“2022年を予言”で再注目

半世紀ほど前に「2022年」を予言した米国のSF映画が、その年を迎えて改めて注目されている。

それは1973年に公開された『ソイレント・グリーン』で、『十戒』でモーゼを演じたチャールトン・ヘストンが主演して「2022年の世界」を描いたものだ。

『ソイレント・グリーン』DVD特別版 1,572円(税込)  発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント © 1973 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
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実はこの映画を当時見た記憶がなかったので動画配信サービスで視聴してみると、その暗鬱な予言はフィクションと分かっていても目を背けたくなった。 

“予言“当たらずと言えども遠からず

ストーリーは、2022年を迎えて世界の人口は増えすぎてニューヨークの人口も4000万人に膨れあがり、路上にホームレスの人たちが溢れている。
その結果、資源が枯渇して食糧も不足し、レタスとトマト2個にネギで279ドル(当時の為替相場で83700円)、牛肉に至っては宝石並みの値段で一般庶民には手がでない存在になっている。
その代わりに国民は、合成食品「ソイレント・グリーン」の配給を受けて細々と生き延びているが、その合成食品を製造している会社は繁栄して貧富の格差が拡大している。現世に絶望した人のために「自殺ほう助」会社があり、自殺した者の家族には「死亡恩典」として食券が与えられる。
一方、特権階級は別世界のような住居に住まい、執事や住人をもてなす女性も「家具」として配置されている。

チャールトン・ヘストン演じるニューヨーク警察の刑事は、特権階級の世界で起きた殺人事件を捜査して「終末世界」の暗闇を暴いていくという筋書きなのだが、約50年前の予言が「当たらずと言えども遠からず」と改めて注目されているのだ。

1973年に『ソイレント・グリーン』は2022年の世界を想像したが、その多くが的中していた(「ワシントン・ポスト」電子版・9日)

人口増加、貧富の格差拡大

確かに米国の人口はこの約50年の間に約1億2000万人増加した。同時にホームレス人口も増えて、2020年には全米で58万人、ニューヨーク市だけで8万人弱の人たちが路上生活を送ることになったのは、映画の予言に近い。

食糧不足も今米国を襲っている。新型コロナウイルスの感染拡大で食糧生産や流通機構が影響を受けたことが原因だが、スーパーの棚から食料品が姿を消し、肉類は50%も値上がりしているという話が最近の米国のテレビニュースを賑わせている。

ジョージア州のスーパー(2022年1月12日)

そうした中で、貧富の格差拡大は『ソイレント・グリーン』の予言以上だ。
全米一の資産家といわれるアマゾン社創業者のジェフ・ベゾス氏はカリフォルニア州ビバリーヒルズに時価180億円の邸宅を構え、フェイスブックを立ち上げたマーク・ザッカーバーグ氏はハワイに1500エーカー(東京ドーム約130個分)の別荘地を持っている。

さらに、カリブ海などの別宅に少女を囲い込み、米英の有力者の相手をさせていたとされるジェフリー・エプスタイン元被告の児童買春事件は、特権階級の家に慰安のための女性が「家具」として用意されていたという映画の筋書きを想起させるものだ。

ジェフリー・エプスタイン元被告

今はまだ、自殺に「恩典」が出るわけではないが、自殺をほう助する装置が開発されたというニュースが何の疑問もなく伝わってきている。

映画は、チャールトン・ヘストン演じる刑事が、新しい合成食品「ソイレント・グリーン」の正体を突き止めるところで場面が暗転して終わり、救いようがない結末になっているが、約50年経ってワシントン・ポスト紙は次のようにこの映画を評価している。

『ソイレント・グリーン』は将来の世界を最も恐ろしく描いた映画ではないかもしれない。その意味では核戦争の恐怖を描いた映画『スレッズ』が勝るが、この映画は我々が貪欲さに支配され続けるといかに醜い事態を招くことになるかを警告してくれている。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎


アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。 NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。

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