深刻化する「教員不足」の問題をめぐって、名古屋大学大学院の教授らが、業務実態の調査に乗り出し、その結果を発表した。調査は、去年11月、全国の20~50代の公立小・中学校の教員924人を対象に行われた。アンケートに答えたのは、管理職ではないフルタイムの教師で、その過酷な労働実態が明らかになった。

休憩時間「ゼロ分」が半数も 「魅力ある」仕事

調査結果によると、休憩時間についは、小学校教師のうち51.2%が「0分」と回答し、次いで「6分~10分」が15.5%だった。中学校教師も47.3%が「0分」と答え、次に多かったのは「21分~30分」だった。調査をした名古屋大学大学院の内田良教授(教育社会学)は記者会見で、「ずっと子供の相手をしていて、トイレにいけず体を壊す教員もいる」と話した。

一方で、アンケートに答えた人の86.6%が「教師の仕事は魅力がある」と答えている。ところが、「教師はとても魅力のある仕事」という質問に「とても思う」と回答した人のうち、およそ半数が「この2年間で教師を辞めたいと思ったことがある」と答えた。また28.2%が「この2年間で転職サイトを見た」と回答している。

休憩時間が「ゼロ分」にもかかわらず、多くの教師が、仕事に魅力を感じていた(画像はイメージ)
休憩時間が「ゼロ分」にもかかわらず、多くの教師が、仕事に魅力を感じていた(画像はイメージ)
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調査に関わった高校教師の西村祐二さんは、会見で、「先生になりたいという生徒になんと声をかけていいかわからない。実態を知った時に後悔しないだろうか。無責任にすすめることができない」と率直な思いを話した。

文部科学省は、特別免許制度の積極的な活用を呼びかけるなどして、「教員不足」の解消を目指している。しかし、教師を増やすことよりも、現役教師の「働き方改革」が進まない限り、人材流出は止まらない。

”見えない残業”が教師の負担に

1週間の中で、所定労働時間を超えて業務を行った時間「総時間外業務」は、小学校教師で平均24.5時間、中学校教師で28.5時間だった。これは1ヶ月に換算すると、小学校で98時間、中学校で114時間となり、「過労死ライン」を超えている。

このような状況の中、総時間外業務が40時間以上の人のうちは、小学校でおよそ3人に1人が、中学校では4人に1人が「勤務時間の書き換え」を求められているという。いわゆる、勤務表には記入しない「サービス残業」ということだ。

サービス残業、仕事の持ち帰りが、先生たちの負担に(画像はイメージ)
サービス残業、仕事の持ち帰りが、先生たちの負担に(画像はイメージ)

さらに、持ち帰りの仕事が、小中学校の教師ともに平日でおよそ1時間、土日ではおよそ1時間半あることも明らかになった。このような“見えない残業”が、先生たちにとって、大きな負担となっている。

子ども達への影響は

今回の調査では、「総時間外業務」が長い人ほど、「いじめを早期発見できているか不安」を感じていることが分かった。40時間以上の教師のうち、81.9%が「不安」と回答していた。また、勤務時間が長ければ長いほど、「準備不足のまま授業に臨んでいる」と思っているという。40時間以上の教師のうち70.1%が「そう思う」と答えている。

内田教授は会見で、「忙しいということは、授業準備もできていないし、いじめも発見できていない。日本社会全体の問題として見ないと行けない」と述べて、「教員不足」が子どもたちに悪影響を及ぼすと強調した。

記者会見を行う名古屋大学大学院・内田良教授ら(13日 文科省)
記者会見を行う名古屋大学大学院・内田良教授ら(13日 文科省)
社会部
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