薬の一歩手前。

必要な栄養素や一定の健康効果が得られるサプリメントは、病気予防につながる心強いアイテムだ。

日本では、2015年の機能性表示食品制度の開始から、対象商品をコンビニやドラッグストアでも多く見かけるようになり、私たちにとってさらに身近な存在になっている。

この健康食品・サプリメント市場で、成長を遂げているのがファンケルだ。無添加化粧品の通信販売で高く評価されていたが、近年は機能性表示食品や健康食品で次々とヒットを飛ばしている。

同業他社も続々と栄養補助食品をリリースしている中で、ファンケルが消費者から圧倒的な支持を得る理由はなんだろう? 商品の特徴や今後のビジョンを島田和幸社長に聞いた。

(聞き手:新美有加アナウンサー)

消費者が自分に合ったサプリメントを選べるように

 
 
この記事の画像(9枚)

ーーファンケルはこれまで化粧品事業のイメージが強かったのですが、機能性表示食品制度が開始されたことで、栄養補助食品事業も追い上げてきた印象があります。そういった実感はありますか?

我が社は約25年前、栄養補助食品をサプリメントと名付けて売り出した日本ではじめての企業です。

その後、他社にトップの座を追い越された時期もありましたが(笑)、最近はどんどん調子を伸ばし続けています。

2015年のサプリメントの売り上げは約232億円でしたが、今年は約425億円にまで伸びる見込みです。その成長を牽引しているのが、機能性表示食品制度だと思っています。

ーー効果・効能がわかりにくかった商品が、制度の導入によってはっきり表示することができ、消費者に選ばれやすくなったということでしょうか。

そうですね。そもそも、制度導入前のサプリメントには二つの問題点があったと思います。

一つは、サプリメントがなにに効くのかが不透明だったこと。もう一つは自分にとって必要なサプリメントがわからなかったことです。

機能性表示食品制度によって、商品にきちんと機能を明確に表示することができ、消費者が自分に合ったサプリメントをきちんと選べるようになったと思います。

臨床試験は信頼を築くために欠かせない

 
 

ーーファンケルは、目のサプリメントとして日本初の機能性表示食品「えんきん」や「カロリミット」などヒット商品が目立つように思います。その理由はなんでしょうか?

多くの人が抱える悩みに応える商品を開発しているからだと思います。

また、2015年から宣伝戦略を見直し、わかりやすい広告を積極的に打ち出すようになりました。

結果、認知度も飛躍的に上がっています。最近は、「内脂サポート」のCMが特に好評で売り上げが約7倍アップしました。

 
 

ーーこういった流れは予想されていたのでしょうか?

こうなってほしいという思いはずっと持ち続けていました。

われわれは長年、研究に力を入れて、効果のあるサプリメントを開発・生産・販売してきましたが、お客様に効果を伝えられないので歯がゆい思いもしていました。

現在は、16品目のサプリメントを販売していますが、その半分は臨床試験を行った商品です。

正直、試験にはお金も時間もかかりますが、結果的にお客様に安心して選んでもらえる商品になる。遠回りかもしれないけれども、信頼を築くために欠かせないものです。

「お客様第一」という企業の姿勢

 
 

ーー機能性表示食品の制度開始から約3年が経ち、似たような効能のある商品が続々と出ています。他社とは違うと自信を持って言えるファンケルの強みはありますか?

たしかに「えんきん」や「カロリミット」がヒットして、似たような製品がたくさん出てきました。が、われわれはきちんと研究し、機能が実証された商品だけを届けるという自信があります。

また、成分だけではなく、体内効率といって、本当に必要な量を適切な部位で吸収されるかどうかもきちんと計算して作っています。

こういった特徴も他社との明らかな違いだと思います。こういう商品が生まれる背景には、サプリメントメーカーの中でもトップクラスの研究開発力があると自負しています。

ーー研究開発を支えるものはなんでしょうか?

「お客様第一」という企業の姿勢です。

お客様が望むものは何か、どうやったらふさわしいものが届けられるか。研究員たちが最先端の知識と技術をきちんと製品に反映して、開発に注ぎ込んでいます。

それは、既存の製品についても同じで、常に見直しを行っています。食品で用いる成分は数千種類にものぼりますが、それらを研究によって絞り込んでいくという、気の遠くなるような作業を行っています。

私にはとうてい真似できない仕事です(笑)。

出産を機に退社する社員がいないことに驚き

 
 

ーー島田社長はダイエーやマルエツを経て2003年にファンケルへ入社されています。当時のファンケルの印象はどのようなものでしたか? 

私は、小売からメーカーへの転身だったので、その違いは感じました。小売のときは大衆を相手にするビジネスでしたが、ファンケルは一人一人のお客様に向き合っているという印象を持ちました。

また、それまでは男社員ばかりの世界でしたが、ファンケルは3分の2が女性の社員なので、そういった環境の変化も大きかったです。

ーー15年前から社員の3分の2が女性というのは変わらないのでしょうか。

変わらないですね。管理職も半数が女性です。

ーー男性社会から女性社会へ。戸惑うことはなかったですか?

