スノーボード界初の金メダル
この記事の画像(13枚)「小さい頃の夢が一つ叶って、本当によかったです」
4歳でスノーボードを始めた際に思い描いた夢を北京で現実のものとしたのは、スノーボード男子ハーフパイプで日本スノーボード界史上初の金メダルに輝いた平野歩夢(23)だ。その歴史的偉業に日本列島が沸いた。
そこでこの冬を席巻した平野歩夢を夏の金メダリストとともにフジテレビ「S-PARK」独自の目線で大解剖する。
大親友・堀米雄斗からのメッセージ
平野の金メダル獲得直後、SNSにお祝いメッセージを投稿したのは、東京五輪スケートボードで金メダルを獲得した堀米雄斗(23)だ。「歩夢おめでとう」とつづり、金メダルやスノーボードやハートマークなど絵文字を並べて喜びを表現した。
実は2人は同学年で幼少期からの大親友。2009年、当時小学5年生の時にも同じスケートボード大会で競い合うなど良きライバルでもある。大人になった今も、プライベートで2時間の長電話をするなど同じ“横乗り”のアスリートとして、切磋琢磨してきた。堀米はそんな大親友・平野へ尊敬の念を抱く。
「歩夢は友達なので、最近はすごく調子も良さそうだし、リスペクトという感じですね」
晴れて金メダリストとなった平野のもとに、同じ金メダリストの親友から届いたもう一つのメッセージの文面を平野が明かしてくれた。
「なんかメールが来ましたね。直接来ていて『大好きだよ、おめでとう!!』と来ていました(笑)一緒に喜んでくれていて、小さい頃からお互いを知っているんですけど、雄斗も東京五輪で横乗りを大きく盛り上げてくれたので、もっとやってみたいと周りの人たちが思ってくれたらうれしいと思います」
体操・白井健三が異次元のひねりを解説
そして平野と言えば注目を浴びたのが人類で初めて成功した大技「トリプルコーク1440」。縦に3回回り、そして横は4回ひねり。踏切から着地までのわずか2秒の間に目まぐるしくひねりをいれるこの技。なぜ彼だけが飛ぶことができるのか。
そこで取材したのがリオ五輪体操男子団体で金メダルを獲得、“ひねり王子”の愛称で親しまれた白井健三さん(25)だ。「ひねり」のスペシャリストともいえる白井さんには、この大技はどのように見えたのだろうか。
「本当に五輪史上初めて決めた技なのかと思うくらい当たり前に決めていますよね。僕の場合は4回ひねりだったり、色んな技をしていく上でどれだけ練習の中で多くこの技をこなしたかどうか、体に覚えさせているか大事」
極限の回転数、ひねりを必要とする技は、「練習量」がものをいうという白井さん。さらに平野がこのひねり技を極めたポイントとして、「着地」を挙げる。
ヒザを有効に使ったバランス感覚
「着地を多くしてきた者の見方としては、股関節やヒザの使い方が非常にうまい。体操の場合だと着地がずれたときでも、どちらかの足を一歩出せばいい。(スノーボードは)足が固定されている状況なので、そういった着地ができない」
体操の場合、着地でバランスが崩れても、足を一歩踏み出すことでこらえることができるが、スノーボードは足がボードに固定されているため、着地のバランスが少しでも崩れると、転倒する可能性が高くなる。しかし、白井さんは平野の着地の技術に舌を巻く。
「自分がどれだけ体重を前にかけているか、後ろにかけているかを瞬時に判断して股関節だったりヒザだったり自分で調整してベストな着地にもっていっているのが強み。それを一瞬でやってのける技術の高さは素晴らしいと思います」
あの“ひねり王子”ですらびっくりの空中のバランス感覚。そのすごさは平野を近くで見てきた日本代表動作分析担当の白川尊則コーチも認める。
「歩夢選手の場合は頭と板が同じ軸で、ずっと回っている途中で着地(地点)が見えている。これが成功する上で最大の秘訣です」
「何本やったかわからないくらい練習」
超大技「トリプルコーク1440」。その成功の裏にはひねりを制する確かな技術があった。そして、平野自身は成功の要因をこう挙げる。
「何本やったか分からないくらい練習してきたことが、今回決めることができた大きな理由だと思います」
異次元の技を生んだ「練習量」と「バランス感覚」。体操目線からも見える「着地」技術の高さ。「違う競技だからこそ見えてくるポイントや技術は、今後競技の進化につながっていく」と白井さん。平野が今後どんな進化をするのか楽しみだ。