民主党の有力大統領候補者の調査を依頼?

 
 
この記事の画像(5枚)

トランプ大統領が、外国の首脳に民主党の有力大統領候補のスキャンダル調査を依頼したという問題がワシントンでかしましく取り沙汰されている。

ニューヨーク・タイムズ紙などによると、米国の情報機関の「内部告発者」がトランプ大統領の外国首脳との電話会談のあり方について所属する組織の監察官に訴えを起こし、その中でウクライナ大統領との会談で不適当なやりとりがあったとされる。

そのやりとりの詳細は明らかにされていないが、トランプ大統領は今年7月25日ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談をしており、ウクライナ側が発表した会談内容によるとトランプ大統領はゼレンスキー大統領の就任を祝福すると同時に「米国とウクライナとの関係を妨げていた腐敗を完全に捜査することでウクライナのイメージは急速に改善されるだろう」と言ったとある。

これだけだと何か分からないが、これとは別にトランプ大統領の側近はウクライナ政府に対して米大統領選に出馬を表明したジョー・バイデン前副大統領と家族に関わる捜査を行うよう促していたとニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。

謎が残るバイデン氏とウクライナの関係

その前副大統領と家族に関わる問題だが、ニューヨーク・タイムズ紙電子版は今年5月1日にこのような記事を掲載していた。
「バイデン氏は副大統領当時の2016年5月(ウクライナの首都)キエフを訪問した際に、数々の腐敗に関与していると噂されていたウクライナの検事総長を解雇しない限り米国が約束した10億ドル(約1100億円)の援助を差し止めると脅した。この圧力が功を奏してウクライナの検事総長はまもなくウクライナ議会の議決で解雇されたが、それで救われた関係者の中にバイデン副大統領の次男のハンター・バイデン氏がいた。

ハンター・バイデン氏はウクライナのエネルギー会社「ブリスマ・ホールディングス」の役員をしていて月額5万米ドル(約550万円)の報酬を得ていたが、このエネルギー会社が解雇された検事総長の捜査の標的になっていた」

つまりバイデン氏は、息子が高額の報酬を得ているエネルギー会社を救うために副大統領という地位を利用して援助を武器に追求していた検事総長を解雇させたとも言える。

疑惑争いの軍配はどちらに?

バイデン前副大統領は来年の大統領選に向けて民主党内の候補選びレースで1~2位を争っており、トランプ大統領は「職権を乱用して選挙妨害を図っている」と非難の声が巻き起こり大統領の弾劾を口にする民主党幹部もいるが、トランプ大統領は電話の記録を公表しても良いと意に介さない様子でこうツィートしている。

トランプ大統領の公式ツイッター
トランプ大統領の公式ツイッター

「ハンター・バイデンは世界を回って外国政府や独裁者たちから巨額の金を集めている。ウクライナや中国で蓄財をなしたと記者たちは言っている。彼はエネルギーや他のことも何も知らないのだ」

2013年米中会談
2013年米中会談

実はハンター・バイデン氏をめぐっては、2013年にバイデン副大統領が中国を公式訪問した際に同行し、帰国後2週間も経たないうちにハンター氏が経営に関わるファンドに中国銀行から10億米ドルが振り込まれたという話が今年5月11日ニューヨーク・ポスト紙電子版で暴露されていたのだ

このトランプ大統領とバイデン前副大統領の疑惑争い、どう見ても前副大統領側の分が悪いように思えるのだが。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【イラスト:さいとうひさし】

「木村太郎のNonFakeNews」すべての記事を読む
「木村太郎のNonFakeNews」すべての記事を読む
木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。