なかったですね。ただ、非常に驚いたのは、ファンケルでは出産を機に退社する社員が一人もいないことでした。

私が入社した当時もほとんどいなかったですし、ここ数年は産休復帰率100%がずっと続いています。

ーーその理由はなんでしょうか?

お互いでフォローしあう風土が根付いています。

産休に入る社員や管理職のポストは上位代行するので、彼女たちのポストは空けて待っています。長くて一年、早い人は半年で戻ってきます。

ーーお客様の多くが女性なので、女性の社員を大事にされているということでしょうか?

意識的に大事にしているというよりも、創業当時からそれが当たり前なんです。

海外のマーケットは今後広がっていく

 
 

ーー入社してからの15年間、会社はどう変化しましたか?

入社した当時は、化粧品事業が頭打ちで、どちらかというとサプリメントが好調でした。

日本の消費者が健康食品の必要性に目覚めた時期と重なっていたんです。

そこから、サプリメントは厳しい競争の時代に突入しましたが、現在はしっかりと売り上げを伸ばしていますし、化粧品も好調です。

ーー店舗については、銀座にあるファンケルは海外の観光客でにぎわっている印象があります。化粧品事業はもちろんのこと、栄養補助食品事業の一番のポイントである「健康」は世界共通の悩みだと感じますか?

そうだと思います。銀座は特に中国や台湾、香港のお客様が多いのですが、化粧品よりもサプリメントの方が好調です。

コラーゲンやカロリミットなど美容系サプリメントも売れていますが、最近は特に年代別サプリの需要も伸びています。

この年代別サプリというは、20代から50代までの世代別、さらに男女別にわけて、おすすめのサプリメントを1ヶ月分の詰め合わせにしたパッケージなのですが、あれこれ選ばなくてもこれ一つでいいからわかりやすいと好評です。自分用だけでなくて、親や友達にとお土産に買っていく人も多いと聞いています。

中国では、日本の国民健康保険のようなものがないので、自分の健康は自分で管理をしないといけません。さらに10年以内には日本以上の高齢化を迎えます。

病気になる前の予防として、健康を維持するための効果的なサプリを飲みたいという人は今後さらに増えるでしょうし、こうした海外のマーケットはもっと広がるだろうと感じています。

サプリメントはオーダーメードの時代に

 
 

ーー栄養補助食品事業も取り扱う企業として、「人生100年時代」に向けてできることは何だと思いますか。

サプリメントは大きくは二つの方向性があると思っています。

一つは、健康寿命を延ばすためのサプリメントを提供していくこと。中性脂肪や血圧、血糖値、体脂肪など中高年が抱える悩みに対してきちんと応えられるものを提供したい。いわば、病気予防のためのサプリを開発したいと思っています。

もう一つは、パーソナルなサプリメントを提供することです。年齢や性別だけでなく、食習慣、運動習慣、休息など一人一人の健康状態を分析して、本当に必要な栄養成分をサプリメントで提供したいと思っています。このサービスは準備が整い始めていて、年明けにはスタートする予定です。


ーーサプリメントもオーダーメイドの時代なんですね。

一人一人に寄り添っていくという意識でずっとやってきた会社なので、これからもその姿勢は変わりません。


ーーすでにテレビCMをはじめ、さまざまなプロモーションを展開されていますが、9月20日から始まる「アンチエイジングフェア」のようなイベントに取り組む狙いはなんでしょうか?

CMや広告を積極的に出してはいますが、正直見ていない方もまだまだ大勢います。イベントでは、そういったファンケルを知らない方との出会いの場になると期待しています。

今回は「人生100年時代ブース」というテーマで出展します。実際に商品も展示できますし、お客様の悩みを聞いて提案もできます。もともと当社を知ってくださっている方にも、よりよい提案ができればとも思います。

このイベントにいらっしゃる、健康や美容に対して意識の高い方たちに向けて、満足のいくコンテンツで応えたいと思っています。

「健康」はいつの時代でも日本に限らず世界中で気になる最大のテーマだ。

このサプリメントは何に効くのか、誰に必要なのか、安全で安心な商品を提供することで”人生100年時代”における社会の「不」を解消するという高い意識がトップである島田社長から現場まで浸透していることで、企業自体も未来へ向けて健康で健やかな成長ができるのかもしれない。

 
 

■「アンチエイジングフェア2018 in台場」
http://www.aaf-daiba.com/

開催期間:9月20日(木)~23日(日) 合計4日間
開催場所:フジテレビジョン本社屋(1階広場・エントランス・シアターモール・22階フォーラム)
入場料:無料(※球体展望室他一部エリア、コンテンツは有料)

(文・浦本真梨子)