新型コロナウイルスの第5波では、鹿児島県内でも一時、医療機関や宿泊施設がひっ迫。自宅待機者は、最大で1,400人近くにのぼった。
しかし、この自宅待機者の中には、家庭の事情で自ら自宅待機を選んだ人もいる。

“家庭内感染”リスク抱え…自宅待機を選んだ家族

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鹿児島市のナカノ在宅医療クリニック。
8月から9月にかけての新型コロナの第5波では、感染者の急増に伴い自宅待機者が増加。そんな中、鹿児島市では8月末から、訪問診療を行う在宅医が自宅待機者の健康観察を始めた。

9月20日、中野一司院長が向かったのは、鹿児島市の家庭。住人の30代の女性は、9月3日に新型コロナウイルスの陽性が判明した。
この頃は県内での自宅待機者の数も徐々に減っていて、女性は保健所から、ホテル療養をすすめられたという。
しかし…

感染した女性:
保健所から「隔離で」と言われたけど、「無理です」と言った。どうしても、こういう状況で、娘はまだ1人でできないし、お母さんももちろん動けないし

女性が自宅待機を選択した理由。それは、家族の存在だった。
女性は小学生の娘と母親の3人暮らし。女性の母親は、ふらついたり、ろれつが回らなくなる神経の難病「脊髄小脳変性症」を患い、女性の介護が必要だった。

翌日には娘の陽性も判明し、女性は母親のかかりつけ医である中野院長に相談した。

女性:
自分と娘は陽性だからホテルが良いけど、お母さんの説明をして、そしたら「自宅で感染覚悟でやるしかないですね」となって。マスクとアルコールと手袋だけで介護をやっていた

中野院長:
お母さんが、かえって感染したほうが良いかな?くらいのことを考えた。感染すると、陽性だから入院できるので。お母さんだけ取り残されてしまって2人入院となったら、「介護は誰がするんだ」という話になる

中野院長は、自宅待機を選択した女性の家に毎日電話での問診を行った。

中野院長(電話):
きょう熱出てないですか?

女性:
出ていないです、2人とも

中野院長(電話):
熱が出たら教えてください、しかるべきタイミングで検査に行きますので

中野院長は、母親に症状が出たら、いつでも防護服を着てPCR検査に行ける態勢を取っていた。
難病を患う母親にうつすリスクもある中、在宅医のこまめなサポートは、女性にとって大きな支えだったという。
その後、女性と娘は症状が改善し、母親に感染することなく、3人は9月18日までに自宅での療養を終えた。

感染した女性:
(母親が)熱が出ないとは言い切れない期間ですよね。2週間は長かった。早かったけど長かった

鹿児島県は、新型コロナに感染した場合、原則ホテルか医療施設での療養としているが、家庭の事情で自宅待機をせざるを得ない人たちがいる現実がある。
これについて、県は「健康観察をするためにも、できれば入所してもらいたい。そのために、感染者が入所できない理由を聞き取り、さまざまな解決方法を示している」としている。

中野院長は、このようなケースに対応するためには、医師が関わりながら「自宅療養」を行うという選択肢も検討するべきと訴える。

中野院長:
(ホテル療養よりも)家の方がこまめなフォローができると思う。ただそれは保健所任せではなくて、保健所と医師会が連携しながら、地域のかかりつけ医とコミュニケーションをとりながら…かかりつけ医がいないところは、僕ら在宅医会が全部引き受けますと言っているので、そういう形にすれば、もう少し良いコロナ対策がとれるのかなと思う

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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