宮城県気仙沼市の山あいの地域を「地形」に注目しながら歩くと、そこには、ハザードマップに反映されていない場所に潜む災害リスクがありました。
専門家とともに現地を歩くことで、確かな防災を探ります。
東北福祉大学で地形学を専門とする水本匡起准教授です。
山あいの地域では、大雨の時に、「洪水」と「土砂災害」、2つの危険にさらされる恐れがあり、ハザードマップだけではなく、「地形」に注目することが重要だと指摘します。
東北福祉大 水本匡起准教授
「ハザードマップは今、特に山あいの集落では未完成の場合が多い。洪水は大きな川から浸水想定がなされるが、山あいの集落を通る小さな川は未想定が多い」
実際に2016年、山あいの地域で甚大な被害が発生しています。
岩手県大船渡市付近に上陸した、台風10号の影響で、山あいに位置する岩泉町では、河川の氾濫や土砂災害が発生。高齢者のグループホームなどで22人が亡くなりました。
水本准教授は、ハザードマップは局所的な地形によるリスクは十分に想定されていない場合があると話します。
例えばこちらは、気仙沼市の台地区という北上山地の山あいの地域をうつしたハザードマップです。今のマップでは想定されていない、小さな支流を反映させるとこれだけ浸水域が広がるといいます。
東北福祉大 水本匡起准教授
「実際にこの集落で安全な場所ってどこだと思う?このあたりになる」
伊藤瞳アナウンサー
「このあたりだと、川からすごく近くないですか?」
東北福祉大 水本匡起准教授
「そうですよね、なぜここが安全なのか、地形を見れば分かる。ぜひ現地で地形を確かめてみましょうか」
実際に気仙沼市の台地区に向かいました。「安全な場所」を歩いてみると…
東北福祉大 水本匡起准教授
「どうして安全なのか分かりましたか?」
伊藤瞳アナウンサー
「分かりました!確かに川からかなり高さがある場所ですね」
東北福祉大 水本匡起准教授
「その通りです。ここはなぜ川から高いかというと、台地。川から近いが、高さがある。川の水が増えてもここまで水が来ない。とても安全な場所」
一方、土砂災害からも…
東北福祉大 水本匡起准教授
「大体高さの2倍くらいまで土砂がくると言われているので、例えば山の高さが30mくらいあると、60mまで離れれば安全という一つの基準にはなる」
地域に住む人に話を聞くと、これまでの大雨からも、被害を免れてきた場所であることが分かりました。
50年以上町に住む住民
「昭和54年の台風のときが、私が来てから一番大きな台風。ここの下に八瀬川があるが、その川が洪水になって、ずいぶん川のそばはやられたし、橋も流されたりもしたり。この場所は大丈夫ですよ」
地形から安全な場所を見つけられた一方、ハザードマップには示されていない危険に気が付くこともあります。
訪れたのは気仙沼市の上東側地区。付近に鹿折川が流れる山あいの地域です。
東北福祉大 水本匡起准教授
「ハザードマップで色が塗られていないので、鹿折川の洪水の危険性はないかもしれないが、じゃあ安全かといって周りの地形を見てみると、山の方を見ると少し谷から傾斜している。これが昔の土石流の跡」
伊藤瞳アナウンサー
「でも土砂災害警戒区域にはなっていないわけですよね?」
東北福祉大 水本匡起准教授
「傾斜がとてもゆるいので、ハザードマップにのりにくいが、よく地形を見ると山の谷から広がる、傾斜がゆるいが土石流の跡が見える」
伊藤瞳アナウンサー
「跡があるということはまた起きる可能性もある?」
東北福祉大 水本匡起准教授
「同じ場所が繰り返し繰り返しおこる」
地形には災害リスクのメッセージが刻まれていました。そして地形を見ることで、将来的に避難場所になりうるエリアも確認できました。
東北福祉大 水本匡起准教授
「向こう側にちょっと丘みたいの見えますか?あそこが実は白鳥城というお城の跡。お城の跡なので人工的に上を削って平らなところがある。(将来的に)命を守るための避難場所にするのも一つの考え方かなと思います」
伊藤瞳アナウンサー
「地形を見るからこそ知れるわけですね」
気仙沼市では、今後の調査によって、ハザードマップの土砂災害警戒区域が2033年度までに今の2倍以上に増える見込みだといいます。その上で菅原茂市長は次のように呼びかけます。
気仙沼市 菅原茂市長
「今指定されていないから安全ということではないということの周知が必要。東日本大震災ののちに、本市が高齢者等避難とか避難勧告、避難指示を出した回数は、津波関係よりも雨関係の方が多い。気仙沼でさえもそういう地域であるということを理解していただきたい」
ハザードマップを見た上で自宅の周りに川や土石流の跡はないか、地域を歩いて見つめること。それが確かな防災につながります。
東北福祉大 水本匡起准教授
「地形を確認すると、安全な場所が見えてくるわけです。ぜひ集落を歩いて、安全な場所を探していただければ、命を守る本当の防災につながるのではないかなと思います」
