未だ果たされぬ義務「一般教書演説」

バイデン大統領が誕生して50日が過ぎたが、まだその義務を果たしていないことがある。

連邦の現状と大統領の見解を議会に示す恒例の「一般教書演説」のことだ。

ただ、その年に就任したばかりの大統領が「連邦の実情」を演説するのはおかしいというので「両院合同会議での演説」と呼ばれるが、実質上は「一般教書演説」と変わりはない。

バイデン大統領
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その演説を、バイデン大統領はまだ行なっていないし、いつ行うか予定も立っていないのだ。

合衆国憲法第二章第3条は、大統領の義務として次のように定めている。

「大統領は、随時、連邦議会に対し、連邦の状況に関する情報を提供し、自ら必要かつ適切と考える施策について審議するよう勧告するものとする。(後略)」(アメリカン・センター訳)

「ジョー・バイデンは不在大統領」

ジョージ・ワシントン初代大統領は、それを口頭で議会に伝達したが、その後1913年までは文書の形で議会に送付されてきた。以後議会の上下両院会議で演説されるようになり、ラジオからテレビで国民にも直接伝えられることになった。

演説は、大統領の政策の基本理念と優先順位を示すもので、大統領が行う演説としては最も重要なものと考えられている。

慣例的に1月最後の火曜日に行われ、オバマ大統領が2009年2月9日に、トランプ大統領が2017年2月15日に行なったことはあるが、3月まで演説が行われなかったことは過去に例がない。

トランプ大統領による一般教書演説(画像は2018年1月31日の一般教書演説)

ある意味で、バイデン大統領はその義務を果たさないまま政権運営を行なっているとも言えるわけで、そろそろ疑義を唱える声も上がり始めている。

「ジョー・バイデンは新型コロナウイルスの危機に当たって、また経済問題についても、さらに中国対策についても国民に説くべき時に不在大統領になってしまっている」

保守派のジャーナリストのチャールス・コンチャ氏はフォックス・ニュースでこう批判している。

記者会見も行わないのは「自信がないからか」?

コンチャ氏はまた、バイデン大統領が就任以来質疑応答を伴う本格的な記者会見をしていないことも指摘し「大統領が記者団の質問に耐えられるか、自信がないからではないか」とも皮肉を言っている。

バイデン大統領は就任式以来大統領令を発出した際や記念行事などで記者の質問に答えることはあったが、いわゆる「フル記者会見」はまだ一度も行ってはいない。

記者団と対立していたトランプ大統領の場合でも、2月16日にはホワイトハウスのイーストルームに記者団を集めて本格的な記者会見を行なっている。

これについてホワイトハウスのジェン・サキ報道官は5日の記者会見で「大統領は歴史的危機に対応していて記者会見をする余裕がないが、今月中にフル記者会見ができるよう努力している」と言っているので、そのうちに実現するかもしれない。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官

いずれにせよ、8100万票という歴史的な得票に推されて就任したバイデン大統領だが、その得票に応えるだけの義務はまだ果たしていないようだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】