コロナ禍で大きな打撃を受けている飲食業界。
中には、倒産や閉店するところもある。
飲食店が店を閉じることになると、撤収や片付け作業などが行われる。
その際、店の調理場で使われていたシンク、ガス台、作業台、大型冷蔵庫などの厨房機器を取り外すことがある。
使われなくなった厨房機器はどこに行くのか…というと、専門の業者が買い取っているのだ。

その業者のひとつが「テンポスバスターズ」。
飲食店の調理場の厨房機器、調理道具、店内の椅子やテーブルなどの中古品を買い取り、販売も手がけている会社だ。

横浜市のテンポスバスターズの倉庫を取材で訪れると、買い取ってきたガス台、シンク、業務用冷蔵庫がずらりと並んでいた。

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汚れた厨房機器は、まず電気系統の部品などが取り外される。パーツごとに解体され、水に濡れても問題ない部分を高圧洗浄機で洗っていく。

こびりついた汚れはへらで取り除き、洗剤で磨き、洗い終わると乾かす。
最後に電気系統の部品も取り付け、パーツを組み合わせて元通りに組み立てる…という一連の作業が行われていた。
この倉庫では、1日に約20台の厨房機器を再生させている。
きれいによみがえった厨房機器は、次にテンポスバスターズの中古ショップに運ばれて、また売られることになる。

東京・立川市にあるテンポスバスターズの中古ショップに並ぶのは、大型冷蔵庫、ガス台、シンクなどきれいになったリサイクル品。

中には、スパゲティーをゆでる鍋、餃子焼き器、グリル機など飲食店ならではのモノも。
商品は飲食店の関係者向けに売られている業務用で、新品の6割から7割ほどの値段がつけられている。

また、中古の調理道具も売られている。
ラーメンなどの麺をゆでる寸胴鍋、中華鍋、フライパン。
他にも、ステーキを載せる鉄板の皿、うな重を入れるふた付きの入れ物、寿司おけなど特徴的なものから、お玉、トング、ビールジョッキ、塩・こしょう入れなど様々な商品が並んでいた。

実は、これらの調理道具を目当てに、飲食店のプロだけではなく、一般の人も買いに来るという。
その理由としては、「自宅で少しでも外食気分を味わいたい」「家で料理の時間が増えたので料理を極めたい」というコロナ禍ならではのものが多い。
週末に料理好きの人が見に来たり、近所に住む主婦が買いに来るなど、この1年で一般の客も増えたという。

こうした中古品の厨房機器は、コロナ禍の今、意外と売れ行きが良いという。
テンポスバスターズの売り上げをみると、2020年の夏ごろから高い水準で推移している。

なぜこのコロナ禍に、中古の厨房機器が売れるのか。

その理由は2つ。
1つは、飲食店が業態転換するケースがあるため。
例えば持ち帰り需要に期待して、ラーメン店が唐揚げ店に業態を変える場合、これまでに使っていなかった機器が必要になることがある。
そのような時に中古で厨房機器を購入する人がいるという。

そしてもう1つは、コロナ禍にもかかわらず、飲食店の新規出店に踏み切る人がいるからだ。
店の種類としてはラーメン、焼き肉、カフェ、中華、居酒屋など幅広く、デリバリーやテイクアウトを併せたスタイルが多いそうだ。
また、繁華街ではなく、住宅街がある駅の近くに出店する人も多いという。

実際に、2021年4月に新規で店を開いた人を取材した。
世田谷区の祖師谷大蔵駅から徒歩1分の商店街にある、韓国料理店「サムシセキ」。

スンドゥブやサムギョプサルなどの定番の韓国料理のほか、今流行りの韓国チキンを出すお店だ。

店の社長は、もともと新大久保の韓国料理店で働いていたが、新大久保は観光客が多いことからコロナで店の来客数も大きく減ってしまった。
その一方で、「ステイホーム」でデリバリーや持ち帰り需要が増えたことをチャンスと思い、2020年の夏から2021年の春にかけて、繁華街ではなく、住宅街にある駅の近くに4店舗を次々とオープン。

厨房にあるシンク、作業台、冷蔵庫、ガス台、フライヤーなどすべて中古品で、出費を安く抑えた。
緊急事態宣言などの影響で店内の客は少ないものの、韓国チキンなどが持ち帰りしやすいとの理由で、持ち帰りとデリバリーの注文が予想以上に多く入っているという。

コロナ禍に飲食店を新たに開くことについて、飲食コンサルタントは

「レストランドクターJ」会長・石川幸千代氏:
撤退する飲食店が多いので、好立地条件の物件に空きが増えた。物件によっては家賃や敷金礼金が安くなることもあり、2店舗目や3店舗目を狙っていた中小企業には新規出店のチャンスとなっている

…と指摘する。

また、「店内飲食だけではなく、持ち帰り・デリバリー・通販など、1つの店から多様的な利益を生み出すスタイルがこれからは重要」とも話す。

コロナによる飲食業界への影響はこの先もまだ続きそうだが、一方で新たなビジネスチャンスが生まれている現状もある。

(フジテレビ経済部 芦田優子記者)