引き際が大事だが・・・
トランプ大統領は、明後20日(現地時間)のバイデン氏の大統領就任式に出席せずにワシントンを離れることにしたようだが、これは2024年の再選の道を自ら断つことになるのではないか。
この記事の画像(6枚)トランプ大統領の選挙での敗北の直後、ワシントン・ポスト紙電子版に「トランプは2024年に再出馬し勝つことができる」(2020年11月11日)と、反トランプ急先鋒の同紙にしては異例の見出しの解説記事が掲載された。
筆者は同紙のコラムニストのマーク・シーセン氏。今回の大統領選でトランプ氏はバイデン氏に敗れたとはいえ7000万票余りを獲得して次回2024年に勝利する可能性は充分あり、共和党内から対抗馬が出ることもないだろうと予測した。
ただ、そのためには今回の選挙の引き際をきれいに見せておくことが大事だとシーセン氏は助言していた。
「誰も不平不満を引きずる敗者は好まない」
同氏は、トランプ側が今回の選挙に疑問を抱き訴訟を起こすのは理解できるが、もし最終的にバイデン氏の勝利が決定したら円滑な政権移行を行うべきで、バイデン氏をホワイトハウスに招いたり、その就任式に出席することが大事だと指摘し、さらにこうも警告していた。
「誰も不平不満を引きずる敗者は好まない。もしトランプがホワイトハウスを去るときに、苦々しい印象を残したら彼にとって決定的なダメージになるだろう」
トランプ大統領は、その後起きた議事堂選挙事件で暴徒を扇動した容疑で弾劾訴追され、直近のピューリサーチの世論調査では支持率も29%と大統領就任以来初めて3割を切った。
"優雅な去り方"で再出馬の可能性も
トランプ大統領の政治生命は絶体絶命のようにも見えるが、上院での弾劾裁判で半数を占める共和党側から多くの離反者が出て有罪に必要な三分の二議席が投ぜられるようなことは考えにくい。
また議会が大統領を公職追放にすることも、弾劾裁判で有罪にならない限りは憲法で禁止されているのでトランプ氏が2024年に再出馬する可能性までは否定されないと考えられた。
「たら、れば」の話になるが、トランプ大統領がシーセン氏が助言したように、6日の大統領選最終決定を受け入れ、明後20日はバイデン夫妻をホワイトハウスに招き、不本意でも談笑する姿をマスコミに見せた後議会へ同行、バンデン氏の就任宣誓を頃合いにワシントンを去るという優雅な去り方をしていれば、再びトランプ・ブームを巻き起こすことも考えられないことではなかった。
「トランプ時代」に幕を引くのはトランプ氏自身か
しかし、トランプ大統領は明後20日、バイデン氏に合わずにホワイトハウスを離れ、ワシントン近郊のアンドリュース空軍基地で退任のイベントを行い、フロリダ州の自宅に向かう予定と言われる。
トランプ大統領は、最後まで「不平不満を引きずった敗者」で「苦々しい印象を残したままホワイトハウスを去る」ことになり、自ら「トランプ時代」の幕を引くのではないか。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】