新興のSNS「パーラー」がサービス停止
1月11日午後5時(日本時間)、米国の新興SNS「パーラー(PARLER)」がサービスを停止し、ネット上でアクセスすると「サーバーが見つかりません」と出るだけになった。
このSNSのアプリは、1月8日にはスマートフォンなどに21万件インストールされていた。前日の5万5000件を大幅に上回り、アップル社のアプリのダウンロード・サービス「アップ・ストア」で1日のダウンロード数の最高を記録した。(Sensor Towerによる)

実はこの日、ツィッター社がトランプ大統領のアカウントを永久に停止すると発表したので、今後トランプ氏はツィッターと機能が似ている「パーラー」を通じてメッセージを発信するのではないかと、トランプ支持者たちが雪崩を打ってインストールしたと考えられている。

テレビ界で最もトランプ氏に近いフォックス・ニュースのキャスターのショーン・ハナティ氏がその日、「大統領は『パーラー』のアカウントを取得した」と発言したり、トランプ氏の長女のイバンカさんはすでに利用者で、「パーラーでフォローしてください」とツィッターで発信していたことも「パーラー」人気を煽ったようだ。
Follow me on Parler! pic.twitter.com/BiQwZRSlq0
— Ivanka Trump (@IvankaTrump) November 17, 2020
トランプ氏はまだ「パーラー」から発信していなかったが、発信者の顔ぶれを見ると、ハナティ氏を始めトランプ大統領の弁護団長のルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長や、保守系トークショーの司会者ダン・ボンキーノ氏、保守系評論家のマーク・レビン氏、それに右翼グループ「プラウド・ボーイズ」など、そうそうたるトランプ支持派が名を連ねている。

トランプ氏の新たな情報発信源になるかと思われたが
「パーラー」は、バイデン新政権に対する批判勢力の情報発信源になるのではないかとも考えられたが、まずグーグル社がその日の内にアンドロイド上のダウンロード・サイト「プレイ・ストア」から「パーラー」を削除し、検索しても「パーラーは扱っていません」と出るようになった。
またアップル社も9日(現地時間)になって、「アップ・ストア」から「パーラー」を削除。ストア上にはPERLORというスペルの異なるアプリが見られるが別物だ。
それでもウエブ・ブラウザーでparler.comからアクセルする道が残っていたのだが、最後にからめ手からストップがかかった。
アマゾン社が「パーラー」に貸与している数百台のサーバーの使用を停止したのだ。その理由としてアマゾン社は「ワシントンで起きた不幸な事件に鑑み 暴力を扇動するサービスに与するわけにはゆかない」と通告したという。(バズフィード・ニュース)
IT巨人たちの「共同謀議」か
つまり「パーラー」は、トランプ支持者たちが暴力を煽るのに利用する危険を理由にサービスを停止されたわけだが、同社のジョン・マッツェCEO(最高経営責任者)は「IT巨人たちの競争相手を亡きものにしようとする共同謀議だ」と反発し、独占禁止法違反などで訴訟を起こした。
また「パーラー」の発信者の一人で、下院情報委員長でもあったデビン・ヌネス下院議員(共和党・カリフォルニア州)は、「これは明らかに独占禁止法や公民権法それに組織犯罪取締法に違反している。『パーラー』という企業だけでなく、我々国民に対する攻撃を謀議した人物を恐喝の容疑で捜査すべきだ」と11日フォックス・ニュースの番組で語った。
「パーラー」社の実質的なオーナーは、レベッカ・マーサーという富豪の女性でトランプ大統領の熱心な支持者だ。マーサー家の資産は10億ドル(約1000億円)を越え資金的に問題はなく、別のサーバーを借りて一週間でサービスを再開させる計画だという。
主戦場はSNS
それはともかく、米国民はマスコミよりもSNSの情報に影響されるようになったと言われるが、リベラル派と保守派はそのSNSを主戦場に熾烈な争いを始めたようだ。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】