もうほっといてあげなさい!

秋篠宮家の長女眞子さんは26日、小室圭さんと結婚されて皇室を離れた。テレビで記者会見を見ていて、眞子さんの硬い表情と声が印象的であり、それは彼女の強さと共に若い2人の孤独を感じさせるものだった。

若い二人の孤独を感じさせる会見となった
若い二人の孤独を感じさせる会見となった
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テレビの番組では司会者やコメンテーターが会見内容や結婚そのものを批判的に取り上げているように見えたが、正直もうほっといてあげれば、と思う。ダンナがちゃんと働くのか心配だとか、しゅうとめがお金のことでもめているとか、まあ世間ではよくある話ではないか。「でも税金が払われてるんだから」という反論もあろうが、1億5千万円の一時金の受け取りも辞退されたことだし、もう許してあげたらどうか。

許す許さないはともかく、実は2人の結婚は日本国民の皇位継承についての考え方に大きな変化をもたらした。まず5月、産経新聞に以下のような短いがかなり衝撃的な記事が掲載された。

天皇のおばあちゃんがお金のことでもめている?

記事によると4月8日に首相官邸で行われた、「安定的な皇位継承策を検討する有識者会議」のヒアリングの席上で、八木秀次麗澤大教授が女系天皇について「眞子さまとお相手との間に生まれたお子さんが天皇になるということだ」と述べた。

会議の事務局はこの八木氏の発言を議事録に載せなかったが、八木氏は「具体的にこういうイメージをしていくと女系継承とはどういうことなのかが理解できる」とも述べている。

実は八木氏はヒアリング後に官邸でのぶら下がりで以上のことを記者団に明らかにしたのに、なぜか報道されず、1カ月以上たってから産経にこの話がポロっと出たのはフシギだったが、僕はこの記事を読んで、確かに八木氏の言うように「眞子さんと小室さんのお子さんが天皇になるのか」と具体的なイメージがわいてきた。

凜とした表情にも緊張感が隠せない眞子さん
凜とした表情にも緊張感が隠せない眞子さん

ダンナがちゃんと働かない、しゅうとめがお金のことでもめている、というのは皇室を離れた小室眞子さんの場合は「世間でよくあること」で済まされるが、天皇の父親がちゃんと働かない人だったり、おばあちゃんがお金のことでもめている人というのはちょっと困る。この八木さんの衝撃的な発言は国民にこういった具体的なイメージを与えてくれたのだ。

用紙した書面を二人で交互に読み上げる会見スタイルとなった
用紙した書面を二人で交互に読み上げる会見スタイルとなった

そして9月の自民党総裁選。当初総裁に最有力との声も出ていた河野太郎氏は、かつて女系天皇検討を主張していたが、「126代続いている日本の伝統を受け継いでいくのが重要」と述べた上で、有識者会議の結論を尊重する考えを示し、事実上女系天皇論を封印した。

麻生さんのナイスなディール

報道によると河野氏は脱原発と女系天皇の封印を条件に麻生太郎氏から出馬容認を取り付けたということで、これは麻生さんのなかなかナイスなディール(取引)であった。

女系天皇の封印を条件に麻生太郎氏(左)から出馬容認を取り付けたと言われる河野氏(右)
女系天皇の封印を条件に麻生太郎氏(左)から出馬容認を取り付けたと言われる河野氏(右)

河野氏だけでなく小泉進次郎氏などもそうだが、近頃は自民党内でも経済や外交安保政策では保守でも社会政策ではリベラルというのが「はやり」なのだが、総裁選における女系天皇に関する議論では「私以外の人が勝つ」と最初から勝ちを諦めていた野田氏以外は岸田、高市両氏も「男系」を主張し、これで党内の議論から「女系」は消えたのではないか。

眞子さんと小室さんの結婚、有識者会議における八木発言、そして河野太郎の「女系封印」により、なんだかよくわからないまま「女系天皇でもいいんじゃないか」と考えていた人たちは目が覚めたと思う。その意味で2人の結婚はたいそう意義のあることだと思うのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。