高級ブランドの「的矢かき」をお値打ちに食べられるレストランが、三重県志摩市にオープンした。コロナの影響を受けて苦しいカキ産業を守るために、カキ養殖場を営む男性が開業。養殖場から直送される新鮮な生ガキが3個990円で食べられるなど、鮮度と安さで人気となっている。

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絶景を眺めながらカキが食べられる話題の店

2022年1月に三重県志摩市磯部町にオープンした「的矢かきテラス」では、プリプリの三重県ブランド「的矢かき」を食べられる。

女性客A:
いいですね、この時季の旬の生ガキって

女性客B:
新鮮でここでしか食べられない

水揚げされた新鮮なカキが名古屋の半額近い価格で食べられるが、店のウリは料理だけではない。

男性客A:
ロケーションがめちゃくちゃいい。いい雰囲気のお店

女性客C:
なかなかこういう景色見ながら食べられないので、すごくいい

的矢湾を望むテラス席と、海に浮かべたイカダに設けた海上レストランで、絶景を眺めながら食事が楽しめるのが話題となっている。

「何もつけなくても濃厚」養殖場から直送の高級ブランド

朝9時、開店に向けて準備が始まる。

的矢かきテラスの店長:
カキは毎朝、併設の養殖場から運ばれてきます

このカキ専門レストランは、1925年創業の「佐藤養殖場」が始めた。100年近いカキづくりの経験からカキを安全に生で食べる養殖技術を確立し、2002年に「的矢かき」を三重ブランド第1号にした屈指の養殖場だ。

カキを養殖しているのは、的矢湾に設置されたイカダ。毎日、ここから水揚げされる。

的矢かきテラスの担当者:
(2022年のカキは)大きく成長して、中身もしっかり入っています

水揚げから出荷されるまで丁寧な処理が行われるのも、的矢かきならでは。身を傷つけないように殻から丁寧に外し、殻も一つ一つきれいに磨く。安心して生で食べられるよう水につけ、1日洗浄して滅菌する。

手間と時間をかけて提供される的矢かきは、関東の高級料理店やホテルなどにも出荷されている。

的矢かきテラスでの一番人気は、素材本来のおいしさが味わえる「生牡蠣」(3個990円)。

店長:
カキが苦手な人でも食べやすい、本来のうま味や甘みが詰まっている

男性客B:
何もつけなくても味が濃厚。塩味だけで十分

男性客C:
ふっくらしていて、コクがあっておいしかった

客の反応は上々だ。

地域の大切な産業を守りたい…カキ産業再建のためレストランを

店を立ち上げたのは、佐藤養殖場の社長・濱地大規さん。なぜ養殖場が飲食店を始めたのか。

濱地大規社長:
養殖場が経営悪化に。カキの不作、酷いときは65~70%くらい死滅したことも。またお酒と楽しまれる方も多いですし、酒類の提供中止はかなり大きなダメージ

もともと別の水産業をしていた濱地社長は、老舗養殖場のピンチを目の当たりにし、なくしてはいけないと仕事を辞めて再建に手をあげた。「的矢かきを100年近く継承してきた人たちの思いなど、地域の大切な産業を守らなければならない」と話す。

再建の策として開業した直営レストランは、スーパーなどには出回らない鮮度抜群のカキが食べられることもあり、全国からカキ好きが訪れる。生ガキは、ショウガ入りのポン酢をのせて食べれば、さわやかな風味に味変。

「的矢牡蠣のかんかん焼き」(6個入り1980円)も人気だ。蒸すことでカキのうま味がより引き出される。

他にも、生ガキにカキフライ、カキグラタン、カキご飯もついた「牡蠣づくし定食」(3800円)も。

料理はもちろん、絶景を楽しめる店のロケーションにも再起への思いが込められていた。

濱地大規社長:
的矢かきを育んだ海、イカダを眺めながら、日本で一番鮮度のいい状態で的矢かきを食べられる。喜んでいただけるという勝算、確信はありました

的矢湾に臨む絶景もレストラン成功へのポイントだった。

あえてプロの調理人を置かない そのコストはカキづくりに

ランチタイムの厨房は大忙し。レストランでは飲食店経験がない養殖場のスタッフも多く働いており、経験があるのは店長だけ。しかも、店にはプロの料理人もいない。

濱地大規社長:
生で食べられる品質に特化したカキ。素材そのままの提供にこだわりたかったので、あえてプロの調理人さんは置いておりません。そのコストの分を、カキづくりに

養殖にコストをかけることで、よりおいしいカキが安く食べられる。そして「的矢かきの知名度アップにつなげたい」と考えたためだ。

「より多くの人に的矢かきの味を知ってもらい、地域を活性化させたい」。濱地社長はこのテラスから、かきの魅力を発信している。

「的矢カキテラス」は三重県志摩市磯部町で3月末まで無休で営業。

(東海テレビ)

東海テレビ
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