海の生き物「ベニシボリ」がかわいい

海に囲まれた日本において、海の生き物を目撃することは珍しいことではないだろう。しかし時折、私たちが見たこともないような生き物がTwitterに投稿される。

編集部では以前、神秘的な見た目が美しい「コンシボリ」を紹介したことがある。

(参考記事:美しいのには意味がある? 海の生き物「コンシボリ」の姿が神々しい

そして今回、新たに見た目がかわいい生き物がTwitterに投稿され、話題となっている。

それがこちらだ。


これは本当は内緒にしておきたいライフハックなんですが、磯に生き物を探しに行くと時折信じられないくらい可愛い生き物がいるので、疲れた時はみんな貝やウミウシを探しにいくのがオススメです。これは先日の磯で見つけたベニシボリガイ。貝殻を持つウミウシの仲間ですが、こういうゆるキャラいそう。

コメントともに投稿された画像を見ると、白ベースの貝殻には手書きされたかのような赤い線が縦横に入っていて、なんとも味わい深いフォルムでもある。体は半透明でつぶらな黒眼が2つ前方についており、どこかキャラクター性とかわいらしさを感じる人もいるだろう。
 

ベニシボリ
この記事の画像(3枚)


投稿したのは、素潜りで熱帯魚なども採っているという「ゆうじ」(@sea_slug_0509)さん。ゆうじさんによると、ベニシボリの体長は約1.5センチだったという。

かわいらしい見た目のベニシボリに、Twitterでは「一瞬、ただの貝殻じゃんと思ったらつぶらなおめめが」や「キレイですね~1度でいいから見てみたい」などの声が上がり、約1万いいねがつくなど話題となっている。(4月8日時点)

いつまでも見ていられそうな、この“ベニシボリ”。一体どんな生き物なのか、貝に詳しい岡山大学 農学部環境生態学コースの福田宏准教授にお話を伺った。
 

黒い点々は眼?「そうです」

ーーこの生物はウミウシの仲間?

本種ベニシボリは、オオシイノミガイ上科のミスガイ科に属します。この上科はつい最近まで、いわゆる「ウミウシの仲間」(つまりかつての「後鰓類《こうさいるい》」≒現在の分類でいう真後鰓類や裸側類《らさいるい》など)と考えられ、今もなおそのように扱っている図鑑や記事などが少なくありません。

しかし、近年のDNAを用いた系統解析や比較解剖の結果、かつての「後鰓類」は複数の群に分解され、オオシイノミガイ上科は狭義の「ウミウシ」とは異なる起源を持つグループであると判明しました。

このため、本種も「ウミウシの仲間」と言い切ってしまうと、厳密には正しくありません。「ウミウシに近縁な仲間」など曖昧な表現を用いる分には問題ないでしょう。


ーーこの生物の名前と特徴は?

学名:Bullina lineata 和名:ベニシボリ
所属:軟体動物門・腹足綱・異鰓亜綱・原始的異鰓類(非公式群)・オオシイノミガイ上科・ミスガイ科・ベニシボリ属

生態:コンシボリと同様に肉食性で、ゴカイを捕食することが知られています。春季に産卵が観察されています。


ーー黒い点々に見えるのが眼で間違いない?

そうです。


ーー眼がかなり小さいが視野も狭い?

視野という以前に、彼らの眼には明瞭な像は結ばれていない可能性が高いです。本種を含む異鰓類の眼はレンズを持ってはいるものの、ごく小さくて構造も単純なため、おそらく網膜上のわずかな光受容体で明暗を感じる程度であろうと言われています。

つまり、暗いか明るいかは感知できるものの、外界の色彩や形状はほぼ認識していないと考えられます。


ーー体の模様は貝にも見える。この部分は固い?

桃色の紋様が現れているのは貝殻の表面です。ベニシボリの殻はそこそこ硬く、脆いというほどではありませんが、かと言って分厚いわけでもなく、乱暴に扱うと壊れます。死んだ後も殻は残るので、砂浜に打ち上げられることも珍しくありません。
 

海底にいるベニシボリ

ベニシボリはさほど希少な種ではない

ーーベニシボリを見つけるのは難しい?

さほど稀少な種ではありませんが、普通種というほど多産するわけでもありません。特に昼間は表層に出ていることが少ないので、漫然と浜辺や海底を眺めているだけでは出会える確率は高くないでしょう。ただ、産卵期には多くの個体が現れるようですので、タイミングが合えばたくさん見られるかもしれません。

私は奄美大島の海岸で、潮間帯に平坦な岩盤が広がっている場所において、岩の割れ目に溜まった砂をすくい取ってザルでふるったら、生きたベニシボリが入っていたのを見たことがあります。おそらく昼間は砂の中に潜み、夜になると表層へ這い出すのでしょう。


ーー生息域は?

日本からオーストラリア・ニュージーランドに至るインド−西太平洋の広い範囲(主に熱帯・亜熱帯域)に分布します。日本は世界的分布北限にあたり、従来の文献では太平洋側の最北の産地は房総半島、日本海側は山口県北長門海岸とされてきましたが、現在は地球温暖化によってさらに北上しているかもしれません。

棲息環境は、潮間帯下部〜潮下帯(水深約30 m)の岩礁域やサンゴ礁、岩礫間の砂底です。


ーー動きは素早い?

あまり素早くはないでしょう。海底をのんびり這います。


ーー食べることは可能?

やめた方がいいと思います。体内に毒を持っている可能性が否定できません。

 

以前紹介した「コシンボリ」もそうだが、「ウミウシに近縁な仲間」には私たちの感性を刺激する生き物が多いようだ。少しでも気になった人は、海を訪れた際には海岸をチェックしてみることをおすすめしたい。
 

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