「あの人も来るよ」はダメなお誘い?

「それって、ホント?」と言いたくなるマナー、多くありませんか?
新入社員のキャトウさんも、そんな“もやもやマナー”に悩まされるひとり。

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いよいよ2019年も残すところあとわずか。
忘年会シーズンに突入したが、なかなか難しいのが「会社の飲み会への誘い方と断り方」。
「会社の忘年会に行きたくない」と思っている人が4割というデータもある中、いざ幹事をつとめるとなると色々と気を配らなくてはならないもの。


そこで、今回のテーマは…

さっそく、国内外の企業や大学などでのマナーコンサルティングや人材育成などのマナー指導を行っている、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんにお話を聞いた。

西出氏:
会社や部署として、全体の通例行事の一環としての飲み会のお誘いなのか?それとも、そうではなく、日頃、お世話になっているからという、ある意味、個人的な範囲でのお誘いなのかによって異なります。

(1)会社や部署としての行事の一環としての飲み会の場合
社内の慣習になっているにせよ、まずは「みなさん、日頃は大変お疲れ様です」と、日常の労いの挨拶からスタートします。そして「ご多用のところ恐縮ですが」とクッション言葉をつけて、「弊社恒例の年末の飲み会を開催したいと思います」とアナウンスを続けます。
「開催します」と言い切ることも良いのかもしれませんが、会社での決まりとはいえ、このように言い切る表現をされると勝手に決められた感がして、強制的な感覚を持つ人もいるかもしれません。語尾の言い回しにも気遣いをもって、みなさん、それぞれの会社の雰囲気や風土で言い回しを考えてみてはいかがでしょうか。

(2)個人的なお誘いの場合
「いつもありがとうございます」と日頃の感謝の気持ちを言葉でも伝え、「お忙しいとは存じますが」とクッション言葉を添えて、さらに「もしよろしければ」とクッション言葉をつけて「今年一年の感謝会をしたいと存じますが、ご都合いかがでしょうか?」と伺いを立てる言い方がマナーの観点からはよろしいかと思います。

もちろん、目上の方から部下や後輩を誘うときには、もっとフランクな言い回しでも良いですが、『感謝のお礼の言葉+クッション言葉+さらなるクッション言葉+伺い形』は、外さないでお誘いくださいね。

してはいけない誘い方は、強制的な言い方です。


ついつい「この日は忘年会だから、全員参加だぞ!」などと誘ってしまいがちな人は注意。
まずはねぎらいや感謝の言葉からはじめ、あくまでも「お誘い」ということを忘れずに伺いを立てる言い回しをするのが良いだろう。

そして、お誘いを受けた側は楽しみに当日を待ちたいものだが…「部長が参加するなら、行っておかないとまずいかな…」「えっ、あの人が来るなら行きたいな」などなど、気になってしまうのは参加メンバー。
誰もが気になることではあるが、「〇〇さんが来るから来ない?」という言い回しは“良いお誘い”と言えるだろうか?

西出氏:
マナーは、相手にプラスを与え、自身もプラスになり、双方がプラスを生み出すものです。

この場合は、相手にとって、○○さんが来ることで「参加したい」と思う情報であれば、事前に伝えて差し上げること。後出しは「最初から言ってよ」と、印象が悪いと思います。

しかし一方で、その○○さんが結局来なかったとなると、また失礼な話になります。このような話は、信頼関係にもつながることですから、あまり、他者を引き合いに出すことはしないほうがよかったり、また確実でない情報は伝えないほうがよかったり、伝えるにしても「確実ではないのですが、もしかすると」という言い方で誤解のない伝え方をすることが大事です。


そしてもう一点、やってしまいがちなのが「〇日なら来られる?」と食い下がってしまうこと。
参加者の多い場ではひとりのためにスケジュールを組み直すのは難しいかもしれないが、少人数の場合、一度断られても「それじゃあ〇日にするから来てよ!」と“再アタック”してしまう人もいるだろうが…


西出氏:
相手が行きたくない場合は、再度のアタックは相手からすると迷惑となります。そのあたり、相手が「参加したいが、日程の問題で参加できない」のかどうかを知ることは至難のわざのような感じがいたしますので、もし、再度お誘いしたいときには「何度も申し訳ないんだけど」とクッション言葉をつけて伺ってみると良いでしょう。

「飲み会が苦手で…」は言っていいの?

最後に知っておきたいのが、お誘いを受けた時の断り方。
冒頭でも述べた通り、4割もの人が「忘年会に行きたくない!」と思っているというが、お酒が飲めなかったり、飲み会自体が苦手な人はやはり参加を渋ってしまうはず。
「あんまり行きたくないなあ…」と思う理由はそれぞれあるだろうが、かといって、それをストレートに伝えてもいいの?

西出氏:
「お酒が苦手なので参加しません」という断り方は控えるのが大人のマナー
です。

体調の問題でお酒を飲むことができない、ということは伝えても良いと思いますが、それでも飲み会に参加してアルコールを飲むことが必須なわけではありませんので、飲めなくても参加は可能ですから、この理由は自己中心的な人と思われる可能性が大です。

お酒を飲むことができないのに加えて、その場にもいけそうにない、早く自宅で休むことが大事、などの体調の問題の場合は、不参加でOKです。

また、飲み会はあくまでも親睦をはかるため、日頃の感謝などを伝え合う場ですので、「飲み会が好きではない」という理由を単刀直入に伝えてしまうのは、ビジネスシーンでは控えた方が良いでしょう。

まずは、「お誘いありがとうございます」 とお礼を伝え、その上で「申し訳ありません。その日は…」とお断りしましょう。



敢えてこちらから言うことはありませんが、もし、参加した飲み会で先方から「どうして飲まないの?」「もっと飲んで」など言われたときには、はっきり伝えて良いです。飲食は、体調に関わることですから、無理をすることはありません。また、飲食を強要することも控えましょう。

飲み会のメインは、飲食ではなく、互いのコミュニケーションが最大の目的ですから「飲まない・食べない」などを問題にすることはマナー違反です。
飲み会は、皆さんで楽しく有意義な時間になるよう、一人一人が互いに思い合うマナーある空間にいたしましょう。



今回の“もやもやマナー”、やわらかな言葉で誘う・誘われるのが、忘年会シーズンを楽しく過ごすコツ。
また、あくまでも忘年会はじめ飲み会は親睦を深めるための場所。「お酒は苦手なんだけど…」「参加するのはお仕事のうち?断ってもいいの?」と悩んでいる人もいるだろうが、誘う側のマナーはねぎらいや感謝の言葉から始めることであったように、お誘いを断る際も感謝の言葉から始めることを覚えておきたい。

(漫画:さいとうひさし)

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。