英国社会に存在する根強い人種偏見

英国王室からの「離脱」を表明したヘンリー夫妻

「英国の黒人であれば、メーガン・メルケルが英国を出たくなる理由は分かる。それは人種差別だ」
ニューヨーク・タイムズ紙電子版に9日、こんな見出しの論評記事が載った。

筆者は英国の黒人の女性作家アフア・ヒルシュさんで「メーガン妃とハリー王子が王室のシニアメンバーを退き財政的に独立して北米で生活すると宣言したことに、英国のマスコミは「地震のような決定」「自分本位」「乱暴すぎる」などと驚いているが、彼らが英国の有色人種の社会のことにを関心を寄せていれば驚くこともなかったろう」とする。

ヒルシュさんは、英国社会には根強い人種偏見があり、母親がアフリカ系アメリカ人であるメーガン妃を受け入れる余地はなかったのだと例をあげて指摘する。

黒人ブローチとチンパンジー・ベイビー?

その一つが、メーガンさんがハリー王子と婚約した直後の2017年のクリスマスに女王がメーガンさんを招いて主催したパーティでエリザベス女王の従弟の妻マイケル王子夫人が黒人の顔を模した大きなブローチを胸につけて出席したことだ。王子夫人の報道官が後に謝罪したが、メーガンさんは必ずしも王室のメンバーから歓迎されていないという意思表示を受けたと考えただろう。

メーガン妃となってからも英国社会のエリートたちから陰に陽に部外者扱いをされるが、人種差別が剥き出しになったのが昨年5月第一子アーチー君を出産したときだ。

英国のコメディ作家で公共放送 BBCのDJでもあるダニー・ベイカー氏が「王室のベイビーが退院した」と題したツィッターをアップしたが、その写真は人間のように洋服を着せられたチンパンジーを両側から男女が手を引いて戸口から出てくるというものだった。

さすがにBBC放送もベイカー氏との契約を解除し、警察もこのツィートについて捜査をはじめたと発表したが、その後どうなったかは明らかではない。

Danny Baker氏のツイッターより

そこまで露骨でなくとも、メーガン妃が言われなく批判される例はいくらでもある。昨年はじめ英国の大衆紙がそろって「メーガン妃の好物のアボカド・トーストが旱魃と殺人を広げている」と伝えた。

アボカドを生産している発展途上国の多くは水不足や、人権侵害、不法な森林伐採などの環境破壊が進行している。メーガン妃がアボカドの消費を喚起するとこうした問題が深刻化するという論法だが、これにはさすがに英国のマスコミも「言いがかり」と批判した。

「差別は差別されたものにしか分からない」

つまるところ、英国社会はメーガン妃のやることなすことが気に入らないようなのだが、それは英国が植民地支配で成り立った国で被支配者の有色人種に対して差別するのは英国人に歴史的にすり込まれた性癖だとヒルシュさんは考えるのだ。

他にもCNN放送は「原因は人種差別だ」CBSニュースも「メーガン・メルケルの英国脱出は人種差別が原因か?」と米国のマスコミはメーガン妃に同情的だが、英国では大衆紙「ザ・サン」がハリーとメーガンへの反感は人種差別と関係ない。彼らのずうずうしい偽善と(王室への)軽視だ」と反論している。

「差別は差別されたものにしか分からない」と言われる。一度メーガン妃に本音を語ってもらいたいところだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【イラスト:さいとうひさし】

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