「バイデンが大統領の任に耐えるとは思えない」

トランプ大統領(左)とバイデン氏(右)
トランプ大統領(左)とバイデン氏(右)
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「バイデンに投票するぐらいだったらトランプにするよ」
この発言が今、米民主党支持者たちの間で波紋を呼んでいる。

発言者はジョー・ローガンという人物で、日本では馴染みが薄いが、コメディアン、総合格闘技コメンテーター、ポッドキャスト司会者で、そのポッドキャスト番組「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」は、「フォーブス」が発表した2019年に最も稼いだポッドキャスターとして、年間収益3000万ドル(約33億円)で一位に選出された。世界一位のポッドキャスト番組と認定されているとオンライン百科事典に紹介されている

つまりは市井のオピニオンリーダーのような存在だが、それだけに米民主党の候補者選びがバイデン前副大統領で決着した今、この発言が注目されている。

ローガン氏は民主党支持者で、バーニー・サンダース上院議員を応援していたが、そのサンダース議員の敗色が濃くなった4月3日、投資顧問のエリック・ワインスタイン氏と対談したポッドキャストでこう言った。

「バイデンが大統領の任に耐えるとは思えないね。彼はすべて閣僚たちに頼ることになるだろう。国民と意思の疎通がはかれる指導者が求められるわけだが、彼はその器ではない。それに、あいつが就任1年後にどんな顔をしているか考えたくもない。ブッシュもオバマもいっぺんで老化してしまったが、トランプはプレッシャーにもかかわらず、ぜんぜん変わらないじゃないか」

募るバイデン氏への不信感

またローガン氏は、バイデン氏は大統領選でトランプ氏に敵うわけがないと続ける。

「トランプはあいつ(バイデン)を生きたまま食べてしまうぞ(食い物にするぞ)。あいつは今喋っていることも忘れてしまうのだから。彼の最近のビデオを見てみろ。とちってばかりいるじゃないか。自分で何を言ったのかさえも覚えていないのだから」

民主党の主流派が、バイデン氏の支持に結集してサンダース氏を追い落としたことへの恨みつらみもあるのだろうが、こうしたバイデン氏への不信感は無視すべきではないと言われ始めている。

「ジョン・ローガンは民主党にとって炭鉱のカナリアだ」(ワシントン・エグザミナー紙電子版5日)

カナリアは炭鉱内で有毒ガスの発生を早期に知らせるが、ローガン氏の発言も民主党に迫りくる危機を知らせるものだと記事は分析する。

「ローガン氏のように、絶大な知名度がありながら政治に強い関心があるわけでもない人物が、バイデン氏を応援する気持ちがゼロであるだけでなく、共和党の現職を支持しようというのであれば、民主党は11月の選挙で再び手痛い思いをすることになるだろう」

「バーニーの支持者は共和党へいらっしゃい」

前回、2016年の大統領選でも、ヒラリー・クリントン元国務長官に候補者選びで敗れたサンダース氏の支持者の多くが、本選ではトランプ氏に投票したと言われており、同大統領もそのことを意識して、ツイッターで民主党内の問題に手を突っ込み始めている。

サンダース氏は8日に米大統領選からの撤退を表明
サンダース氏は8日に米大統領選からの撤退を表明

「バーニー・サンダースが退いた。(競合した)エリザベス・ウオーレンありがとう。彼女がいなかったらバーニーがスーパーチューズデーで全州で勝利していただろう。(2016年に)民主党員と民主党全国委員会がペテン師のヒラリーを押し立てた時と同じ謀略になった。バーニーの支持者たちは共和党にいらっしゃい。(共通するのは)貿易問題だ!」

新型コロナウイルス問題で選挙運動もままならぬ中、バイデン陣営は民主党内の体制固めから難問を抱えることになりそうだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。