CNNが2022年初めにインターネット専門のニュース放送を始めると発表した。これでニュースの世界もネット放送の時代を迎えることになる。

CNNが19日ネット上で発表した声明によると、新チャンネルは「CNNプラス」と名付けられ、2022年の第一四半期にはスタートする。

CNNPressRoomより
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初のネット上だけのニュース番組を放送

インターネット上だけで配信され、一日8時間から12時間ライブでニュース番組を編成する。 その日の出来事だけでなく、CNNのベテランたちがニュースを深く掘り下げた番組や、日々の生活に密着した情報も提供するとしている。

「CNNは1980年にケーブル・ニュースという分野を発明し、1995年にはインターネット上にも進出しました。そして2022年に、聴取者と直接に結ぶ“接続料金制のニュースのストリーミング放送”を他に先駆けて初めるのです」

声明は、CNNのジェフ・ザッカー最高経営責任者兼ワールドメディア会長のこういう談話を付記している。

米国では、現在も、「ワンアメリカ・ニュースネットワーク」や「ニュースマックス」がインターネット上で全日放送しているが、いずれもケーブルテレビと共通の番組で、ネットだけで放送する主要なニュース放送は「CNNプラス」が初めてになるだろう。

接続料金がいくらになるかは未定のようだが、ニューヨーク・タイムズ紙電子版の購読量が四週間17ドル(約1870円)というのが参考になるかもしれない。それよりも、接続料金制になれば、CM放送がなくなることが考えられる。

先取りの気概といくつもの挑戦

ザッカー最高責任者が言うように、CNNはニュース放送でいくつもの新規軸に挑戦してきた。ニュースに「米国版」のほか「国際版」を設けたり、項目を短く伝える「ヘッドライン・ニュース」も作った。「スペイン語チャンネル」もあるし、スーパーの会計の列などで見ることを前提に8分から10分で完結する「チェックアウト・チャンネル」も放送している。CNNのこうした先取りの気概が「CNNプラス」誕生の原動力になったのかもしれない。

また、そうした様々なニュース放送を通じて、CNNには膨大なニュース映像や資料と優れた人材に事欠かない。問題があるとすれば、CNNの極端な反保守的論調だが、それでも「CNNプラス」の成功は約束されていると言えそうだ。また、その成果はCNN一社の収穫に留まらないだろう。

主流は「コード・カッティング」

放送界では今「コード・カッティング」という言葉をよく耳にする。「コード」とはケーブルのことで、ケーブルテレビを「カット(切断)」するように、インターネットでテレビを直接配信するのが主流になるという。

テレビ受信機も、最近のものはWIFI経由でインターネット放送を受信する仕組みが組み込まれており、地上波放送にひけを取らない画質で再生できるようになってきた。

すでに、インターネット上でドラマを有料配信する「ネットフリックス」の契約者が2億人を超え、「コード・カッティング」の威力を見せつけている。加えてニュース放送の「CNNプラス」が成功すると、テレビは空中波やケーブルではなく、インターネットで見るものという時代もそう遠くないのもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】

【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。