日本の名目GDP=国内総生産が来年、インドとイギリスに抜かれて世界6位になる見込みとなりました。
経済大国として存在感を示した日本は、どこへ向かうのでしょうか。
取材では、GDPの順位が下がり続けた場合に暮らしへ及ぶ影響や、「メイドインジャパン」への見方の変化が浮かび上がりました。
一方で、東大阪市の小さな町工場には、復活の糸口ともいえる独自の技術がありました。
■ 1960年代末から2位を守った日本 4位を経て来年6位へ
GDPとは、国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計です。日本は高度経済成長期まっただ中の1960年代末から、「バブル時代」も含めて長きにわたり、アメリカに次ぐ2位の座にありました。
1987年の取材では、投資家が「きのうお話ししてました株のこと、やはり買います。それ5万!」と語る場面もありました。しかし、その後じわじわと順位を下げて4位になり、来年は世界6位にまで転落する見通しです。
インドとイギリスに抜かれ、中国とは日本円でおよそ2900兆円の差がつく見込みです。
GDPの国際比較はドル換算で行われるため、円安の進行が大きな要因の1つですが、「経済大国・ニッポン」の時代を考えると寂しい見通しといえます。
■ 街の人の予想は実際より低く 背景に厳しい生活事情
街で30人に「日本のGDPは今、世界何位か」と尋ねると、「6位」「8位くらい?」といった答えが返ってきました。多くの人が、現在の4位や来年見込まれる6位よりも低い順位だと思っていました。
その背景にあるのが、厳しくなった生活事情です。商店街で取材に応じた男性は、次のように話しました。
【街の人】「バブルがはじけてから社会に出てるから、夢も希望もないのが現実。(今は)社会保険料も鬼のように高いし。終わってるなと思います」
■ 順位低下で「買い負け」の恐れ 商社の現場でも変化
順位が下がり続けた場合の影響について、調達コンサルタントの坂口孝則さんは、日本が世界で「買い負け」てしまう恐れを指摘します。「買い負け」とは、高い金額を払わなければ買えなくなったり、数量を抑えられたりすることで、モノの不足や値上がりにつながります。
【調達コンサルタント 坂口孝則さん】「これまで絶対売ってくれていた国から、高い金額を払わないと買えない、あるいは数量が抑えられる。
技術水準も落ちたり、これまで作れたものが作れなくなったりということが起きてもおかしくない」
ビジネスの最前線で働く商社関係者からは、「メイドインジャパン」の扱いが大きく変わっているとの声が聞かれました。
【大手総合商社 社員】「以前は大型プロジェクトの受注の際に、価格が高くても技術で選ばれた。今は中国などの技術が上がり、入札で負けることも増えた」
【大手総合商社 幹部】「昔のプライドを引きずって、新しい技術への対応ができていない傾向。担当していた自動車メーカーもEVへのシフトが大きく遅れていた」
■ ニューヨークで聞こえた辛辣な本音
ソニーの「ウォークマン」は「iPod」にとって代わられ、ホンダの「ASIMO」が一世を風靡したものの、人型ロボットの開発は今や中国に大きく後れをとっています。
ニューヨークの街角で聞くと、反応は辛辣でした。
【ニューヨーカー】「私の記憶では、以前はもっとたくさんの日本製品があったが、今は当時ほど見かけなくなった」
使っている日本製品を尋ねても、返ってくるのは「サムスンかな」「LG…日本のメーカーだよね?」と韓国メーカーばかりでした。
【調達コンサルタント 坂口孝則さん】「残念ながら好転するような明るい兆しはない。日本がだめになっているというよりも、日本より成長している国がたくさん出てくる」
■ 東大阪の町工場が持つ「世界でここだけのナット」
復活の糸口を探して向かったのは、東大阪市の従業員およそ100人の町工場「ハードロック工業」です。ボルトとナットを合わせた「ネジ」のうちの、ナットを作っています。
【ハードロック工業 若林雅彦社長】「イギリスの、日本で言うと国交省みたいなところからの認定。『レールの締結箇所はハードロックにしなさい』と」
このナットは台湾の鉄道でも採用されています。標準的なナットと並べて機械に取り付け、激しく揺さぶると、標準的なナットはすぐにゆるんで外れました。ハードロックのナットは、あらかじめつけた目印がまったく動きません。
ポイントは、形の異なる2つのナットの組み合わせです。
【ハードロック工業 若林雅彦社長】「非常に溶接並みの強さを誇る。ボルトにナットを強く締めなくても、これとこれだけで位置を固定できる。こういうナットは世界でうちだけ」
日本の新幹線に採用されたことをきっかけに、世界から注目を浴びました。若林社長は「目標は今の5倍、あるいは10倍」と意欲を語ります。
■ 「責任ある積極財政」の下で求められる好循環
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、国内投資を促進しています。
りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は、「世界で戦える企業を育て、賃金上昇と物価押し上げの好循環を実現する必要がある」と話します。
【りそな総合研究所 荒木秀之主席研究員】「スター企業だけでは左右できない部分、(経済の)領域が膨大にある。どう回していくというところが、戦略として大事」
代わりのきかない技術を、順位の先にある豊かさにつなげる仕組みが求められます。
■ 橋下徹氏と安藤優子氏が語る「復活への道」
番組コメンテーターで元大阪府知事の橋下徹氏は、「日本の技術は確かだ」としたうえで、「高市政権に足りないもの」を挙げました。
【橋下徹氏】「自信持っていい。ただ高市政権に決定的に足りないのは改革、新規参入。酒蔵、タクシー業界のライドシェア、自動運転の自動車実験。トライアル、挑戦というものが足りないところ。これをしっかりやっていけば日本はまだまだ捨てたもんじゃない」
ジャーナリストの安藤優子氏は、投資先を掘り起こす大切さを語りました。
【安藤優子氏】「『ハードロック』のような投資先を見つけ、掘り起こし、十分にお金を入れていくのはすごく大切なこと。日本は中小企業で支えられてる社会だから、こういうところに、目を向けていくのが大切なこと。
私たちの気持ちの“誇り”を復活させる上でも。『日本は強くなる!』とかではなく、こういうところに目を向けて『できるんだ』という自信を持つのは大切なこと」
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月21日放送)
