牛、豚、鳥だけでなく、カンガルーやワニといった一風変わった肉まで目にする機会が増えた昨今。肉好きにはありがたい世の中となったのではないだろうか。
そのような中、「なんだこれ!?」「本当にあの肉?」との声が思わず聞こえてきそうな、ある肉に関する投稿が話題となっている。
その肉というのが、こちら!
「京都の陰陽師が日夜狩っています」
t_yano(@t_yano)さんがコメントともに投稿したのは、脂の白と肉の赤のコントラストが美しい一品。京都市内の食料品店で撮影したもののようで、一見どこにでも売っている、何の変哲もない食肉のようにみえる。
しかし、その商品ラベルに大きく書かれているのは「カッパ肉」…

「カッパ(河童)」といえば、日本の水辺に生息し、丸い皿をのせたような頭で背中には甲羅。そして緑色の肌というイメージの妖怪として知られている。
まさかとは思うが、本当にカッパの肉だったりするのだろうか? そして、肝心の味の方はどうなのだろうか? ブログ「肉屋の娘」を運営し、昭和7年から東京都中野区で営業を続ける精肉商・西島畜産/ミートプラザニシジマの西島可奈子さんに詳しい話を聞いた。
名前の由来は「雨合羽を着るように脂身が覆っているから」
ーー「カッパ肉」とは何?
牛肉のバラ肉のまわり(脇腹のあたり)についているお肉になります。

ーーどういう特徴がある?
少し歯ごたえがあり、味が濃厚なのが特徴です。
ーーなぜ「カッパ肉」という名前が付いている?
牛肉が枝肉の状態のときに、まるで雨合羽を着ているかのように牛の胴体の脂身を覆っているお肉であるため、「カッパ」と呼ばれています。

ーー実際の妖怪のカッパとは何か関係があったりする?
先ほどの話の通り、雨合羽の「カッパ」であり、妖怪の「カッパ」ではありません。
煮込み料理に合います
西島さんの話によると、同社の小売店舗であるミートプラザニシジマでは、「カッパ肉」を5年前から販売していて、リピーター客もつくほどすっかり定番の人気商品になっているそうだ。では、味の方もかなりいけたりするのだろうか?
ーー味はどんな感じ? どんな料理に合う?
歯ごたえがあり、味が濃いため、ブロック肉ですと煮込み料理に合います。また、ミートプラザニシジマでは、切り落としやこま切れのように薄切りにスライスすることで、炒め物や煮物料理、牛丼、カレーやハヤシライスなど、幅広くお料理にご利用いただけるようにしています。
ーー今回初めて知った人も多そうだが、他のお肉に比べて知られていない理由は?
カッパ肉は色が変わりやすく鮮度を保つのが難しいので、業者さんをいくつか介して販売するお店では取り扱いが難しいようです。
ーー「カッパ肉」は国内ならどこでも買える? 一般的なものと比べて高価?
一部販売している精肉店やスーパーもあります。現在販売されているかは分かりませんが、京都の精肉店で以前、販売しているのを見かけました。価格は安価です。

ユニークな名前の肉は「カッパ」以外にも
ーーところで、カッパ肉以外にも、こうしたユニークな名前の肉はある?
牛肉でいくつか、挙げさせていただきます。
・ハト
牛スネ肉の一部に、鳩のような形をしている、“ハト”と呼ばれる部位があります。
・笹の葉カルビ
バラ肉の部位のひとつで、由来は笹の葉の葉っぱのようなラインが入っていることです。
見た目も美しく、バラ肉ですがモモ寄りのお肉のため、霜降りと赤身のバランスが良いです。
・ヒウチ
後ろ足の付け根にあたる部位、“ともさんかく”を関西地方では“ヒウチ”と呼びます。名前は火打石からきています。モモ肉の上カルビと呼ばれ、綺麗な霜降りで柔らかく、脂の質は見た目以上にあっさりしているのが特徴です。
・ネクタイ
その形状から"ネクタイ"と呼ばれ、腰からももにかけての部位であるランプに付いている赤身のお肉です。
妖怪の「カッパ」とは違ったようで少し残念ではあるが、話を聞いてみるととても美味しそうな肉だ。
取れる量が少なく、ミートプラザニシジマでもイベント時の月1〜2回程度に限って販売しているということなので、なかなか目にする機会は少ないかもしれないが、精肉店などで見つけた際には、「カッパ肉」をぜひ試してみてほしい。