昨シーズンの賞金女王・稲見萌寧(22)が前回大会のチャンピオンとしてのぞむフジサンケイレディスクラシック。初日のスコアは3バーディ3ボギーの「71」で回り、イーブンパー・35位タイでスタートを切った。

スコアこそ伸ばせなかったが、16番のロングホールでは、2オンからあわやイーグルという見せ場も作りギャラリーを沸かせた。

単独首位にはコースレコードタイの「63」をマークした8アンダーの高橋彩華。4打差2位タイには17番パー3でホールインワンを達成した藤田さいき。2週連続優勝を狙う植竹希望は3アンダー・4位タイで続いている。

この稲見、昨シーズンおよそ2億5519万円を稼ぎ賞金女王に輝いたが、今季ここまで7戦で予選落ち2回など賞金ランクも18位にとどまっている。

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この大会を前にしたインタビューでも「もう毎日コロコロ、スイングが自分では変わって、毎ショット違うスイングをしている感覚です。でも他の選手からは、毎回同じように振っているようにしか見えないとも言われますし、全部当たるようにしか見えないって言われるんですけど、私も他の選手がそうにしか見えないので(笑)。多分、隣の芝生は青く見える的な(笑)。もうそんな感じです」と現在の状況を語った。

この記事では、それほど大きく日々変化する感覚の中で、稲見が取り組んでいるスイング改造と、あえて着手するその訳をお届けする。

東京五輪で見えた“飛距離”という課題

昨年、歴史に残る快進撃を⾒せた稲⾒。

東京オリンピックでは、⽇本ゴルフ界初のメダル獲得という快挙を達成。国内ツアーではシーズン9勝を挙げ、賞⾦⼥王に輝いた。

自身の武器について話す稲見萌寧(2021年4月)

そんな稲⾒の、最⼤の武器といえば「ずっと私はショットですね。ショットが⽣命線っていう感じでやってきています」。

その言葉通りに、昨シーズンはショットの正確さを表すパーオン率で78.21%と歴代最⾼記録を更新。この安定感を武器に勝利を積み重ねてきた。

それが今シーズンは、ここまで7試合を終えて、未だ勝利がない。何が起きているのか?

今シーズン序盤のインタビューに対しても「ちょっとうまく噛み合わなかったりとか、悪くないけど、全てがうまくハマっているわけじゃないという感じですかね」ともどかしい心境を語った。

その原因のひとつが、稲見が取り組んでいるスイングの改造にある。

稲見といえば、完璧を追い求めることと、練習に対する熱心さで知られるが、実は銀メダルを獲得した東京オリンピックで“新たな課題”に直⾯していた。

東京五輪後に“新たな課題”を挙げた稲見萌寧

「⾶距離ですかね、⼀番は。⽇本で戦うにしても海外で戦うにしても、これから先どんどん距離は必要になってくると思うので」と、単独インタビューで漏らしていた。

確かに昨年の東京オリンピック、ショットの安定感では、世界トップクラスの⼒を証明。フェアウェイキープ率は1位、パーオン率は8位タイを記録した。

ところがドライバーの⾶距離は、出場選手全体の平均距離をやや下回る数字。ドライビングディスタンスで1位の海外選⼿とは40ヤードもの差をつけられていた。

スイング改造の目的は“飛距離”と安定性“

フォームの改良に取り組む稲見萌寧

そこで、今シーズン取り組んでいるのが、⾶距離を伸ばしつつ、ショットの安定感をさらに⾼めるためのフォーム改良だ。

「簡単に言えば、テイクバックの“アーク”というのかな、すぐ私こうひょいって身体の近くであげちゃうので、手で。もうなるべく変えないで、ちょっと遠めにみたいな(笑)」

稲⾒の⾔う“アーク”とは、クラブのヘッドが通る軌道のことだ。

稲⾒を指導する奥嶋誠昭コーチ

そこを大きくとる狙いは何なのか、稲⾒を指導する奥嶋誠昭コーチに聞くと「基本的にはアークが⼤きくなると、ここ(回転軸とグリップ)の距離が取れるので助⾛距離が⻑くなるじゃないですか。そうするとスピードが出るので、球が⾶ぶという話」なのだという。

稲見の去年と今年のスイングの違い

これまでは身体の近くでコンパクトにスイングしていたが、テイクバックを大きくとるように意識。そうすることで遠⼼⼒が増し、ヘッドスピードが上がり、飛距離アップが期待できる。

さらに、体の回転をしっかりと使い体重移動することで、より安定したショットにつなげようとしている。

稲見の去年と今年のスイングの違い

今は理想のスイングを追い求めて、試⾏錯誤を繰り返す過程にあるのだという。

「毎⽇コロコロとスイングが⾃分では変わって、毎ショット違うスイングをしている感覚です。癖とかは直りにくいかなというのがあるので、ずっと同じことをやっていますね。そういう時期ですね、今は(笑)」

そう前向きに笑う稲見だが、過去の栄光に捉われることなく、さらなる⾼みを⽬指す訳は飛距離アップだけなのだろうか?

――賞金女王になったんだから、同じことをやって、同じように勝てばよいという事ではないのでしょうか?

同じことをやっても、周りは成長するので、自分が賞金女王で同じことをしてたら、2位の人に同じか上に行かれるんですよ。こうなったら、意味ないんですよ。

こうなられたら(並ばれたら)、さらにこう(追い越す形に)ならなきゃならないので、求める。練習では求めなきゃいけない。

とりあえず、『完璧じゃなきゃいやだ』という性格は変えられないので。それが、足を引っ張ったりするんですけどね。(壁を)それを乗り越えたらまたさらに⼀段と強くなる可能性もありますし、逆に壁がなくてずっと進んでる⽅が怖いですね。

――めっちゃポジティブですね?

ポジティブじゃなきゃ、やってられないですよ(笑)。

完全無⽋の⼥王へ…、その挑戦は続いていく。大会2日目からの巻き返しに期待したい。

40th フジサンケイレディスクラシック
第2日・4月23日(土) 午後3時30分 生中継
最終日・4月24日(日) 午後1時35分 生中継
https://www.fujitv.co.jp/sports/golf/fslc/index.html

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