1982年に始まり、今年で40回の節目を迎えるフジサンケイレディスクラシック。

これまで数々の名選手たちが大会を彩ってきた。

戦いの舞台となる川奈ホテルゴルフコース 富士コースは、霊峰富士と相模灘を望む美しい景観に、自然の地形を生かした過酷なコース。

『世界ゴルフ百選』にも名を連ねる川奈ホテルゴルフコース 富士コース
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ゴルフの聖地・セントアンドリュースなどと共に『世界ゴルフ百選』にも名を連ねる名門だ。

この大会に挑む2021年のチャンピオン稲見萌寧は「本当に連覇はしたことがないので、2年連続とか、すごくしたいなと思いますし、それ以上に勝ちたいという気持ちが一番大きいです」と意気込んだ。

プロ通算6勝、昨年のフジサンケイレディスでは3位に入った小祝さくらは「毎年この大会は景色がよかったり、すごい良いコースでもあるので、優勝は目指してやっていきたいです」。さらに40回大会の女王について問われると「そうですね。節目というか。頑張りたいです」と語った。

第40回の記念大会を前に、川奈が生んだ名シーンから、近年の名場面を紐解く。

渋野日向子が跳ね返された17番の砲台グリーン

2019年大会を沸かせたのが、まだブレイクする前の渋野日向子だ。

2019年大会を沸かせた渋野日向子

当時まだ、ほぼ無名の存在だったルーキーが最終日に猛チャージを見せ、トップと1打差に迫る。

プロ初優勝も狙える位置で迎えた17番は、川奈の名物ホール。

急傾斜(高さ7.2メートル)の砲台グリーン

急斜面の上にそびえる狭い砲台グリーンに、強い海風が吹きつける難関のパー3だ。

優勝争いのプレッシャーの中、ピンの左側の比較的広いポジションに狙いを定めた渋野。

ところが「あそこはパーでいいと思って、ピンより左を狙っていたんですけど、右に出ちゃってあんなことになって」と語るように、手堅い位置を狙ったはずの渋野のティーショットは、海からの風の影響を受け右へ大きく流されると、グリーンを外れ崖下に止まる。

さらに狙い所の全く見えない崖下からの第2打となるアプローチは、ピンを大きくオーバー。

下りの長いパットも寄らず、結局このホール2オン3パットのダブルボギーで、渋野は優勝争いから脱落。優勝した申ジエとは、最終ストロークでまさに2打差の2位となった。

このコースの厳しさを味わった渋野は、持ち前のポジティブさでホールアウト後にこう語っている。

「16Hまでは完璧と言っていいようなプレーだったんですけど、17Hでダボっちゃって結構テンションが下がりました。それでも18Hでバーディをとれたので、まあよしかなと思います」

優勝を逃しても前を向く渋野のコメントに、現在の彼女の強さと魅力が垣間見える。

そしてこの大会からわずか4カ月後の8月、渋野は全英オープンを制覇。日本勢42年ぶりの海外女子メジャー優勝という大偉業を成し遂げ、世界中に名を轟かせた。

宮里藍、稲見萌寧もつかまった深いバンカー

さらに、もうひとつ。選手たちを苦しめるのが、人の背丈よりも高い川奈のバンカーだ。コースの至る所に配置され、ハマったら最後。そう簡単には抜け出せない。

人の背丈よりも高い川奈のバンカー

2005年、年間6勝を挙げた宮里藍さんも、この川奈のバンカーから脱出することが出来ず、苦しんだことがあった。

そんな難攻不落のバンカーでミラクルショットを放ったのが、前回大会の稲見萌寧だ。

雌雄を決する最終日。トップを1打差で追うスタートホール、パー4の大事なティーショット。稲見は第1打を左サイドの深いバンカーに入れ、いきなりの大ピンチ。ここでスコアを崩せば、追撃の勢いを失ないかねない場面を迎える。

ピンまでの残りは113ヤード。

ボールの止まったバンカーの正面には稲見の身長をはるかに超える高さのバンカーと大きなアゴが待ち受ける。

トップを追う上で、ここから脱出することを優先するのか、それともリスクを承知でグリーンを狙うのか。判断とクラブ選択を迫られる稲見。

そして思案の末に稲見が握ったのは9番アイアン。「グリーンに乗ってくれ!」と念じて、少しかち上げるように打った第2打はグリーン方向へ。

多くの人が予想だにしなかった一打に、テレビ中継のカメラマンもボールを追いきれない。どよめくギャラリー。ボールが止まったのはピンまで8メートルのグリーン上だった。

バンカーから放たれたボールはピンまで8メートルのグリーン上に

このショットで大ピンチをバーディチャンスに変えた稲見は、芝目のきつい高麗グリーンのスライスラインを見事に読み切る。

残り8メートルの、繊細なタッチが求められるパットを決めバーディ発進すると、その勢いのまま逆転優勝。さらにこのシーズン、東京オリンピック銀メダル、そして賞金女王獲得へとつなげた。

2020年のフジサンケイレディスクラシックで優勝した稲見

優勝を飾った稲見はこのピンチの瞬間を、冷静にこう振り返っている。

「けっこうアゴの高さがあったので、(ボールの上がる)PWで打った方がいいのかなと思ったんですけど、足場のライが悪かったのでフルショットは出来ないなと思って、1番手上げて9番でちょっとかち上げて頑張ることにしてコントロールしました」

「本当にパーで上がれたらいいなと思っていたので、セカンドは『グリーンに乗ってくれ!』って念じて打ちました」

険しい自然の地形を活かした難コースが選手を追い詰め、それと戦うことで新たな名シーンが生まれる。

それこそが、この大会の伝統だ。

ディフェンディングチャンピオンの稲見や、去年のリベンジを狙う小祝。そして渋野と同じ黄金世代で、先週初優勝をあげた植竹希望らが、40回記念大会の女王の座をかけて戦う今年のフジサンケイレディスクラシック。

果たしてどんなドラマが生まれるのか。そして川奈の洗礼を乗り越えて優勝するのは誰か。このコースで生まれる一打、一打を楽しみにしたい。

40th フジサンケイレディスクラシック
第2日・4月23日(土) 午後3時30分 生中継
最終日・4月24日(日) 午後1時35分 生中継
https://www.fujitv.co.jp/sports/golf/fslc/index.html

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