近年、展示ブースが並んだこれまでのトレードショー形式ではなく、イノベーションが創発されるような新たなスタイルのコンベンションが世界中で増加している。

「イノベーションとコンベンションをかけ合わせて『イノベンション』と呼んでいます。」

東京・渋谷のデジタルエージェンシー、株式会社インフォバーンの小林弘人氏(代表取締役CVO)は、こうしたイノベンションの一つ、ベルリンで開催されているTOA(Tech Open Air)のスピンオフイベント「TOAワールドツアー東京」を、2月26日に東京・天王洲のTMMTで開催する。

イベントでは欧州で注目のテクノロジー・スタートアップ企業を招き、衣・食・住とテクノロジーを掛け合わせた「ライフテック」の最新事例が次々と紹介されるが、共通するキーワードの一つが「サーキュラーエコノミー(循環型社会)」だと言う。

サーキュラーエコノミーを体現するスタートアップとはどんな会社だろうか?また、日本がいま欧州から学ぶべきことは?イベントを主催する小林氏に話を聞いた。

TOA公式サイト

ーー ドイツ・ベルリンで開催されるTOA(Tech Open Air)の魅力は?

TOAはベルリン市もサポートするイベントで、4日間でおよそ2万人が集まります。

アメリカで開催されるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)に比べるとコンパクトなのですが、より学際的、領域横断的で、会話が重視されています。

Ask Me Anythingというスピーカーと直接話せる場があったり、東欧や中東からもイノベーターが来るので、参加者のバックグラウンドが様々で、貴重な機会ですね。

ーー TOAのスピンオフを日本で開催する事になった経緯は?

これまでWIREDやGIZMODOといったメディアの日本版を立ち上げた時もそうなのですが、「もしやるんだったら、一緒にやろうよ」と声をかけていて、正式なビジネスオファーをした事は一度も無いんです。スピリットに共鳴した時だけ、お話するようにしています。

その段階ではまだ有名ではなく、これからコトが起こるタイミングなので、「じゃあやってみよう」とビジネスにつながる事が多いですね。

TOAの場合はヨーロッパでは既に知られていましたが、日本では知名度が低かったので、ぜひこのイベントを日本に紹介したいし、日本の人を現地にも連れていきたいという思いで始めました。

ーー 今回のTOAワールドツアー東京には、ペットボトルや海洋ブラスチックごみを原材料にしたアパレルブランドなども参加しています。今、欧州ではどのような潮流があるのでしょうか?

昔からですが「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」という事が叫ばれています。ベルリンでは無包装、量り売りのスーパーマーケットがウケていますし、その流れは世界中にあります。

ファッションの分野でも、プラスチック製品で包装されて、果たしてそれがおしゃれなのかと。消費者が選ばなくなってきた事が、すごく大きいですよね。

ECOALF(エコアルフ)海洋プラスチックごみ等を原材料とするスペイン発のアパレルメーカー
INFARM(インファーム)屋内で野菜を栽培可能なシステムを提供するベルリン発のスタートアップ(YouTubeより)

また、今回参加するINFARMは、衣食住の未来=ライフテックという文脈でお招きしている企業ではありますが、(都市の建物の中で)野菜を作り、収穫し、食べる。地産地消で流通をカットしている点が画期的です。これまでの伝統的な会社と違い、サーキュラーエコノミーの側面からも存在意義のある、次世代のスタートアップ企業が生まれています。

ーーそれらの企業は取り組み方、見せ方にも特徴がありますか?

そうですね、カッコイイんですよ。

先ほどお話したベルリンにある無包装・量り売りのスーパーは「Original Unverpackt」という企業です。以前、日本の年配の方とこの話をした時には「そんなの儲かるの?」という反応で、それがスターバックスコーヒーのようにディスプレイされてるイメージが湧かないんですよね。スタイリッシュです。

Original Unverpackt

ーーインターネットビジネスとも関連しますか?

D2C(Direct to Consumer、大量生産ではなくこだわりのある商品を直接消費者に届けるスタイルのコマース)とは相性が良いですね。

D2Cのポイントは共感型であることです。ブランドストーリーに共感したユーザーがファンになり、ネットを通じて購買して拡げていきます。

オランダの企業で、リサイクルされた材料でスマートフォンを作るスタートアップがあるのですが、これも一つのD2Cですね。(2013年の発売開始以来)もう結構長いのですが、支えてくれるファンが一定層います。

Fairphone

ーーミレニアル世代、Z世代と呼ばれる若い世代の方が、環境への意識が高いように感じます。

景気が停滞して、地球環境が破壊されているのに、思考停止している大人たちをずっと見てきた。それが大きな理由ではないでしょうか?

若い世代の中でも比較的高学歴の人に多いように感じるのですが、貧富の差を解決したくて起業するという人も増えています。

ーー最後に、いま日本は欧州のこのような潮流から何を学ぶべきでしょうか?

江戸時代や「もったいない」という概念は本来“サーキュラー”だったと、海外の方にも認識されています。でも今の東京を見たらがっかりされるでしょう。まずは、これまで日本がやってきた取り組みや考え方をもう一度取り戻す、再認識する。

テクノロジーについては日本も負けてはいないと思いますが、テクノロジーの使い方が、結構目先の小金を狙っていくような所があります。ヨーロッパは長期ロジックが強い。どうやって地域社会と共生していくか、50年、100年のビジョンで考えています。

私は「再生型イノベーション」と呼んでいるのですが、ディスラプション(破壊型)ではなく、再生型。それが今後、日本にとってチャンスでもあるし、そこに向かっていきましょうというメッセージも込めています。

小林弘人(インフォバーン株式会社 代表取締役CVO)

(関連情報)
TOAワールドツアー東京公式サイト