イギリスでは6月2日よりエリザベス女王の在位70年、プラチナ・ジュビリーの祝賀行事が始まった。この間イギリスは4連休となり、ロンドンはお祝いムードであふれている。フォートナム・アンド・メイソンやリバティーといった有名百貨店でも関連グッズが売り出され、経済効果は1兆円を超えるとの試算もある。

宮殿前で王室ファンがキャンプ
2日は1500人を超える将兵らが参加し、女王を祝うパレードがバッキンガム宮殿で行われた。その前日、現場の様子を見に行ったところ、宮殿前のザ・マルと呼ばれる通りには、泊まり込みでキャンプをする人の姿もあった。南東部ケント州から来た4人組は「在位60年のダイヤモンド・ジュビリーも泊まり込んだ。在位70年のイベントを見ることは一生で2度とない。とても興奮している!今夜は徹夜でパーティーするわ!」とうれしそうに話した。

取材しているとリバプールから来た女性3人と、そのうち1人の15才の娘の4人組が「写真を撮ってください」と声をかけてきた。パレードを見るために1泊の予定でロンドンに来たという。1人の女性は「国を動かし続けただけでなく、女王は妻として母として家族を守り続けてきた。色々なことをあきらめてきたと思うが、彼女のおかげでイギリスの魅力は増してきたと思う」と話した。そして、この祝賀行事を特に若い世代に見てほしいと娘と一緒に来たという。15才の娘は「この雰囲気は素晴らしい。きっと20年後私たちより若い子供たちがプラチナ・ジュビリーを学校で習うと思う。そんな場にいられてうれしい!」と笑顔で答えてくれた。

パレードは“巨大フェス”状態
パレード当日、宮殿周辺は立錐の余地もないくらいの人々で埋め尽くされた。歩いて10分ほど離れた国会議事堂の広場前あたりも、ピクニックをする人であふれていた。私個人的には、ここまで人であふれかえったロンドンというのを見たことがなかった。
女王は96才と高齢なこともあり、これまでのようにパレードに参加することはなかったが、それでも終了後にはバルコニーに家族とともに姿を現し、人々の祝福に応えた。長男のチャールズ皇太子、ひ孫のルイ王子の間に立っていた。4世代がそろい近現代の王室の歴史が感じられた。

式典が終わった後は、さらに“お祭り状態”が加速していた。衛兵たちも警備の任務を終え、すっかりリラックスした様子で、気軽に市民と写真を撮り話をしていた。なかには若い女性と電話番号を交換しているような様子も見られた。普段、我々が見る衛兵は一切無駄口をたたかず、まるで人形のようだが、このときばかりは普通の男性に見えた。一緒に取材していた20代のイギリス人カメラマンも「こんな衛兵さん見たことないです」と話していた。

宮殿近くのパブ、その名も「バッキンガム」に行ってみると、客が外まであふれかえり、ここでも衛兵たちと市民がビールを酌み交わす姿が見られた。中もぎゅうぎゅう詰めだったが、壮年の男性が「私の息子は騎馬隊なんだ。女王の周りで仕事が出来て息子をとても誇らしく思う」と話しかけてきた。少なくとも宮殿周辺では、エリザベス女王を通じて多くの市民が一体となっていた。

「女王好き」は75% 次世代に課される新たな王室像
翌日3日はセント・ポール大聖堂で女王に感謝を捧げる礼拝が行われ、王室批判を繰り返しアメリカに渡ったヘンリー王子とメーガン妃も現れた。しかし女王は前日のパレード終了後、疲れを訴え欠席し、次を継いでいくチャールズ皇太子夫妻とウィリアム王子夫妻が主役の形となった。

大手世論調査によると、王室でダントツの人気を誇るのはやはりエリザベス女王で、75%が「好き」と回答。その次はウィリアム王子で66%だ。

偉大な女王からバトンを引き継ぎ、どのような21世紀の王室を作り上げるか。後継者たちは大きな課題を背負っていると改めて感じた。

【執筆:FNNロンドン支局長 立石修】