突然、足の親指などの関節が腫れ、激痛に襲われる「痛風」。風が吹いても痛いと言われる悩ましい病気だがこの発症リスクを「コーヒーを飲む」ことで減らせることが分かった。

調べたのは、防衛医科大学校と大阪大学などの研究グループ。日本人15万人以上のゲノムデータを統計的に解析して、コーヒーの飲用習慣、痛風の発症リスク、尿酸値に関係性があるかどうかを調べた。

週にコーヒーを飲む回数を0~7日の8段階に分けて解析したところ、飲む日数が1日増えると痛風の発症リスクが約25%減っていたという。その一方で、尿酸値には影響が見られなかったともいう。※発症リスクは痛風発作が起きるリスク

痛風の発症リスクが減っていたという(画像はイメージ)
痛風の発症リスクが減っていたという(画像はイメージ)
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痛風は飲酒や食生活の偏りなどで、尿酸値が高いと発症するイメージがある。ただ、研究結果をみるとコーヒーの何かが、尿酸値とは関わりのない形で発症を抑えていることになる。

痛風発作に至る「2段階目」のトリガーを抑えるのでは

日本に「痛風予備軍」が1000万人いるといわれる中で、手軽な生活習慣で発症を避けられるならありがたい話だが、コーヒーの何が影響していると考えられるのだろう。想定されることも含めて、現時点での詳細を研究グループに聞いた。


――コーヒーと痛風の発症リスクを調べたのはなぜ?

もともと、コーヒーの飲用と痛風の発症リスクに関係があるという報告はありました。ただ、これまでは正確な因果関係は分かりませんでした。未知の第3の要因(「未知の交絡因子」と言います)が存在している可能性や、想定とは逆の因果関係があったとしても、判別ができませんでした。

そこで今回は、人間のゲノムの100万個ほどの遺伝子変異を調べ、疾患に関わる遺伝子をあぶり出す「ゲノムワイド関連分析」、遺伝子変異を指標として因果関係を評価できる「メンデルランダム化解析(MR解析)」を使い、コーヒーの飲用、尿酸値、痛風の発症リスクの因果関係を調べました。

今回の調査の経緯(提供:研究グループ)
今回の調査の経緯(提供:研究グループ)

――コーヒーが痛風の発症リスクを減少させるのはどうして?

我々は、痛風発作に至るまでには2段階あると考えています。(1)血液中の尿酸値が上昇し尿酸結晶が関節内に物理的に析出するという「無症候性高尿酸血症」の段階と、(2)尿酸結晶に白血球などの免疫細胞が食いついて炎症(痛風発作)を起こす、という2段階です。コーヒーにはこの2段階目を予防する作用があるのではないか、と考えています。

コーヒーの成分までは調べていないため、直接的には回答できませんが、カフェインなどのコーヒーの何らかの成分が影響していると予想しています。ラットを対象とした研究だと、カフェインは尿酸を合成する酵素を阻害するという研究報告もあります。ただ、今回の研究ではコーヒーには尿酸値に影響されない痛風予防効果があることが見いだされており、別の原因が考えられます。

調査で分かったことの概要(提供:研究グループ)
調査で分かったことの概要(提供:研究グループ)

――痛風を発症させるトリガーを抑えるということ?

はい。日本でも「痛風予備軍」が1000万人いますが、実際に発症するのは約1割と言われていて、尿酸が関節にたまっていても発症しない人もいます。強い炎症反応が起こることと、尿酸が高いことには別のメカニズムがあるとすれば、発症を抑えるメカニズムなどの解明に役立つかもしれません。

痛風発作予防を考慮した「コーヒーの楽しみ方」

――コーヒーの飲む量やタイミングなどは発症に関係するの?

今回の研究ではコーヒーの量やタイミングまでは調べていないため、直接的には回答できません。コーヒーを飲む頻度が多ければ摂取量は多くなるので、飲む日数が多いのは望ましいと考えられます。ただし、飲むだけで痛風が治療できたりするわけではないので、注意が必要です。


――痛風の予防を考慮した、コーヒーの飲み方のアドバイスは?

観察研究では牛乳も痛風のリスクを下げることが知られています。逆に糖分(特に果糖)は尿酸の合成量を増やします。コーヒーリキュールといったコーヒーとアルコール(と糖分)を含む飲み物もありますがアルコールは尿酸の合成量を増やし、脱水を促進するため、痛風発作が起こりやすくなります。

また、一般論として、コーヒーの取りすぎはカフェイン依存症からの頭痛などの原因にもなります。以上を考えると、シュガーは使わずミルクのみを入れて、毎日(ただし一日2~3杯程度に抑えて)摂取するとよいのかもしれません。個人差もあると思いますので、日本人全員に言えることではありません。

ミルクを加えて適量を飲むのが望ましいかもしれない(画像はイメージ)
ミルクを加えて適量を飲むのが望ましいかもしれない(画像はイメージ)

――今回の研究結果は、痛風の治療などに役立ちそう?

コーヒーには「尿酸結晶に白血球などの免疫細胞が食いついて炎症を起こす」という2段階目を予防する作用があるのではないか、と考えています。この成分が何か分かれば、痛風の発作を予防する薬が作れるかもしれません。コーヒーの種類や量、時間帯など、痛風との関連がわからないことはまだまだあります。今後も研究を続けてこのような点を明らかにできればと考えています。コーヒーに含まれるどの成分が有効か分かれば、予防や治療などにも役立つと思います。


今後さらに研究が進むことを期待したいが、研究チームによると、痛風の発症リスクをコーヒーが抑えるとしても、痛風の治療をしなくていいわけではなく、尿酸値のコントロールは必要なので注意してほしいという。