危険なバス停「全国で1万超」

バス停に止まる1台のバス。車がセンターラインをはみ出して追い越そうとした次の瞬間、女性2人がバスの陰から突然飛び出してきた。

あわや大事故というひやりとする瞬間だ。

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こうした交通事故のリスクが高い危険なバス停は全国で1万カ所以上も存在し、今大きな問題となっている。

バスで「死角」

取材班は東京・大田区にある、危険度が最も高いAランクのバス停へと向かった。

三宅要リポーター:
バスが今到着しました。
完全に横断歩道に乗って止まってしまっています。

最も危険度が高いAランクは、「停車した時バスの車体が横断歩道にかかる」か「過去3年以内に人身事故が起きた」場所だ。

ここはセンターラインをはみ出す追い越しが禁止されている場所だが、取材を進めると止まっているバスの後ろから次々と車がセンターラインを越えて出てきた。

こうした危険なバス停では、止まったバスによってできる死角で交通事故が起きやすいとされている。

バスの利用者:
死角になりますね。バスが去ってから動き出さないと轢かれますね。

バスの利用者:
通り終わったなと思っていると(車が)出てくる時があるから怖い。

歩行者もドライバーも”直前”で相手を認識

取材班は歩行者とドライバーの目線カメラを使って危険なバス停に潜む死角を検証した。

まずは歩行者の目線。

停車中のバスの後ろに立った場合、歩行者からはバスに隠れ、反対車線を走ってくる対向車の様子はわからず、バスの最後尾を越えないと見えなかった。

歩行者目線カメラ
歩行者目線カメラ

一方、ドライバーの目からはどうだろうか?

ほぼバスの最後尾まで進んで、ようやく歩行者が見えた状態だった。

ドライバー目線
ドライバー目線

歩行者と車が相手に気付いた時には、もう目の前に衝突の危機が迫っているのだ。

バス停の移動には「バス会社」「行政」「警察」3者必要

なぜ危険なバス停はなくならないだろうか?

専門家は、バス停を移動させる難しさを指摘している。

交通事故鑑定人 中島博史さん:
バス会社が動かしたいから動かしますというわけにはいかないんです。
行政側がこの部分にバス停があって大丈夫というようなことを確認するのと、警察側も交通に影響を与えますので、それらを全部クリアしないとバス停の移動ができないんです

次に取材班が向かったのは横浜市内にある危険度Cランクのバス停。

実はこのバス停は以前目の前に横断歩道があったが、2020年4月、10メートルを離れた場所に移動させた。

しかしよく見てみると、やはりバスの陰から身を乗り出して恐る恐る横断歩道を渡る歩行者姿が。

横断歩道を10メートル移動させてもまだ死角は消えていなかったのだ。

バスの利用者:
意味ないな。危険は残ったまんまだな。何かいい方法はないかな。

バスの利用者:
良くなったと全然感じない。

「乱横断」の問題も

一方で横断歩道がバス停から離れたことで別の問題が起きていた。

バスから降りた多くの人たちは横断歩道を渡らず、道の真ん中を歩く「乱横断」をしていた。

交通事故鑑定人 中島博史さん:
もっと距離を離せば安全なんですけれども、あまりバス停から横断歩道が離れてしまうと、わざわざ回ろうという気力をなくしてしまって、横断歩道のない部分を乱横断してしまって危険になる。
安全と便利の完全な両立というのは非常に難しいです。

「イット!」3月29日放送