ドナルド・トランプ前大統領が、2024年の大統領選に向けて実質的な選挙運動をはじめた。

トランプ前大統領の登場で熱気に包まれた会場(アイオワ州デモイン・10月9日)
トランプ前大統領の登場で熱気に包まれた会場(アイオワ州デモイン・10月9日)
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「米国を救え」2024年大統領選にらみ始動

トランプ前大統領は10月9日、アイオワ州の州都デモインで「米国を救え」というスローガンの集会を開き、会場のアイオワ州立イベント広場には地元紙「デモイン・レジスター」が「数千人」と表現した観衆が詰めかけた。

「バイデンの9カ月で、凶暴な犯罪者や血に飢えたギャング達が我々の街を占拠し、不法移民や麻薬密輸組織が我々の国境を占拠した。インフレが我々の経済を乗っ取り、中国は我々の仕事を奪い、タリバンはアフガニスタンを占拠した。狂気の左派勢力が学校を乗っ取り、極左勢力がこの国を占拠してしまった。でも、それは私が警告したことだろう?」

トランプ前大統領はこう演説をはじめ、バイデン政権の過ちを追及していった。

この集会は、2022年の中間選挙に出馬する共和党候補者を支援することが建前上の目的だったが、トランプ前大統領はその先の2024年の次期大統領選挙をにらんだ発言が往々にして見られた。

「(将来的に大統領選への出馬に意欲を示している民主党の)ステイシー・エイブラムスと戦おうじゃないか。勝てると思うよ」

演説するトランプ前大統領
演説するトランプ前大統領

初戦州・アイオワでの集会は「再出馬」意思表示か

米国の政治専門ニュースサイト「ザ・ヒル」も、今回のアイオワ行きについて「2024年に再出馬する意図を明確に示すものだ」と伝えている。

実はトランプ前大統領は、2021年8月のアフガニスタン撤退の混乱でバイデン大統領の支持率が急降下すると、2024年大統領選への出馬宣言をしそうになり、周囲の助言者が「いま出馬宣言すると中間選挙に影響が出る」と押しとどめたと報じられており、出馬は規定の方針とも考えられている。

その場合、大統領選の予備選初戦が開かれるアイオワ州で勝利し、余勢をかって全国制覇するためにも、今回の集会は特別の意味を持っていると言える。

トランプ氏の演説を見守る支持者ら
トランプ氏の演説を見守る支持者ら

「過去最高」アイオワ州でのトランプ人気

そのアイオワ州では、過去に見られなかったようなトランプ人気に沸いている。

集会に参加した支持者ら
集会に参加した支持者ら

「デモイン・レジスター」紙が9月12日から15日の間に行った世論調査では、トランプ前大統領に好感を寄せているとするもの53%、不興に思うもの45%で、同紙が行った世論調査で前大統領に対してかつてない好感度を記録した。

その一方で、バイデン大統領に対しては好感を持つもの37%、不興に思うもの61%で同紙の世論調査で過去最低の好感度だった。

問題は、2024年の大統領選に共和党内からトランプ前大統領の対抗馬が出るかという点で、もっぱらその候補にフロリダ州のロン・デサンティス知事の名前が上がっているが、これについて前大統領は「ヤフー・ファイナンス」にこう語っている。

「彼は出ないと思うよ。でも私が叩きのめすだけだ。他の誰が出てもね。」

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。