自民党本部に銀座のママやホストクラブ関係者らが来訪
4月9日午前、自民党本部を訪れ岸田政調会長と面会したのは、日本水商売協会の甲賀香織代表理事はじめ、銀座や新宿歌舞伎町のクラブ、ホストクラブなどの代表者達だった。
この記事の画像(6枚)2日前の7日に安倍首相が新型コロナウイルスの感染拡大に関する緊急事態宣言を7都府県に発令し、東京都をはじめとする自治体が、どんな業種に休業を要請するのか、休業などにより損失の生じた事業者への支援や補償をどうするかに注目が集まる中での面会だった。
「接待飲食業を除外しないでください。よろしくお願い致します」
甲賀代表理事はこう強く訴えて、岸田氏へと要望書を手渡した。
クラブやキャバレー、ホストクラブといった「接待の伴う飲食業」、または「風俗業」などは特に「3密(密閉・密集・密着)」が顕著な環境であり、実際にこうした業種が多く集まる夜の繁華街では集団感染の報告が多発している。先月、小池都知事が、「接待の伴う飲食業」を名指しして、営業の自粛を求めたほどだ。
しかしその一方で、こうした夜の街で仕事する人々は、営業を自粛したり勤務をとりやめざるをえなかった場合の支援や助成に関して、他の業種と比べて「差別を受けている」というのだ。
業種差別の是正を訴える声に、岸田氏は事実なら「各省に要請」と応じる
自民党を訪れたクラブ関係者らが持参した要望書には、風俗産業が「暴力団と並列して」、新型コロナウイルスに伴う各種支援策の対象から除外されているという点が幾度となく強調されていた。甲賀氏は岸田氏との意見交換の後、報道陣に対して、雇用関係の助成金について次のように懸念を示した。
「雇用関係助成金は何業か問わず、国民1人1人が等しく受けられるべきだと考えています。今まで除外されてきていまして、菅官房長官の発言、ご発信によって支給要件を見直すとおっしゃっていただきましたが、ここの確約を得ることがまず第一でした」
この助成金は、子供の学校休校に伴い休業を余儀なくされた保護者の雇用を維持した場合に事業主に一定の金額を支給するという制度だが、接待飲食業や風俗業への助成は、暴力団などの反社会勢力によって資金洗浄に使われる恐れがあるなどの指摘から当初、制度の対象外とされたのだ。その後、政府は見直す方針を表明したが、甲賀氏らは本当に大丈夫なのかと不信感をあらわにした形だ。
この他にも資金の融資にあたっては「一般の中小企業と同等に扱っていただきたい」と強調、今後実施される様々な企業救援策でも「除外」しないことを重ねて要望した。特に、政府が7日に決定した中小・個人事業者への支援に関して、接待飲食業は上限200万円の給付対象となる「中小企業」であり、ホステスやホストは上限100万円の支給対象となる「個人事業主」だと指摘し、除外されず支給を受けられるように求めた。
また、感染が終息した後には、営業時間の延長や公共交通機関の24時間化などを行うことで夜の繁華街に活気を取り戻すための「ナイトタイムエコノミー」を推進するよう提案した。
岸田氏はこうした当事者からの切実な声に対して「1つ1つちゃんと各省にも確認して、差別しているようなところがあるならば要請を出す」と応じたという。
ママらが指摘した地方への感染拡大の懸念。「反社と付き合いの店は本当に少ない」
「我々だけを救ってほしいということを別に言っているわけじゃない」
今回自民党を訪れたクラブ関係者らはこのようにことわった上で、クラブの経営や、ホステスやホストの生活を追い詰めると、それがさらなる感染拡大を引き起こす可能性があると指摘した。
「(従業員は)みんな不安ですし、この人たちを守ることによって感染の拡大を広げないようにできるとも思っているんですね。例えばですけれども、ざっくばらんにいってお店が休業になれば女の子たちは少しでも生活を詰めようとすると、やはり補償が0円になれば、田舎に帰ってしまうのは止められないんです。そうすると今(政府が懸念として)言っているような地方への感染にもなります」
さらに、「一般人の皆さんと比べてモラルが低い方々が確率として多くいるっていうのは事実だと思います」と述べつつ、そうした従業員の雇用を安定させることで、従業員に自制ある行動を促すことができると強調した。
また、反社会勢力との関係などが理由とされ各種の支援や助成の対象外とされている点に関しても、「そういう存在だって思われがちだ」としつつ、「現実的にはいま水商売のお店っていうのが反社とつきあっているというのは本当に少ない」と指摘し、現実をしっかりと知ってほしいと訴えた。そして甲賀氏は、取材の最後に次のように述べた。
「真面目にやっている店舗さんが報われない状況になっては、じゃあ、真面目にやんない方が得じゃないかという理論が成り立ってしまうと。暴力団と一緒くたにされるというのは非常にこう現実的でないというか、業界内部からするとピンとこないところではあります」
安倍首相は7日の記者会見で「私たちは共に力を合わせれば、再び希望を持って前に進んでいくことができる」と力強く語った。夜の街の商売も玉石混交という現実はあるのだろうが、少なくとも真面目に地道に働いている人たちに、希望がもたらされることを期待したい。
(フジテレビ政治部 自民党担当 福井慶仁)