バイデン大統領の支持率落下に歯止めがかからない中、カマラ・ハリス副大統領をいわば「トカゲのしっぽ切り」のように更迭するのではないかという噂がワシントンで広がり始めている。

「副大統領の承認手続きを勉強」情報筋の“助言”
そうした噂に火をつけたのはフォックス・ニュースの議会取材班キャップのチャド・パーグラム記者で、15日出演したラジオ番組で次のように発言したのがさまざまな思惑を呼び起こすことになった。
数週間前にとても謎めいたメールをもらいました。それは情報筋からのメールで、私に『上院だけでなく下院でも行われる副大統領の承認手続きを勉強しておくと良い』というものでした。(パーグラム記者)
合衆国憲法修正25条第2項では「副大統領が欠けたときは大統領が副大統領を指名し、指名された者は、連邦議会の両院の過半数をの承認を経て副大統領の職に就く」と規定している。
つまり、「情報筋」が近く新たな副大統領の承認の手続きがあることを示唆したものと受け止められたのだ。

ハリス氏を最高裁判事に指名?
それには、まずバイデン大統領が辞任してハリス副大統領が昇格し副大統領が空席になった場合と、ハリス副大統領が辞任して新たな副大統領が就任するケースと2通りのシナリオが考えられるが、今噂されているのは2番目のケースだ。
バイデンとハリスのデタント(緊張緩和)は終わり、ホワイトハウスは新副大統領の選定に入った(『フォックス・ニュース』電子版 16日)
ではどのようにハリス副大統領を辞任させるかだが、こういうシナリオは考えられないこともない。
バイデンはカマラを副大統領の代わりに最高裁判事に指名する:ホワイトハウス内の噂(ニュースサイト『WND』16日)
最高裁判事は9人で、その内民主党大統領に指名されたのは3人だが、その1人のスティーブン・ブライヤー判事は83歳でバイデン大統領の任期中に交代することが民主党関係者たちから求められている。
ハリス副大統領はカリフォルニア州の法曹資格を持ち、同州の司法長官を務めているので法曹家の頂点の最高裁判事という職は辞退しにくいとも考えられる。
話は早いが、そうなった場合の後任の副大統領の名前も浮上してきた。
ピート・ブティジェッジ(運輸長官)がカマラ・ハリスの後釜の副大統領に?(ウェブサイトMEAWW 17日)

2020年の大統領選民主党候補者選びの予備選で善戦したブティジェッジ長官ならば、副大統領として適役であるだけでなく、バイデン大統領に代わって大統領選に出馬する資格充分だと考えられる。
ハリス氏も支持率低迷
以上は、ワシントンを駆け巡っている噂なのだが、新型コロナウイルスのワクチン接種を強制したり、インフレを招いたり、外交ではアフガニスタンからの撤退が混乱してバイデン大統領の支持率が急降下する中、ハリス副大統領はさらに人気がない。
USAトゥデー紙とサフォーク大学の共同世論調査で同副大統領の支持率は28%にすぎず、不支持率は51%で大統領の足をひっぱっている。

反バイデン系のメディアだけでなく、“バイデン応援団”のCNNも副大統領との確執を長文の記事で伝えており、ホワイトハウスの記者会見でもこの問題で広報官が記者に質問攻めにあっている。
「トカゲのしっぽ切り」に発展することもありえる噂話だろう。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】