サンダース氏はジョージ・マクガバン氏の再来か

ネバダ州の党員集会の結果を受け勝利宣言をするサンダース氏
ネバダ州の党員集会の結果を受け勝利宣言をするサンダース氏
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米民主党の大統領選候補者選びで躍進する左派のバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)は、48年前に歴史的大敗を喫した民主党左派のジョージ・マクガバン候補の再来なのだろうか?

マクガバン氏も上院議員(サウス・ダコタ州選出)で、1972年の大統領選で共和党のリチャード・ニクソン氏と戦ったが、全米51の州と地区の内、マサチューセッツ州とワシントンDCで勝利しただけで出身地のサウス・ダコタ州でも敗れ、選挙人の数で520対17という大差で敗れた。

当時はベトナム戦争末期で、マクガバン氏は「ベトナムからの米軍の即時撤退」や「軍事費の削減」を約束し、国内的にも「差別の廃止」や「大麻の合法化」さらには「全国民に1000ドル(当時の為替換算で約30万円)を給付する」ことなど米民主党としては極めて進歩的な政策を打ち出したが米国民には受け入れられなかった。

一方のサンダース上院議員は自ら社会主義者と自認しており、その政策も「国民皆保険」や「公立大学無料化」「大麻の合法化」など米民主党主流派からはかなり左側に寄ったもので、同上院議員が大統領候補になってもマクガバン氏同様に多くの国民の支持を得られないのではないかと危惧する声が民主党主流派から持ち上がっている。

二人の酷似点

そうした懸念を裏付けるように「バーニー・サンダースはジョージ・マクガバンである」と題した記事が、米国の有力な総合誌「ジ・アトランティック」電子版に掲載された。

筆者は同誌のスタッフライターのデレク・トンプソン氏で、実は「サンダース上院議員はマクガバン氏ではない」というテーマで執筆をしていった末、やはり二人は酷似しているとの結論に達したのだとか。

その理由としてトンプソン氏は、当初民主党の候補者選びで有力だったエドマンド・マスキー上院議員が夫人の問題で感情的になり涙を流して失脚したのでマクガバン氏が台頭したように、サンダース上院議員もジョー・バイデン前副大統領が息子の問題で勢いが失速した間隙を縫って躍進してきた経緯が共通しており、その支持母体も草の根の活動家であることも同じだとする。

失速するバイデン氏
失速するバイデン氏

また、政策的にも二人の主張はよく似ているだけでなく、マクガバン氏が「労働者たちは1932年(のルーズベルト大統領の)大改革の恩恵を被ってきた」と言えば、サンダース上院議員も「80年前、フランクリン・ルーズベルトは進歩的な改革をもたらした」とよく口にして二人ともルーズベルトの継承者であることを訴えている。

トランプ大統領はサンダース氏との対戦を望んでいる?

違う点があるとすれば、マクガバン氏が戦ったニクソン大統領は当時60%もの支持率があったのに対し、トランプ大統領の人気はそこまで高くないので8年前のような大敗を喫する心配はないだろうとトンプソン氏は考える。

 
 

そのトランプ大統領は、22日(現地時間)のネバダ州の民主党党員集会でサンダース上院議員が勝利すると、次のようにツィートしている。
「クレイジーなバーニー(サンダース)が偉大な州ネバダでよくやっているらしい。バイデン や他の連中は弱いようだし、チビのマイク(ブルームバーグ元ニューヨーク市長)も大統領選討論史上最悪の出来から立ち直ることができなかったようだ。バーニーおめでとう。でも連中が邪魔しないように気をつけたほうがいいよ」

トランプ大統領のツイッターより
トランプ大統領のツイッターより

トランプ大統領は、サンダース上院議員との対戦を望んでいるように見えるのだが・・・

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】

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木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。