「クオモ2020担ぎ出し」新型コロナ対応で支持率上昇

「正直に言うと、アンドリュー・クオモ(ニューヨーク州知事)は、ジョー・バイデン(前副大統領)」よりも優れた大統領候補になると思うよ」

これは、他ならぬトランプ大統領の言葉だ。3月27日にフォックス・ニュースのインタビューで、大統領選に向けての見通しを聞かれるとこう言った。

これに対して、クオモ知事は報道陣にこう答えた。

「私は大統領選に出ていないし、将来出るつもりもない。この危機に当たって政治的に行動することもない。大統領はパートナーなのだから、ニューヨーク州に良いことをしてくれれば誰よりも先にサンキューと言うよ」

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事
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クオモ知事は、クリントン政権で住宅都市開発長官に任命された後、2011年からニューヨーク州知事を務めているが、やはり同州知事を3期務めた父マリオ・クオモ氏の血を引いて、政界で存在感を発揮している。根っからの民主党員で、弟のクリス・クオモ氏はCNN放送のキャスターで、同局でもトランプ大統領には一際手厳しいことで知られる。

2020年の大統領選でも立候補が噂されていたが、クオモ知事は親しいバイデン前副大統領への支持を表明して出馬を否定してきた。

しかし、その後巻き起こった新型コロナウイルス危機の被害が最も集中したニューヨーク州で、同知事の対応に称賛の声が高まり、シエナ大学が行った世論調査では支持率が87%に上っている。

こうした中、民主党の候補選びで残っているバイデン前副大統領やバーニー・サンダース上院議員は、イベントの自粛から選挙運動もできない状況で半ば忘れ去られた存在になっている。

バイデン前副大統領(左)とサンダース上院議員と(右)

そこで、民主党支持者の注目はクオモ知事に注がれることになり、大統領候補に推す声が高まって「クオモ2020担ぎ出し」と名付けたツイッター上の勝手連も出現し、賑やかなことになっている。

NYの状況を積極的に訴え勝ち取った信頼

その人気の理由だが、まず、ニューヨーク州民のためなら政治的には正反対のトランプ大統領には頭を下げても援助を乞い、果たしてもらえば最大限謝意を述べることも忘れない、現実的な対応があるだろう。

その結果、連邦政府軍の工兵隊によって数千床の野戦病院を建設させたり、人工呼吸器を他州に優先して配布してもらったり、米国に2隻しかない病院船の1隻をニューヨーク港に回航してもらうなど、目に見えた成果がある。

セントラルパークに設置された仮設テント病院

さらに同知事は、毎日午前11時(現地時間)から記者会見を行い、ニューヨーク州内の状況について詳しく説明すると共に、時にはこう訴える場面もある。

「ニューヨークを助けにきてください。私たちはもう耐えうる限界を越えました。ボランティアの医療関係者が必要です。どうかお願いします」

同知事は言ってみれば、政治家らしからぬ振る舞いと、結果を伴う決断、それに人間味あふれる言動で指導性を発揮して、新型ウイルスの脅威に怯える毎日を送るニューヨーク州民の信頼を勝ち取ったようだ。

米民主党の候補者選びは、すでに2人の候補の支持票の多くが確定しているので、今からクオモ知事が候補者に選ばれる可能性は低いと見られるが、その先、2024年に向けて大きな布石を打ったのではないか。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】