「グラフィック(絵)レコーディング(記録)」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
会議や講演会などの内容を、文章の代わりに、イラストや図を使って記録するという手法で、昨今、ビジネスの場などでも注目を浴びている。
この技術を学び、起業した男性が富山県内にいる。どんな思いで活動しているのか取材した。

生まれたときから“いろんな人がいる”環境

11月に開かれた、富山市主催のまちづくりのシンポジウム。登壇者の発言を、その場でイラストや図にまとめている人がいた。

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「グラフィックレコーディング」、略して「グラレコ」と呼ばれる手法で、シンポジウムの内容を記録する役割を任されていたのは、富山・射水市在住の山口翔太さん。県内で唯一、「グラレコ」を専業としている。

山口翔太さん:
絵のいいところは、文字よりも、よりパッと見てわかるというのは大きい。そこからスムーズに話を展開したり、深めていきやすい

山口さんはこの技術を学び、「トークグラフィッカー」と名乗って、2年半前に起業した。時には自らイベントの進行役も務めながら、民間企業から行政まで、すでに300以上の実績がある。

グラレコに魅力を感じた背景のひとつには、自身の家庭環境があった。

山口翔太さん:
兄が双子で、ひとりは健常者で、もうひとりは重度の知的と身体障がいを持っている。生まれたときから兄は障がいを持っているので、僕にとっては、“いろんな人がいる”というのが生まれたときから当たり前

山口翔太さん:
いろんな人がわかりやすいように、いろんな人が話し合いに参加できたらというのは当たり前。グラフィックがあることで、カバーできる部分があるのではないか

人の「声」を「見える」ように「描く」技術。
山口さんは最近、自分が描くだけでなく教えることにも力をいれている。

「グラレコ」の多様性や魅力を広める

2020年から氷見高校で、希望者を集めての講座を開いている。
この日は、市内で働く人をゲストに招き、今の仕事に就いた理由をインタビューするという実践形式。

情報を線や色で分けたり、感情が伝わるようなイラストを添えたりと、話の要点をまとめるコツをアドバイスしていた。

生徒:
もともと絵が好きで(参加した)。人の話を聞いて描くことで、よりその人のことを知ることが出来たのでよかった

さらに12月12日、氷見市主催のトークイベントに「グラレコ」担当として初めて高校生が参加。教育関係者が集まるイベントで、話を聞きながらその場で「グラレコ」した。

山口翔太さん:
聞いたことを頭の中で考えて、絵でアウトプット、まとめる力(を身に着けてほしい)。この技術をきっかけに、人の話を聞くことって面白いなと思ってもらえればいいなと

高校生:
グラレコに出会ってなかったら、こういう場に参加するきっかけにもならなかったので、よかった

人の話を「聞き」、わかりやすく伝わるよう「描く」技術が、多様な価値観を理解するツールになれば…。
山口さんは、人と人をつなげる「グラレコ」の可能性に期待し、今後もその魅力を広めていきたいとしている。

(富山テレビ)

富山テレビ
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