ロシア国内では、政治的な意図に基づく宣伝工作、いわゆるプロパガンダがしきりに放送されている。ロシアの国営テレビで報じられていたのは、私たちが知る状況とは全く逆のものだった。

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“真逆”国営テレビの報道

ロシア国営テレビ:
ウクライナ軍はドネツク中心部にミサイル攻撃を開始しました。負傷者と死者が出ています。

ロシア国営テレビ:
ウクライナの攻撃で車が燃えてしまっています。

ロシアの国営テレビは、「ドネツクの町を破壊したのはウクライナ軍。その攻撃で死傷者が出た」と伝えている。

ロシア国営テレビより(ロシア24)
ロシア国営テレビより(ロシア24)

さらに、東部の町ルガンスクでは、ウクライナの支配からロシア軍が町を解放したと強調した。

ロシア国営テレビ:
解放された地域に平和な生活が訪れています。ウクライナ軍によって破壊された橋、道路などのインフラを整備し、再建しています。

自分たちは街を破壊するウクライナと戦い、人々に平和をもたらす存在であると印象づける狙いだ。

SNSでも広がるプロパガンダ

プロパガンダはテレビだけではない。ロシア国防省は、「民間人を撃ったらダメだ!」などと兵士たちがやりとりする様子をSNSで公開し、民間人に危害を加えていないことをアピールしている。

しかし実際は、学校や病院住宅など一般市民が暮らす場所への無差別攻撃が繰り返されている。

子ども向け動画でも軍の正当性強調

ロシアによる徹底した情報統制は、子供向けの教育番組でも行われている。

これは3月3日にロシア教育省がオンラインで公開した教育動画だ。出演している女の子はソフィア・コメンコさん(12)。

ロシア教育省より
ロシア教育省より

ウクライナとの戦争について尋ねる場面では、ソフィアさんから「きょうだいのようなウクライナ人たちといつからこのような関係になったの?」という質問が投げかけられ、解説者が「ウクライナ危機が始まったのはきょうや昨日のことではない」と答え、子どもにも伝わるように順を追って説明した。

また、ウクライナ東部・親ロシア派地域の問題については、解説者が「ロシア派はこの問題を平穏に収めようと努力し、ミンスク合意などを欧州の国々に働きかけた。しかし、合意で戦争は阻止できなかった。銃撃が続き、人々が亡くなった」と、ヨーロッパ側がロシアの停戦の求めに応じず戦争が起きたと説明した。

ロシア教育省より
ロシア教育省より

“フェイク”に注意呼びかけ

さらに、SNSのフェイクニュースについて伝える場面もあった。

解説者:
毎日フェイクニュースのような情報が増えている。ミサイルが幼稚園に当たったこと、戦車が破壊されたこと、飛行機が攻撃されたことなどの情報がSNSに投稿される前に信ぴょう性を確かめるべきだ。あなたが見ているものを分析して批判的に物事を見てください。

ソフィア・コメンコさん(12):
そのようなニュースを注意して見てなかったことがわかりました。これから全て確かめます。

ロシア教育省より
ロシア教育省より

ソフィアさんは、SNSの情報は鵜呑みにしてはいけないとする言葉にうなずき、動画を見ている人たちにも情報の信ぴょう性を確かめるようカメラ目線で訴えた。

「反戦」は徹底排除

何も書かれていない真っ白な紙を町中で掲げる男性。警察官が現れ話しかけた。

男性:
白紙1枚を見せに来ました。
警察官:
何の目的で?
男性:
白紙を見せるためです。
警察官:
すぐにやめなければ逮捕するぞ。

男性は、白い紙を掲げていただけでデモとみなされ拘束された。ロシア側にとって不都合な反戦を掲げる人に対しては、徹底した排除の動きが強まっている。

(「イット!」3月15日放送分より)