2月6日、国立極地研究所と東邦大学理学部の研究グループが、東京・お台場の海から新種のゴカイ「ナミウチコモチコイソメ」を発見したと発表した。

このゴカイは、学名を「Ophryotrocha urbis」といい、「生物の死体」からのみ発見されていることから腐肉食性であり、“海の掃除屋”の機能を果たし、東京湾の生態系維持に重要な役割を担っていると考えられるそうだ。

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ちなみに、和名「ナミウチコモチコイソメ」は「頭の近くに波打つような形をした部分」があることに由来しているとのこと。


確かに頭部に「波打つ」ような形をした部分がある
確かに頭部に「波打つ」ような形をした部分がある

ゴカイの仲間は日本で1200種以上の生息が確認されているそうで、以前編集部では、ゴカイの一種「キムラハナカゴオトヒメゴカイ」が、環形動物の中で世界初となる音を出す種であることを日本の研究者が発見したことを取り上げた。
(関連記事:“水中で音を出す”ゴカイが本当にいた…世界初の発見は偶然の産物だった

では、今回発見された「ナミウチコモチコイソメ」はどんな生態なのか?そして、東京・お台場という身近な場所でこれまで発見されずにいたのは一体なぜなのか?
国立極地研究所生物圏研究グループの自見直人さんに話を聞いた。

これまで未発見の理由に新種ゴカイの「特殊な生態」

ーー「ナミウチコモチコイソメ」発見に至った経緯は?

私たちは、「お台場海浜公園」において定期的に調査・清掃を行ってきましたが、2015年と2017年の調査・清掃の際にユウレイボヤの死体およびアカエイの死体よりこのゴカイを発見しました。

ーーこの「ナミウチコモチコイソメ」を今回新種と判断した決め手は?

コモチコイソメ属は世界で約70種知られていますが、これらと頭の近くの波打つ形状や足から生えている毛の形・DNAの塩基配列などから区別できることがわかり、新種と判断しました。

ーー新種だと分かった時の気持ちを聞かせて?

お台場という都会のど真ん中でまだ知られていない種を発見できたのは驚き
だったとともに、東京というよく知られていそうな場所でも調査を継続する必要を感じました。


ーーお台場に生息しながら、今まで発見されなかった理由は?

「生物の死体からのみ発見されている」という、「ナミウチコモチコイソメ」の特殊な生態が理由なのかなと思います。

アカエイの死体に群がる「ナミウチコモチコイソメ」
アカエイの死体に群がる「ナミウチコモチコイソメ」

「東京湾で新種が見つかる可能性はまだあると思います」

ーー「ナミウチコモチコイソメ」は“海の掃除屋”と呼ばれているそうだが、周辺環境にどんな影響を与えている?

生物の死体をかじって食べて分解することで、環境から死体を早期に片付け、生態系の循環を助ける役割をしていると考えられます。

ーーでは、どうやって“掃除”を進めている?

頑丈な顎を持っており、死体をかじって食べることにより分解を進めます。

ーー東京湾にはゴカイが元々多く生息していたりする?

東京湾のみならず、日本各地に多くの多毛類(いわゆるゴカイの仲間)が生息しています。ゴカイは底生生物(海底にすむ生物のこと)の中でも種数・現存量ともに多く確認できるグループです。

ーー東京湾には、新種の生物がまだいそう?

今回は生物の死体というすこし変わった環境から新種を見つけることができました。いつもと違う場所ややり方で調査を行うことで、東京湾で新種が見つかる可能性はまだまだあると思います。

「ナミウチコモチコイソメ」を発見したお台場海浜公園の様子
「ナミウチコモチコイソメ」を発見したお台場海浜公園の様子

いわゆる「都会のど真ん中」であるお台場海浜公園から新種の生物が見つかったことに驚いたが、東京湾においてもやり方次第でまだまだ新種が見つかる可能性があるという。
2020年は東京オリンピックの会場予定地のため、お台場の海での定期調査は当面の間、休止となる予定だというが、今後の新たな発見にも期待したい。

画像撮影:多留聖典(東邦大学理学部訪問研究員)

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プライムオンライン編集部
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