新型コロナウイルスを巡る「政治家の夜の会食」問題が、銀座のクラブ騒動で、ついに議員辞職や離党にまで発展した。一方、自民党内からは「離党までする必要はあるのか」と反発する声も聞かれる。一体なぜ議員たちはコロナ禍でも夜会食をやめられないのだろうか。

自民党の3人は“嘘”も発覚し離党、公明党幹部は議員辞職

緊急事態宣言下の1月18日深夜、東京・銀座のクラブに滞在していた自民党の松本純衆院議員は、発覚当初の1月26日以降、クラブには「1人で滞在していた」と繰り返し発言していた。しかし6日後の2月1日、「実は後輩議員2名とともに訪問していたのが事実」と前言を翻した。

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松本氏の「1人で銀座に行っていた」という発言はウソで、自民党の同僚である田野瀬太道・大塚高司両衆院議員もクラブに同席し酒を飲んでいたことを認めた。そして3人そろって自民党を離党する事態に発展した。

これについては菅首相も「あるまじき行為」と批判した上で、田野瀬氏を文部科学副大臣から更迭。同時に「国民の皆さんにお詫びを申し上げたい」と謝罪した。さらに公明党でも、銀座のクラブに深夜に滞在していた遠山清彦幹事長代理が「政治への信頼を深く傷つけた」として衆院議員を辞職した。

遠山清彦氏
遠山清彦氏

コロナ対策にも大きな影響、法改正で野党に譲歩の一因に

そしてこの「銀座夜会合問題」は政府のコロナ対策にも大きな影響を与えた。松本氏の問題が発覚したのは、与野党による新型コロナ特措法と感染症法の改正案の修正協議が始まった当日の夜だった。翌27日の修正協議の後、野党側は「与党議員が深夜に遊びに行っている中で罰則をかけるのか」と痛烈に批判。その結果、2つの法案の修正は罰則が軽減される形で決着した。

与野党によるコロナ特措法と感染症法の改正案の修正協議
与野党によるコロナ特措法と感染症法の改正案の修正協議

野党側に譲歩する形となったのには様々な理由があったものの、銀座の問題も大きな一因だった。さらに2月2日には緊急事態宣言の期間延長を報告する国会の場にも菅首相が出席し直接説明する事態となるなど、「夜会食」問題は政治全体に影響及ぼすレベルに発展した。まさに政府与党からすると「最悪のタイミング」で問題が発生したと言える。

それにしても政治家たちは、菅首相の「8人ステーキ会食」を皮切りに相次いで謝罪に追い込まれているのに、批判されるのをわかっていながらなぜ「夜の会食」をやめられないのか。

なぜ政治家は会食をやめない?議員や秘書の本音

夜会食の意義について、ある議員は「政治家は人に会って話を聞くのが仕事だ」と話す。確かに政治家にとっては、様々な人から意見を聞いて、それを政策に反映するのは大きな仕事の1つだ。さらに政治家にとって会食は、政治家の仲間や先輩後輩、官僚、業界の有力者などとのパイプを作って目的を実現するための手段の一つとしても用いられる。

ある国会議員は「距離をとるなどの感染対策をしっかりすれば5人以上で会食をしても問題ないと思う。世間の目が厳しすぎる」とこぼすなど、会食への未練をにじませた。さらに永田町からは一連の問題について「議員狩りがひどい」と嘆く声も聞かれる。

だが、こうした政治家の「夜会食肯定論」について違和感を覚える人は多い。議員秘書の1人は政治家が夜会食をやめられない理由について「そもそもテレワークなどから一番遠い世界で、新型コロナに対応できていない。それに夜の会合をしてもバレないと思っている節があり、『自分達は特別だ』という意識が強い」と指摘している。

背景には夜会食文化に染まる議員たちの特別意識

つまり「国会議員は話を聞くのが仕事で、感染対策をしっかりしていれば、夜会食を自分達はしてもいいのではないか」という特別意識が一部議員の根底にあるように思える。だが、今は、飲食店の時短営業などで多くの国民が不自由な生活を強いられていて、国会議員が特別である理由はない。

新型コロナで行動変容が広く求められる中、国民の代表である国会議員の担う責任は重く、夜の会食に関しても国民の模範となる行動がより一層求められる。

(フジテレビ政治部 佐藤友紀)

佐藤友紀
佐藤友紀

フジテレビ報道局政治部