香水のサブスク「COLORIA」

「香りで気分転換ができる」と、会員が1年間で10倍以上も増えた。

神奈川・横浜市の自宅でテレワーク中の男性。
仕事の合間にミラーハリスのティートニックという香水を取り出した。

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利用しているのは、会員数が急激に増加している、新たな香水のサービス。

High Link・南木将宏代表取締役CEO:
お客さまの会員数としては、ちょうど1年間で10倍以上と成長しています。

男性が利用しているのは、香水のサブスクリプション「COLORIA」。
毎月約500種類の中から選んだ香水が、スプレー付きのボトルで自宅に届くサービス。

ボトルに入っている量は4mlで、1日1プッシュから2プッシュ使うと、1カ月程度使用できる。
中には1万円前後する高額な香水もあり、さまざまな香水を少量試すことが可能。

この香水のサブスクは、新型コロナの影響で外出の機会が減る中でも、会員数が1年間で10倍以上に増えたという。

一体、なぜなのか。

High Link・南木代表取締役CEO:
おうち時間が増えて、同じような日常が繰り返されている中で、気分転換やリフレッシュというところで、香りそのものの興味関心というのが、大きく伸びているのかなと考えています。

香りが気分転換に

横浜市に住む男性も、テレワークの合間の“気持ちの切り替え”に、香水を使用しているという。

利用者の男性:
1年くらいテレワークをしてきて、本当にパソコンと壁しかないって感じなので、何でもいいから、切り替えられるものが欲しいなと思ったときに、匂いってすぐに切り替えられるし、いいなと思って。

また、“自分以外に付ける”という使用方法も。

利用者の女性:
夜寝る前とか枕にかけて、リラックスするためにかけたりとか、すごく好きな香りに包まれて寝られるので、個人的にすごくいいなと思った。

外出時だけでなく、自宅使いのニーズも高まっている香水。

店頭での販売からオンライン化が進む中、メーカー側からも新たな顧客が期待できるこのサービスへの問い合わせが増加しているという。

今後は、オンライン上で顧客体験の向上を目指す。

High Link・南木代表取締役CEO:
オンライン上で、自分が気になっている香りを見つけるという作業が、現状だとまだまだ難しいと思っていて、香り、香水という領域にテクノロジーを掛け合わせることで、実際に試してみる体験と同じような体験、またはそれ以上の体験を、オンラインでも提供することができるようなサービスになっていきたいと考えています。

「価格競争」よりも「利用者の満足」

三田友梨佳キャスター:
このニュースについて、マーケティングや消費者行動などを研究している、一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。
いわゆるサブスクのサービスは、今回の香水だけではなくて、音楽や車、あるいは高級バッグなども対象となっていて、所有から利用への動きというのは加速していますね。

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
サブスクリプションエコノミーは、この7年半で350%以上成長しました。
ただ、注意しなければならないのは、アメリカではサブスクビジネスの約13%は失敗したと言われていて、成功のための鍵をしっかりと抑える必要があるということです。

三田キャスター:
成功のための鍵として、どのようなものが挙げられますか?

鈴木智子さん:
ポイントは、新規顧客の獲得よりも、既存顧客の満足を引き出して、解約率を下げることにあると思います。

ビジネスの世界では、“パレートの法則”、あるいは“2対8の法則”と呼ばれるものがあります。
これは2割の優良顧客、いわゆるお得意さんが、売り上げの8割を稼ぐとされています。

三田キャスター:
サブスクのサービスを通じて、顧客と長いお付き合いをするためにはどうすればよいのでしょうか?

鈴木智子さん:
1つには、他社との価格競争に走ると、たとえお客さまを獲得できたとしても、結局は薄利になってしまうので長続きしないと思われます。

また、解約の手続きをわかりづらくして、契約が続くようにしている企業もままありますが、これは長期的にはやはりネガティブな印象を与えてしまいます。

やはり、あくまでも消費者にとっての満足を追求して、顧客の獲得、維持、そして育成、この3つを通じた長期的な価値の創造が重要になります。

三田キャスター:
サブスクサービスを通じて、企業は顧客との関係をより深めることもできそうですね?

鈴木智子さん:
これをマーケティングでは、「カスタマー・ライフタイム・バリュー」、または顧客生涯価値を高めることと言うんですが、サブスクのメリットというと「利便性」や「コスト節約」に目がいきがちですけれども、実は、サブスクサービスの利用者の多くは、体験を提供してくれる企業とのつながりを強く感じています。

そういった意味で、サブスクの活況によって、顧客価値重視のビジネスに転換する1つのきっかけになればと思います。

三田キャスター:
今、商品やサービスは飽和状態にありますが、だからこそ既存の市場をさまざまな角度から捉えなおして、顧客の満足度を高めていくことが新たな価値につながるのかもしれません。

(「Live News α」8月9日放送分)