちょっと高いな」と思われても、それが法隆寺を守る資金になっていると考えていただけるとありがたいと思います。
クラウドファンディングは、7月29日に終わりますが、法隆寺にお参りに行ったら支援になると思っていただければ今後も維持していくのに助かります。

画像はイメージ
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貴重な文化財を未来に伝え残すための手法として想像以上の成果をあげたクラウドファンディングが。法隆寺のクラウドファンディングは返礼品の在庫制限がないリターンも多数用意されており、締め切りまでにまだ日数があるため、寄付総額はまだ増えそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。