ドナルド・トランプ前米大統領が、再選を目指して「影の内閣」を結成したようだ。
トランプ前大統領の最後の首席補佐官だったマーク・メドウズ氏は7月30日、保守派のニュース・チャンネル「ニュース・マックス」に出演してこう語った。
「今夜、我々の内閣の数人が集まりました。それはこれまでの会議を再確認するもので、今後の方針について審議しました。私は大統領に代わって発言する立場ではありませんが、これだけは言えます。もし我々がトランプ大統領を担いで具体的に前進しようとしているのでなければ、この会合はなかっただろうことです」
この発言に、保守系のネット論評誌「PJメディア」は「トランプが2024年に大統領選に出馬することを伺わせるこれまでで最大の兆候」と捉えた記事を掲載した。
トランプ前大統領を含む20人の会合
つまり、この会合はトランプ前大統領の次の前進をはかるための集まりで、メドウズ氏がそれを「内閣」と表現したことから、閣僚級の人物が定期的に集まっているものと考えられる。
会合は、トランプ前大統領が所有するニュージャージー州のベッドミンスタ・ゴルフ・クラブで行われたというが、メドウズ氏は参加者の名前を明らかにしない。
しかし、著名なSNSのインフルエンサーのローガン・オーハンドレイ氏が、この会合のものという12秒のビデオをインスタグラムに公開した。ビデオにはトランプ前大統領ら約20人が写っているが、画像の動きが激しくはっきりと分かるのはオーハンドレイ氏の他に、保守派の若手で注目されているマディソン・コーソーン下院議員(共和党 ノース・カロライナ州)夫妻が確認できる。
Here’s who was there tonight. Recognize any faces?
— Rochelle (@NonNumberChar) August 1, 2021
Madison and Cristina Cawthorn were in attendance, as was Rogan O’Handley, and of course Trump.
A photo from O’Handley showed that there were about 20 water bottles, so probably at least as many attendees at the table. pic.twitter.com/982RpnQyug

「この発言が頭から離れない。前首席補佐官は、トランプが(議会襲撃事件で)共同謀議が疑われているときに、影の大統領制が進行中(そんなことはない)で、いずれ再選される(ありえない)だろうと、トランプが側近達に言わせていることを繰り返しただけなのに」
トランプ氏には手厳しいニューヨーク・タイムズ紙のマギー・ハバーマン記者はこうツイッターで疑問を投げかけたが、逆に反トランプ派は不意をつかれて狼狽しているようにも見える。
This is a bizarre interview https://t.co/2t3rnuKZD3
— Maggie Haberman (@maggieNYT) July 31, 2021
バイデン政権への揺さぶりか
一般に「影の内閣」は、野党が政権を奪取した場合にそのまま新内閣の大臣に就任するもので、英国では制度的にも認められた存在だ。米国では、大統領に権限が集中する政治制度にそぐわないのか、これまでこの言葉が使われたのはトランプ前大統領が各省庁に助言者を配置して閣僚を飛び越えて政策遂行をはかった時ぐらいだった。
今回の「影の内閣」も、次の内閣の準備段階というよりはバイデン政権を揺さぶるために課題ごとに担当者を置いたものというもののように思える。
トランプ大統領も「影の大統領」としての役割を果たし始め、2日にはバイデン政権に対する挑戦状といえる次のような声明を発表した。
「私が今なお大統領だったら、新型コロナウイルスが再拡大したり、都市での殺傷事件で記録的な犠牲者が出ていることや、国境が開け放しになっていて犯罪者やコロナの重症患者が我々の地域社会に流れ込んでくることについて、フェイク・ニュース(偽ニュース)のマスコミが批判記事を書き立てていたことだろう。その実、私がホワイトハウスを去った時は治安当局はかつてなく国民に支持されていたのだ。国境は強固で(最高に)安全だった。そして私は非常に効果的なワクチンを9カ月足らずで開発させた。(当時は5年もしくはそれ以上の時間がかかると言われたのにだ)。国民がこうしたことを絶対に忘れないよう望むばかりだ」

月が代わって9月の第一月曜日(2021年は6日)の「レイバー・デー(労働者の日)」を迎えると、米国は2022年の中間選挙へ向けて政治が一斉に動き出す。トランプ「影の内閣」はこの声明に沿った問題でバイデン民主党を攻撃して行くことになるのだろう。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】