新型コロナウイルスに対しては、すでにワクチン接種が行われているが、飲み薬の開発が国内でも進められ、実用化への期待が高まっている。
そんな飲み薬の研究が鹿児島でも進められている。研究が進む鹿児島大学の研究室を取材した。

C型肝炎の治療薬として研究される薬 抗コロナ効果を確認

鹿児島大学桜ヶ丘キャンパスにある、ヒトレトロウイルス学共同研究センター。ここでは、感染症の症状やその治療法に関する研究などが行われている。

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抗ウイルス化学療法研究分野の馬場昌範特任教授は、これまでに既存の薬剤の中から新型コロナウイルスに有効とみられる3つの薬剤を発見し発表した。

このうち、C型ウイルス肝炎の治療薬として研究開発を進めていたフェナンスリジノン誘導体については、動物を使った研究で抗コロナウイルス効果が確認されている。

これはサルの腎臓細胞。新型コロナに感染すると3日後に細胞は死滅し、その残骸が散らばっているのがわかる。

フェナンスリジノン誘導体を投与すると、細胞は3日後でも原型をとどめる
フェナンスリジノン誘導体を投与すると、細胞は3日後でも原型をとどめる

しかし、フェナンスリジノン誘導体を投与すると、細胞は3日後でも原型をとどめている。

フェナンスリジノン誘導体は現在、製薬会社と共同で1年後の実用化を目指して研究が進められていて、2022年の春には臨床試験も予定している。

馬場特任教授は、自宅での療養を可能にするためにも「飲み薬」の開発にこだわっている。

鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター・馬場昌範特任教授:
要するに、新型コロナをインフルエンザ化したいわけです。医者に行って抗原検査をして、陽性だったら薬をもらって寝てましょうと。3日間寝ていれば回復してきますと。今は薬がないから、自宅療養でも常に死の不安と闘わないといけない。効く薬があれば、自宅療養で寝てればいいわけですから

飲み薬を開発する上で大切なポイントは、大きく2つ。必要な成分を胃腸から吸収できるかということと、化学物質を直接体に入れることによる副作用の危険性だ。

鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター・馬場昌範特任教授:
今まで人に投与したことがない薬なので、一番心配なのは副作用。臨床試験までいくには(薬が)100個あって1個いけるかどうか。最後までいって開発されるのは、何万個に1個ですよね。“大きな賭け”と言ってはなんだけど、薬の開発はそういうもの。特に新薬の場合は

厳重管理の研究室で日々、試験を重ね…

そんなわずかな確率にたどり着くまで地道な試験を重ねているのが、こちらの研究室。

扉には「生物災害物」の文字が
扉には「生物災害物」の文字が

鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター・馬場昌範特任教授:
普通は(研究室の空気は)外からは吸い込まない。常に中が陰圧になっているんですね

――なぜ陰圧に?

鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター・馬場昌範特任教授:
(ウイルスを扱う)中の空気が外に出たら危ないから

部屋の中では、ヒトの細胞にコロナウイルスの培養液を手作業でひとつずつ注ぎ込む作業が行われていた。

これに薬剤を投与して、3日後の細胞の変化から薬剤の効果を測定するという。

共同で研究に取り組む岡本実佳准教授:
毎日毎日、繰り返しやっても全く効果が得られない。効果があるものが見つからないのがずっと続いたりするので、高い効果が得られたときには、やはりとてもうれしい。良かったと本当に思って

薬を組み合わせ変異ウイルスに対応

新型コロナをめぐっては、11月にオミクロン株が発見されるなど、次々と現れる変異株への対応も課題となっている。

飲み薬の場合は、薬を組み合わせることで変異に対応できる可能性がある。

鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター・馬場昌範特任教授:
ワクチンを打ったら、それからすり抜けるウイルスが必ず出てきますからね。薬も同じことで、薬があったら、その薬が効かなくなるように姿を変えるんです。とはいえ、薬の場合はワクチンと違って、2つ別の薬を一緒に投与することができます。2つの薬がうまく効けば、もう変異株なんて心配しなくていい

また、馬場特任教授が懸念するのは新型コロナだけではない。

鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター・馬場昌範特任教授:
新型コロナは、SARS-CoV-2なんですね。専門的に言うと第2号。ということは、第3号が出る可能性は充分にある。その時、どうしますか?また同じことを繰り返すんですか、人間は。すぐ投与できるような薬を作っておかないといけないと思うわけです。次のパンデミック(感染拡大)に対して、どう対応できる薬を作り上げるか

鹿児島から世界を救う薬を。新型コロナの先のパンデミックも見据えて、今日も研究は続く。

飲み薬については12月14日、アメリカのファイザー社が、開発中の飲み薬が臨床試験で重症化リスクの高い患者の入院や死亡を9割減らす効果を確認したと発表している。

(鹿児島テレビ)

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