ウクライナ疑惑の告発者はバイデン氏の部下

トランプ大統領の「ウクライナ疑惑」を通報した「内部告発者」は、バイデン前副大統領のウクライナ問題担当の部下だった。

この疑惑の「内部告発者」についてはすでにワシントンの関係者の間では「公然の秘密」として知れ渡っていたが、「内部告発者保護法」の建前からマスコミも公表を控えてきた。

しかし、ネットニュースの大手「リアルクリア」は30日、「国民は現職大統領を解任させる試みの詳細を知る権利がある」としてその氏名や経歴などを明らかにした。

それによると「内部告発者」は中央情報局(CIA)の現職の分析官のエリック・チャラメラ氏33歳で登録された民主党員。名門エール大学出身でロシア語とウクライナ語とアラビア語を話し、オバマ政権時代の2015年バイデン副大統領がウクライナ問題の責任者となった際、CIAからホワイトハウスに派遣され国家安全保障会議で副大統領の部下としてウクライナ問題を担当したと「リアルクリア」は伝えている。

バイデン氏を擁護するための告発か

いわゆる「ウクライナ疑惑」は、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と7月25日に電話会談した際に、来年の大統領選に民主党から出馬表明をしているバイデン氏と息子のウクライナ企業との癒着問題を調べるよう頼んだことが「選挙法違反」とされているが、告発したのがそのバイデン氏の部下だったとなると、告発はバイデン氏を擁護するためではなかったかという疑念を抱かせることにもなる。

チャラメラ氏はまた、トランプ陣営がロシア政府と共謀しているという情報を流していたウクライナ系のアレクサンドラ・チャルーパさんとも近い関係で、彼女をホワイトハウスへ招き入れたことがあるという関係者の証言を「リアルクリア」は紹介している。

チャルーパさんはウクライナの反ロシア派の非公式なロビーストと考えられており、「トランプ陣営がロシア政府の助けでクリントン候補の選挙妨害を計画している」と民主党本部などへ訴えて、いわゆる「ロシア疑惑」捜査のきっかけになった人物として知られる。

チャラメラ氏はトランプ大統領が就任後も国家安全保障会議に留まり2017年中頃にCIA本部へ戻るが、「彼はトランプに逆らっていたし、大統領に不利な情報をマスコミに漏らしていたことが問題にされた」と同会議の関係者は「リアルクリア」に語っている。

「内部告発者」の信憑性

 
 
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今回チャラメラ氏は、国家安全保障会議内の同僚からトランプ大統領の電話会談の内容を聞くと、同会議を辞めた仲間で下院の諜報活動特別委員長のアダム・シフ議員(カリフォルニア州 民主党)のスタッフに相談し「内部告発」の手続きをとった経緯についてはワシントンで周知の事実だった。

こうしたことから告発を受けた情報当局の監察官は、告発者が「政治的に偏向している」として一時取り扱いを保留したが、民主党側から批判されて公開された。

米下院はトランプ大統領の「ウクライナ疑惑」に対する弾劾調査を開始することになったが、そのきっかけをつくった「内部告発者」の信頼性をめぐって民主、共和両党のせめぎ合いが激化することが予想される。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

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木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。